第3章 政治と歴史のチュニジア
1
課長に感づかれる前にスーザちゃんを送り届け、その足で事務所に戻る。夜分遅かったとはいえ、18歳を迎えたばかりの女の子を部屋に泊めたとか、後ろめたくて仕方がない。
いや、後ろめたいことは何もしていないのだが。
スーザちゃんがベッドですやすや眠っている横で、一晩中僕は床でのたうち回ってた。背中が痛くて寝られやしない。
「だからまだ早いと言ったんだ」課長は電話中だった。
テーブルにはかき氷機と、ブルーハワイ、容器、スプーンが食べっ放し出しっ放しになっていたが、仕事はしていないわけではなかった。
ホワイトボードに、昨日起こった4件の殺人事件がまとめられている。被害者の写真(遺体)から、被疑者の写真(課長の推理に基づく)まで。
ますは、1件目。
有谷長名 44歳 歯科医 有谷小児歯科クリニック院長
包丁で胸部を刺殺
有谷院長の遺体は初めて見たのだが、写真によれば、プラスティックの器具で強制的に口を開けられた状態で、口内に歯科治療のドリルを7本突っ込まれている。その姿のまま治療の椅子に仰向けに寝かされていた。
凶器は被疑者が所持
樫武射月 19歳 同クリニックで歯科衛生士として勤務
課長に気づかれていることを見越して冷房の設定温度をいじくる。鳥肌が治まらない。
次に、2件目。
羽太籠牟 28歳 美術教諭 私立文葦学園勤務
制服のネクタイによる絞殺
全裸 人間キャンバス 但し、人体の前面のみ 顔も性器も
衣類の一切が持ち去られており所在不明
凶器は被害者の足元にて発見 被疑者の所有物
移次未知生 15歳 同学園に通う中学三年生
写真はあのときの少女だった。やはり彼女がやったのか。面談があるだとかでその場は帰してしまったが。瀬勿関先生が付き添うという条件で。
そういえば、どうなったんだろう。
「外泊なんて認めないよ。仕事はそれはしょうがないな。でも帰ってくるじゃないか。一つ屋根の下で一夜を明かすとかがいけないわけだよな、うん」
早速バレている。課長の視線が痛い。
とするなら、電話の相手はスーザちゃん?
「何が解禁なものか。十代二十代なんて搾取されてぽいだ。怒っていないよ。心配なんだ、うん。一夜を明かしたいならムダ君の家はやめてくれ。そうだよ、そっちで。はいはい、またあとで」
「父親みたいですね」まさか父親じゃないだろう。
「祝多がいないんじゃ私が世話を焼くほかないさ」課長は深い溜息をついて両手を挙げる。お手上げという意味だ。「ったくね、年頃の娘なんかどうやったって男には懐かないよ。ムダ君を除いて」
「僕にも無理だと思われますが」
「何か言いたいことがあるんだろう」課長は僕を試している。
ここで僕がどう切り返したかによって、後々の対応や開示される情報のレベルがどうとでも変化する。
「祝多さんが首謀者という可能性は? 行方もわからないらしいですし」
「そうそう、そうなんだ。そうじゃないとは言い切れない。困ったことにな」課長がホワイトボードに眼を遣る。「さすがはムダ君だ。気づいたね」
被害者の共通点。
男。
被疑者の共通点。
女子。
「面談て聞いてるだろう。あれは祝多との面談のことだったんだそもそも」
「何をするんですか」面談。
「話を聞いてもらうんだ祝多に」
「それだけですか」
「ほかにも話を聞いてもらったり」
「話を聞いてもらうわけですね。わかりました」
イブンシェルタが怪しすぎる。
「もう一度行ってみても」
「無駄だな。行ったさ、ムダ君がむだむだやってる間に」
「いたんですか」祝多さん。
「いないと言われた。だからいないんだろう。代理の娘が理と表を取り違えたのか代表だと名乗っていたよ。正式に引き継いだのかはわからないが、引き継ぐのならスーザちゃんを差し置いてそいつはおかしいと、そう思うわけだ」
「スーザちゃんに対抗しているんでしょうか」代表。
課長が4件すべての被疑者の写真をはがして、横一列に貼りなおす。赤のマーカで丸を囲み。「全員がイブンシェルタを利用したことがある。そのうえこの娘はな」4人目から線を引っ張りアルファベットを書いた。
