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第38話 おじさん曰く。マップ表示もチートのうち


「リリムちゃんとはぐれた……!? いったいどうすれば……」


「落ち着け。対策は考えてある」



 本当は密売人を探し出すための作戦だったが、同じパーティーに所属しているリリムも見つけられるだろう。



「手がかりはエリカが持っている」


「ワタシ、ですか?」


「エリカは元PCでステータスを表示できるだろう? 他にもオプション画面を開けるんじゃないか?」


「そうですね……。サービスが終了して一部の機能は無効になっていますが、メニュー画面は開けますよ」


「そのメニューの中に【ワールドマップ】の項目がないか? それとクエスト一覧も」


「【ワールドマップ】なら生きていますね。とはいえ機能を制限されていて【ファストトラベル】は無効。ワタシの視界に映る範囲しかマップを表示できません」


「それでもいい。出してくれ」



【ワールドマップ】は、ログドラシル・オンラインをプレイしていたPCたちに標準搭載されていた地図表示機能だ。

 ログドラシル・オンラインはオープンワールドMMORPGで、簡略化されているが世界中のあらゆる場所の地図を瞬時に表示できる。


 サービスが生きていた頃は特定の拠点へワープする【ファストトラベル】機能もあったが、そこまでは望んでいない。

 大事なのは【ワールドマップ】が表示できること。それとクエスト一覧を表示できることだ。その二つの機能の合わせ技で……。



「あっ! 灰の都のマップ上で赤い丸が点滅しています!」


「ビンゴ。その赤丸が密売人たちの居場所だ」


「なるほど。クエストのガイド機能を利用したんですね」


「神位NPCが【ワールドマップ】を表示して灰の都を指し示した。だからマップ機能が生きていると思ったんだ」



 旅立つ前、ギルド長にお願いしてクエストを依頼してもらっていた。


 クエスト名は【灰の都の探索】。

 クエスト目標は、密売人と【トランスウォーター】の確保だ。

 シンプルだがクエスト名はどうでもよくて、【元PC】のエリカにクエストを受注させることが大事だった。


 ログドラシル・オンラインでは、受注した依頼は【クエスト一覧】に記録される。

 受注と同時にガイド機能が働いて、クエスト進行に必要なヒントが赤い丸でマップに描かれるのだ。



「灰の都はエクストラダンジョンという扱いだ。中に入ればより詳細なマップが表示される。そこでガイド機能を使えば……」


「赤丸でクエスト攻略のヒントが表示されるわけですね」


「これも一種のチートだな。NPCの俺では使えない、元PCであるエリカだけの特権だ」



 ワンボタンで地図が表示できて、しかもガイド機能付き。これならマッパーいらずだ。そして、ガイド機能にはもうひとつ便利な仕様がある。



「赤丸とは別に、マップ上を移動している点Pがあります」



 エリカがマップを指差す。【P】と書かれた青い点がマップの上をちょこまかと動きながら、通りを北上していた。



「【P】のマークは【PC】の略だろう。リリムはNPCだが、システム上PC扱いされているんだ」



 ログドラシル・オンラインでは、パーティー登録した他のPCと一緒に冒険の旅に出かけるのが基本スタイルとなる。

 広大なマップで離ればなれになっても平気なように、仲間の位置がマップに表示される仕様になっているのだ。



「先にリリムと合流しよう。青い点へ向かうんだ。案内を頼めるか?」


「わかりました。こちらが近道です」



 エリカはマップを表示させながら街の大通りを南下する。

 ちょうど青い点Pも北へ向かっており、俺たちは通りの真ん中で合流を果たした。



「おおおおおおおおおおお! タクトぉぉぉぉぉぉっ!!!!」



 俺たちの姿を見つけると、リリムは両手を振って涙を流していた。

 よほど心細かったのだろう。まさか泣いて合流を喜ぶなんて。



「たーーすーーーけーーーてーーーーー!」


「え……?」



 しかし、リリムが泣いている理由は他にあった。

 リリムを追いかけるようにして、通りの曲がり角から現れたのは――



「キチキチキチキチキチキチ……ッ!!!!」



 金属をすりあわせたような耳障りな鳴き声と羽音を立てる、人よりも巨大で真っ白な蚊蜻蛉かとんぼだった。

リリム「はぁはぁはぁ! 助かったのだ!(フラグ) ここまで読んでくれてサンキューなのだ。面白いと思ったら★をくれるとワシさま大喜び。作品のフォローも忘れずにな!」

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