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第16話 おじさん、脳筋プレイで宮殿に潜入する


 その日の午後。伯爵に接触するため、まずは宮殿の隣にある騎士の宿舎に向かった。そこで衛兵経由で手紙を渡してもらった。


 前にギルドで会った女の騎士団長【シェルフィ・カタローグ】は、俺が渡した手紙を手にして外へ出てきた。

 騎士の宿舎、宮殿からも死角となる小さな公園で落ち合う。



「タクト殿っ。伯爵の悪事の証拠を掴んだとは真でありますか!?」


「声が大きい。どこに密告者が潜んでいるかわからないんだから」


「し、失礼しました」



 俺が周囲を見回してシェルフィをなだめると、一緒についてきたリリムが飴を舐めながら肩をすくめる。



「悪事の証拠なら攻略wikiにすべて乗っておるぞ」


「攻略wiki……?」


「こいつの言うことは気にするな」



 俺は護衛対象となる馬車の情報をシェルフィに伝えた。

 奴隷を運んでる馬車を抑えれば証拠は十分だ。



「ギルド長にも立場がある。伯爵が奴隷を運んでいるのを承知の上で、事情を知らない冒険者を巻き込んで悪事を裁くように仕向けたんだ」


「そうだったのでありますか……」



 シェルフィに盗賊を捕まえさせて伯爵との関係を吐かせる。

 ギルド長はそんな策略も巡らせていたようだが、今回はショートカットで事態を究明しよう。



「俺は野暮用があって馬車の護衛はできない。だから信頼の置ける騎士団長さまに奴隷の保護を頼みたいんだ」


「かしこまりました。我が命に替えても奴隷は守ります」


「死んではほしくないけどシェルフィなら大丈夫だろう」



 バイデンを護る白銀はくぎん騎士団、その女団長シェルフィ・カタローグ。

 彼女は今回のクエストにおけるお助けNPCだ。シェルフィの大盾は防御スキル盛り盛りの代物で、PCたちを物理的に守ってくれるのだ。


 本来のクエストだと、PCが奴隷を助けたあとにシェルフィに協力を求める。

 シェルフィと共に宮殿へ乗り込み、伯爵を追い詰める流れだ。



「リリムにも馬車に向かってもらう。依頼を受けた冒険者が顔を見せないと不審に思われるからな。頃合いを見てシェルフィに合図を出せ」


「かしこまったのだ。ワシさまの【ブラッディソード】が血に飢えておる。悪漢どもをバッタバッタとなぎ倒してくれるわ。わーはっはっ!」



 リリムは真っ赤な刀身の【ブラッディソード】を手に、やる気を見せている。

 狼の群れ相手に上手く立ち回れていたし、ガード役のシェルフィもいる。遅れは取らないだろう。



「タクト殿はどちらへ?」


「兵は拙速せっそくを尊ぶ、ってな」



 ◇◇◇◇◇◇



 日が完全に落ちたあと、俺は夜間警備の騎士を装って宮殿に忍び込んだ。

 鎧と兜はシェルフィが用意してくれたもので、腰には無銘を下げている。


 この作戦を伝えたとき、リリムに突っ込まれた。



「本当に伯爵を直接倒しに行くのか? いくらなんでも脳筋すぎないか?」


 と。


 リリムに言われるとしゃくだが、これが一番手っ取り早い。

 証拠ならあとでいくらでも出てくる。馬車もそうだし、地下のオークション会場もそうだ。奴隷が大勢捕まっている。

 伯爵の手下は宮殿だけでなく町中に潜伏しており、奴隷を解放してからでは伯爵に逃げられる恐れがある。だから先に黒幕を押さえたい。

 本来の流れだと情報を小出しにされて後手後手に回るのだが、俺はオチまで知っている。伯爵は真っ黒だ。


 伯爵の部屋の前に到着すると、俺は警備の騎士に交代を告げた。



「交代の時間だ」


「なんだおまえは。地下の騒ぎを知らんのか?」


「地下の騒ぎ?」


「待機人員は地下に向かわせたはずだが……おまえ、どこの所属だ? かぶとを取って名前と階級を――」


「ええい、うるさい!」



 俺は瞬時に騎士の背後に回ると、鞘に収めたままの無銘で騎士一撃を加えた。



「安心しろ。鞘打ちだ」


「ぐぅ…………っ」



 気絶して廊下に倒れる前に、大きな図体を両腕でキャッチ。

 人目のつかない場所に引きずり込んで、そのまま横に寝かせた。



「これでよし」



 我ながら脳筋だと思うが、学がないのは自分でもわかってる。

 俺はガキん頃、本を読むより木の棒を振り回してる方が好きだった。


 ゲーム内の知識があっても上手く活用できない。

 レジェンドモンスターを倒して冒険者ランクをあげる作戦も、たまたま上手くいっただけだ。

 ここにいるのが魔法教師ヴィヴィアンなら、より上手に立ち回っていただろう。



「失礼します」



 身なりは騎士のままだ。兜も被ってるので顔バレもしない。

 俺は伯爵に用事があると見せかけて、返事も待たずに部屋へ入る。

 すると――



「……見られましたか」



 空中に氷の刃を出して伯爵を脅している、謎の女魔法使いがいた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。読者さまの☆やブックマークが創作の後押しになります。少しでも面白い、先が気になると思われたら、応援よろしくお願いいたします。


リリム「おっと馬車が来たのだ。宣伝はここまでとしよう。突撃だーーー! ○せー!」

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