EVEns‐sEVEn
同質の7人、と訳すらしい。イブンスセブン。
「代理補佐をやっている。ナンバ2だな」
「やはり潜入捜査を」
「構わないが女装だぞ?男子禁制なのを忘れたか」課長が赤のマーカのふたを開けたり閉めたりする。「先に言っておくが、スーザちゃんの得意技はそれじゃない」
「前任者ですか」潜入捜査が得意。「失敗して」殉職。
「なぜ比べたがる?」
「比べるというか」殉職。「スーザちゃんに聞いたんですけど、祝多さんのせいで」殉職。
「祝多が殺したと思っているんだろ?違うかい。そのせいで祝多は行方をくらました。自主的に」
「強制的に、では?」
「そう思いたければそれでいいさ。ムダ君がやる気になってくれるんならな」課長の眼は、これ以上蒸し返さないでくれるか。というやんわりとした禁止令を発していた。「んで?やるの女装」
「しない方向で進めてください」
課長が腕時計を見る。
朝7時半。
「イブンシェルタはスーザちゃんに任せようか。ところでムダ君て取り調べ得意じゃないかい?特に女性相手はさ」課長が被疑者の写真を一枚だけ剥がす。
樫武射月。
「この娘だけ容疑を認めている。自分がやったと。だけど他三名様は、こぞってこんなことを言っている」
天罰
課長が赤のマーカを揮う。太字。
「なんだろう。天罰て」
「辞書貸しましょうか」
「そんなムダ君には同じく公務員の不祥事を揉み消、じゃなかった。尻拭、でもなくて」
「どうやって被疑者を割り出したんですか」3件目。
被害者 尼子屈肥留 52歳
被疑者 惣戸杏里耶 15歳
「観るかい?」課長がビデオカメラをデスクに載せる。「酷いよこれは。手ぶれが」
嫌な予感がする。
「僕が見ても大丈夫ですか」というかそれは遺留品では。
「ムダ君幾つだい?」年齢。
「観たくないんですけど」
「そう言わないでくれ。補正させたのもある」課長はディスクをパソコンにセットする。「心配しなくてもグロい系は映っていない」
「エロい系でしょうに」
頭が痛い。
なんだってこんな朝っぱらから、課長と雁首揃えて盗撮映像を検分しなければならないのか。
「被疑者が映っていたわけですね」物的証拠。
「ほらほら興味ある」課長がモニタをこちらに向ける。「いやはや凄いんだ。女子トイレのドアは」
「ドア?」
「そう。ドア」課長はしてやったりと笑う。「何を想像したんだい?アダムダ君」
「徒村です」
ドアだった。
個室のドアを閉めて、便器に座った状態でドアを見た映像。
動画で。
「何か気づこう」課長が早送りのボタンを押そうとする。
「頭に戻してください」
ずっとドアだった。
ひたすらにドアの内側が。ロックが掛けられたドアの。
「どうして」密室。「カギが掛かった状態で、内側にいる誰かが録画ボタンを押さないと」そうゆう映像は撮れない。
「他はないか」
「樫武さんもイブンシェルタを?」利用。
「他には」
「復讐ですか」動機。
課長が映像を停止する。
「音声が入っていたんだ。経験値の足りないムダ君には朝から刺激が強すぎるから絞っていたが」
課長が時計を確認した本当の理由が判明した。
「そう。ムダ君の言う通り、カギが掛かった状態で、内側にいる誰かが録画ボタンを押したんだ。酷い手ぶれを引き起こすような劣悪な環境にもかかわらず。これは録らされた」
僕の顔を見たくなかっただけだ。
「よく特定できましたね」声だけで。
「イブンシェルタは、容れ物ごと娘のようなものだよ。娘の声を聞き違える親があるかい」課長がディスクを取り出して。
半分にへし折った。
床に落として踏みつける。
「祝多がいなくなった途端この様だ」
「あの、証拠品では?」粉々。
「コピーに決まってる」
イブンシェルタは、課長と祝多さんが作った。性犯罪被害の少女を支援するために。
「課長って独身でしたっけ」
「娘がいた」
奥さんについては触れるなと。そういうことなのだろう。奥さんよりもまず娘の存在を明かすということは。離婚。死別。
「いた?」
