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第17話 ―幕間― おじさんの知らないところで

リリム「おはボウクン! 別行動中につき録画で失礼するのだ。今回は第3者視点だぞ」


 ◇◇◇◇◇◇



 タクトが魔法使いと遭遇する数分前。

 伯爵の部屋にて――。



 ◇◇◇◇◇◇



「なに!? 奴隷どもが逃げ出しただと!?」


「はっ! 地下の牢屋が何者かに襲撃されたようで」



 執務用の机にふんぞり返りながら高級品の葉巻煙草を咥えていた伯爵は、騎士の報告に慌てて席を立つ。



「その不届き者は始末したのだろうな?」


「それがなかなかの手練れでして……」


「ええい、この役立たずめっ! 負けておめおめと帰ってきたのか!」



 激昂げっこうした伯爵は、机に置いてあった灰皿を部下に投げつけた。

 床に膝をついて報告をしていた騎士は、微動だにせず伯爵の叱責しっせきを受ける。



「まずいぞ。ギルドに駆け込まれたら、あの女狐フィーレめが中央に報告する。そうなれば”副業”が国王陛下にバレてしまう」


「いかが致しましょう」


「街に兵を放て。シェルフィやギルド長(フィーレ)には気取られるなよ。あやつらは裏で手を組んで私の周りを嗅ぎ回っているからな」


「シェルフィ団長に遭遇した場合は……」


「殺せ」



 伯爵は迷うことなく命令を下し、葉巻煙草を握りつぶした。

 この命令には、白銀はくぎん騎士団の副団長である騎士は狼狽うろたえる。



「し、しかしっ」


「うるさい! キサマ、自分の立場をわかっておるのか? ん? 故郷にいる大事な家族が()()()()()に遭ってもいいのか?」


「……かしこまりました」


「よろしい。では、行け。地下の襲撃者は私の方でなんとかする」



 伯爵は右手を開き、ニヤリと笑う。

 高温の煙草を握りつぶしたはずだが、その手は火傷ひとつ負ってなかった。


 副団長が部屋を離れようとしたその時――。



「【アイスバインド】」



 凜とした女性の声と共に、部屋に冷気が満ちた。



「ぐぐっ……!」



 冷気は副団長にまとわりつき、あっという間に全身が凍ってしまった。

 騎士の氷像が完成すると共に、物陰にある闇の中から黒いローブをまとった女魔法使いが姿を現した。

 女魔法使いは氷像にそっと触れると、騎士に優しく語りかけた。



「安心して。用事が済んだらすぐに解放してあげますから」


「キサマが例の襲撃者か! だ、だれか――――」


「騒がないで」



 女魔法使いは超高速で氷の刃を作り出すと伯爵の眼前に突きつけた。



「大声をあげたら氷漬けでは済まなくなりますよ?」


「な、何が目的だ。金か!? 依頼主の3倍は出すぞ!」


「黙れ、と言ったはずです」



 女魔法使いは手にした刃の他にも、空中に無数の刃を生み出す。



「口を開くのはワタシの質問に答えるときだけ。いいですね?」


「うぐぐぐぐ……っ」



 逃げ場がないと判断したのか、伯爵は両手を挙げて降参した。



「何が訊きたい……」


「アナタが持っている【トランスウォーター】を出しなさい」


「……っ!? キサマ、なぜそれを……!!」


「質問しているのはこちらです」



 女魔法使いは氷の刃を突きつけながら、空いた左手を出して伯爵を促す。



「【トランスウォーター】は危険です。興味本位で手に入れただけなら、いますぐ渡しなさい」


「…………」


「答える気はない、と。暴力は嫌いなのですが……」



 女魔法使いはヤレヤレ、と首を横に振ると。



「痛い目を見ないと素直になれないようですね」



 氷の刃、その切っ先を伯爵の喉元に押し当てようとして……。



「失礼します」



 部屋のドアがノックされた。

 扉の前にいた衛兵だろう。返事を待たずにドアが開いて――。



「見られましたか……」

ここまで第3者視点となります。

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