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お使いクエスト

1.ブロンズケイヴ前



「これは何の集まりだ?」

 人混みに向かって私が聞くと、一人の冒険者が答える。


「ダンジョンだよ。ここで皆パーティメンバーを集めているんだ」


「ダンジョン……?」


「4人で攻略するコンテンツの事さ。開放クエが面倒だけどな」


 どうやら通常よりも強力なモンスターたちの住処を進み、パーティで協力して最奥にいるボスを討伐するのが目的らしい。


 ふむ、おもしろそうだ。私は開放クエストとやらを受けるために、洞窟の前に立ちはだかる様に立っている鎧の男に声を掛ける。


「すまない。私もここに入りたいのだが」


「何人たりともここに立ち入るのは許さん。どうしてもと言うなら、この荷物を団長まで届けるんだな」


 そう言われ渡されたのは小さな包み。団長とはシルバーキャットにいた大男の事だろう。

 また町まで戻るのは少々面倒だが、それだけの仕事だ。さっさと片付けられるな。


 ……そう考えていた自分が甘かった。


「これは本来マーリン様に渡す予定のものだ。【リンフィア】まで使いを頼まれてくれないか?」

 団長は言った。


「ふむ。これは港にいる船長が必要としているのじゃ。【旅立ちの港】まで頼んだぞ」

 マーリンとやらは言った。


「お勤めご苦労さん! じゃあこの代金を【スライズ】にいる郵便屋まで届けてくれねぇか?」

 船長は言い放つ。


 ……度重なる依頼で私はヘトヘトになった。まさか町まで戻されるどころか港まで逆戻りする事になるとは。


 しかもダンジョンに挑むにはレベルも20以上必要だと知った。今が18だから、どこかで少し狩りをする必要がある……疲れた。



2.カントリーロード

 


 そんな折、スライズへと向かう道で【角スライム】と出会う。駆け出しの冒険者には持って来いのモンスターらしい。しばらくここで経験値を稼ぐ事にする。


 しかし、腕を振り上げたところで声を掛けられた。


「おい、ここはわたしの狩場。です」


 なんと果物ナイフを譲ってくれたあの猫耳さんがそこに居た。

 彼女は続ける。


「ここで狩りたくばひゃくまんよこせ。です」


 しかし私はあの時のお礼が言いたかった。


「あの時はありがとう。私が戦士としてここに立っていられるのは貴女のお陰でもある」


「ん……あ。10万コインのひと、ですか」


 10万コイン? 何の事だろう? 構わず彼女は続ける。


「ん。おめでとう、です」


 おめでとう……恐らく戦士になった事を祝福されているのだろう。


 最初こそ冷たい世界だと思っていたが、今は違う。こうして様々な人と交流し交友を深められる事が魅力の一つだ。そして私は、そんな世界の虜になりつつあった。


「ところで狩りはパーティの方が効率が良いと聞く。良かったら私とパーティを組まないか?」


「ふむり。いいですよ」


 背中に大きな弓を背負う彼女は弓使いの職業【アーチャー】。

 モンスターの急所を的確に撃ちダメージを与える強者だ。



 しばらく狩りをしていたが、角スライムは動きが早く捕らえ辛い。

 「スイング」を連打するにもMPがすぐに尽きてしまう……。

 その時、ふと猫耳さんが歌を歌った。短い歌だったが耳に残る涼しげな曲だ。


「ご機嫌だな猫耳さん」


 そう言うと照れているのか顔を伏せた。


「ちがっ……こういうスキルですから」


 ……スキル? 言われてみれば確かに、少しだけ身体が軽くなった気がする。


 見れば【疾風の歌】(スピードソング)というバフが付いていた。どうやらアーチャーは攻撃も出来るサポーターという位置付けらしい。


 猫耳さんのバフもあり狩りはスムーズに進み、無事にレベル20に到達。

 「スイング」の熟練度も上達し、スキル【ラッシュスイング】を会得。より大きな範囲攻撃が可能となったようだ。


 区切りも良いのでクエストを進めるために町へ向かう事を告げると「なぜです」との事。

 ダンジョンの話をすると乗り気で「それなら私も行くです」と答えた。嬉しい話だ。レベル22の彼女は先に現地へ向かうらしく、一旦別行動となる。


「ん……とりあえずこれ、送っておくです」


 するとメニューから通知音が鳴った。



【"猫吸い" さんから友達申請が届いています】



 ねこ……すい? 何だか分からないが、どうやら猫耳さんの正式名称らしい。

 もちろん断る理由も無く申請を受ける。晴れて2人目の友達が出来た訳だった。


「よろしくお願いするぞ、猫さん」


「スイちゃん」


「え?」


「スイちゃんと呼べ、です」


 す、スイちゃん? 少し戸惑ったが……彼女がそう言うならそれに従おう。

 

「で、ではまたダンジョンで。……スイちゃん」


「ん。早くするですよ、めちゃうま……なにこの名前」


 お互い様な気がした。


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