「娘のために作ったんだったが、生憎と娘のためには活かされなかった。娘は見抜いていたんだろう。あんなものは何の意味もない役にも立たないことをな」
課長が作ったイブンシェルタから4人もの殺人犯が出てしまったという事実。
新人の僕ごときの首で済めば安いが。
課長の首と、課長が立ち上げたこの対策課と。
イブンシェルタならびに。
民間委託先の祝多出張サービスが。
どうなるんだろう。スーザちゃんだっていろいろがいろいろに引っかかってるわけだから。
「揉み消せって」まさかそうゆう意味で。
「殉職の心配をしていたようだが」課長が僕にレンズを向ける。
「もう、悪ふざけはやめてくださいよ」いい歳して。
「こんなにも物わかりがいいんだ。殉職なんかさせるかい。はい、笑う」
対策課が対策しているのは刑法かもしれない。
「オリジナルを消すから」
駄目だ。
本物。
「課長」ビデオカメラを取り返そうと手を伸ばすも。
「辞表を書こうが自由だが、受理した翌日に」課長がデスク後方の窓を開けて。
放物線を描いて落下する機械。
「あれと同じ運命を辿るともわからない。やってくれるね。私の部下なら」課長が窓を閉めて僕と眼を合わせる。「取り調べ」
まずいことになった。
この異動は単なる左遷じゃなかった。僕にこれ以上まともな捜査を続けるなという。さもなくば命の保証は以下略という。
彼女を捕まえるなという。
僕への脅迫行為。
2
この裏通りは昼と夜が逆転している。
朝に来るからいけないのか。夕に来れば変わるのか。印象は悪の巣窟ただ一つ。
まるで彼女のような。
タ=イオワン。彼女自身が僕に名乗った。
本名とは思えないが、他ならぬ彼女が言ったのだから僕もそう呼ぼうと思う。しかし、彼女の属する集合ならびに僕の属していた組織からはそうは呼ばれていなかった。
彼女がその呼び名を気に入っていなかったので、ここではそれについて言及することを控える。彼女の属する集合と、僕の属していた組織が、彼女本人の了解も得ず一方的にそう呼んでいただけだ。
彼女の出身は、僕のそれとは違った。たぶん違うだろうと彼女が言っていた。彼女が幼い時分に教わった言語が、僕の母国語と似ても似つかなかったらしい。
しかし、彼女が仕事上使用することの多い言語(おもに仕事中の僕と話すときの)は、僕が幼い頃ごく当たり前に使っていた言語(いわゆる方言)と可不足なく会話が成立した。
ここから導き出される僕と彼女の共通点は、僕の生まれと、彼女の育ちが同郷ということだ。いや、育ちではないかもしれない。仕事をするうえで身に付けたビジネス言語に当たる。だがそれならば、ごく一部の地域でしか通用しない方言よりも、いっそ標準語のほうが便利だったのではないだろうか。
尋ねたことがある。そうしたら、彼女は。
知らん。
と、ただひとこと。
しかしながら彼女が悪の巣窟であることに変わりはない。彼女と唯一接触のあった僕が捕まえなければならないし、左遷されて部署が関係なくなったいまでも、僕は彼女の逮捕を諦めてはいない。
僕の属していた組織は、彼女の動向を知りながらみすみす彼女の国外逃亡を許してしまった。違う。彼女を逃がしたのだ。
僕が捕まえないように。僕が余計なことを仕出かす前に。
先手を打って、僕を関係のない部署へ飛ばした。事実上の降格であり、上昇志向の強い僕のやる気を殺いで穏便に処理しようとしている。僕に無言のプレッシャーを与え辞表を書かせようとしている。マニュアル遵守、事なかれ主義を貫いて。
例え管轄を縮小され部署を異動させられても、中心地を離れ辺境の地に追いやられても、そこが同じ警察という組織の中でなら、彼女を捕まえるという僕の目的は達成できると思っていたのだが。
そう思い通りにことは運ばない。
対策課は、僕のこのささやかな目的ごと対策しようとしている。課長筆頭に。
時刻は21時。
奇しくも、昨日初めて祝多出張サービスを訪ねたときと同じ数字を差している。僕の時計の短針は。
呼び出しブザを押す。返答はない。
「スーザちゃん?いないの」
幸いなのか何なのかカギはかかっていない。掛け忘れ?罠?
スーザちゃんはいない。いるわけがない。夜はどこぞへ出張。
わかっていて来た。
「入るよ?」
入ってすぐに眼に入ったのは、上半身裸の男。
視界から外そうと下方修正したが、結果から言うと逸らす方向を間違えた。男は上半身だけでなく、下半身も同じく裸にせんと。つまりは、着替え中だった。
なんでこう男の裸ばかり遭遇するのだ。何の嫌がらせだ。
「すみません。出直します」下方修正をさらに修正する折に部屋を見回してスーザちゃんの姿がないことは確認済みだ。
この男がスーザちゃんの。
いや、それはない。ないと思いたい。そうだとしたら彼は生きていない。犯人は課長あたり。
「もうそんな時間?」男は、僕に構わず最後の砦を脱ぎ捨てた。「ごめん。2分で何とかするから」
ソファと床には、シャツやらズボンやらが散らばって。テーブルには、きちんと折りたたんだ、なんだろう。どこかで見たことがあるのだが。はてさて。どこだったか。
男は、僕の存在に構わずその衣装を身に付けていく。レースの下着を履いて、同じ色のブラジャを付けて。
ん?
ワイシャツを着て、ネクタイを締めて、短いスカートを。
ん??
膝上まである靴下を履き、髪を結いなおす。
メガネを掛けて。
ここまでジャスト2分。とか、時間を計ってる場合じゃなくて。ツッコむべきはほかに。
「あのお」その服装は。
文葦学園の制服。まさか。
「潜入捜査ですか」
「捜査?てほどのもんでもないよ」男は(男だ)鼻で笑う。
ビルの入り口横付けで黒いワゴンが停めてあった。フルスモークではないが、サイドはぴっちりとカーテンが引かれている。潜入捜査をする本人の顔を隠すためだろう。後部座席は対面だった。
「新人でしょ?」男は膝上丈の犯罪的なスカートにもろともせずに脚を組む。
「ああ、はい。先週から」対策課のことか。
「俺見ておろおろしてたからわかる」男は身を乗り出して僕の鼻先に接近する。「そんなことでどーすんの。あ、見張り?」急激に鼻先を遠ざける。「なーんだ。スーザちゃん好みだったからてっきし」
「長いんですか」潜入捜査歴。
「俺が一番新人じゃない?大概は店主、あ元ね、のときからだし」
身長は僕より少しばかり低い。ぱっと見。年齢は僕より少しばかり高い。じっと見。筋肉に過剰な主張がなく、肌の色が白いお陰か女装が見るに堪えなくなくはない。
彼は座席にあった箱を開けて化粧を始めた。慣れた手つきでぱっぱと化けていく。眉と睫毛と頬と唇と。髪をほどいて、僕に預けていたメガネを掛けると。
限りなく男から遠のいた。胸以外は。
「へえ、おっぱい党」男が(男なんだ)にやにやと笑う。「女の価値は乳だとか思ってない? 確かに元店主もスーザちゃんもあれだけどね。果たして上げ底かニセモノか」
「僕は何をすれば」女装男と乳論繰り広げてる場合じゃなく。
「なんも言われてない?あんれ、おかしいな」
到着したらしい。しかし、そこは。
文葦学園でも、イブンシェルタでもなかった。
温泉旅館。
駐車場に大型バスが4台ほど駐車っていた。○○予備校夏季強化合宿。
女装男は堂々とお客様用玄関から入った。入れたのだ。女装男の後ろには、僕以外にもわらわらと。女装男よりもいかがわしい出で立ちの男がぞろぞろと。祝多出張サービスのビルの入り口を固めている客引きや門番の男たちとはまた違う。
限りなく超個性の、用途不明のお面部隊。構成員4名。現在放映中の戦隊ヒーローのレッド以外が勢揃い。
フロントの従業員は奇異な顔一つしない。どうしてレッドがいないんですか?とか。予約の確認もしなければ、職質も。いや、それは僕の仕事か。
「あの、潜入捜査ですよね?」先頭をずんずんと突き進む女装男に尋ねる。ああ、わかった。
女装男こそがレッドなのだ。ただ少しばかり変身の方向が歪んでいるだけで。
「はいこれ」お面。「顔割れるよ」
「何をしに行くんですか」温泉旅館で。スーザちゃんお気に入りの特撮ヒーローのお面なんかかぶらせて。
女装男が、お面の統率格に指示して僕を一番後ろに付かせる。お面部隊は誰も何も言わない。これから何が行われようとしているのかつぶさに承知している。知らないのは新人の僕だけ。
階段で地下へ。エレベータを使わなかったのは、部隊の筋肉過多を原因とする重量オーバを避けるためか。
薄暗い廊下を右に左に折れて、多目的ホールと札の下がった扉の前で。お面部隊が一斉に散った。
女装男が恭しくノックする。
中年一歩手前の男がドアの隙間から顔をのぞかせて、きょろきょろと周囲を見遣ってから言った。「一人か。どうした」
「次の模試でいい判定取らないと」女装男が言う。裏声。
お面部隊は闇と死角に存在を潜めていた。僕もそれに準じて息をひそめる。
「そうか」中年一歩手前はうんうん頷いて。「勉強熱心なのはわかるが」
「ママをがっかりさせたくないんです」女装男が食い下がる。
「わかった。でも睡眠はだいじだからな」中年一歩手前が、女装男をホール内へ迎え入れドアを閉める。
お面部隊が気配を取り戻す。
何を始めるのか。
少なくとも潜入捜査ではなさそうだ。どちらかというと、張り込みに近い。目標の決定的証拠を押さえるために、ひたすらに好機を待ち続ける。絶好の突入タイミングを計っている。
お面の統率格がドアの隙間から様子を窺う。その他お面(ブラック、グリーン、イエロー)は、別命あるまで待機。さながら女装男は、囮捜査。文字通り自らの体を張って。
これが、祝多出張サービスのサービス内容なのだろうか。
呼吸の乱れた平均中年の男が三人。
着衣の乱れた女装男に我先に群がる。
統率格の合図で、お面部隊が動いた。
多目的ホールは、なかなかに広かった。地下フロアとは思えないほどに天井が高いお陰で、窓がなくてもまったく閉塞感がない。煌々と蛍光灯が照らす。学校や学習塾よろしく机と椅子が整然と並べられた最前列で。
快楽に沈没して動けなくなっている平均中年三人に一対一で襲いかかり、ついいましがた女装男が受けていた行為をそのままサービス返し。
阿鼻叫喚とか地獄絵図の類だった。何事もなかったかのように着衣を直している女装男に、交ざれだとかとんでもないことを言われる前に廊下に出る。
少女が立っていた。女装男と同じ服装。
文葦学園の生徒。
「お仕事してよ」少女が言う。「祝多出張サービスの新人さん」
「明朝、○○温泉旅館で、合宿に来ていた三人の○○予備校講師が死体となって発見されるわけだね」僕が言う。
「天罰じゃない?」少女が微笑う。「わたしが依頼したの」
EVEn3
Q.あなたがセクサロイドというのは
「引退しました」
Q.アンドロイドでは
「そう呼ばれていた時期もありました」
Q.人間ではないのでは
「ご覧になったのですか」
Q.何をですか
※少女3 無言
A.観ました
※少女3 無言
Q.あれは感じてないんですか。振りですか
「射精産業はすべからく演技です」
Q.代表の秘書のようなことをしている
「ただの受付係です」
Q.代表に命じられれば何でもやる
「事務ですから」
Q.あなたと共演した男優がもれなく死亡している
※少女3 無言
Q.その事件を捜査していた刑事ももれなく同じ目に
「天罰です」
Q.あなたには殺す動機がある
「すべての少女には男を殺す動機があります」
Q.私のことも殺しますか
※少女3 胸をはだける
「私たちを搾取するのなら」