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友人と会心を知る

1.リンフィアの森



 ねちねち、べちょべちょ……。

 音を立てて進んで行くと、いつの間にか私は森へ出ていた。


 マップを確認すると【スライズ】への道からは外れてしまっている。引き返すかも悩んだが、先にはもう一つ町があったのでとりあえずそこを目指す。

 

 スライム靴のおかげで身のこなしが良くなったからか、戦闘をこなした私はかなり強くなっていた。もはや貯まったコインで薬を買う余裕さえある。

 この世界では力が全て。そう悟った。


「だが、まだ足りないな」

 

 クラスを習得するには最低10レベルは必要。

 まだ8しかない私はこの辺りでモンスターを倒し、経験値を稼ぐことにする。


 ……しかし、そこには私と同じ果物ナイフを持った初心者がいた。

 なんと彼女はスライムに囲まれ、いたぶられているではないか。


「危ない!」


 私はそう叫び、スライム靴の力で高く跳躍して群れに立ち向かった。

 どういう訳か私の攻撃はこれまで以上のキレを見せ、あっという間にスライムたちを葬り去る。

 

「大丈夫か?」


「……あ、ありがとうございますっ」


 私が傷だらけのその子を助け起こすと、この世界に来て初めて礼を言われた。

 思えば助けられてばかりだったから、こうして誰かの役に立てた事は純粋に嬉しい。


 ……名を "冷凍ミカン" というらしいその子は、どうやら魔法職を目指しこの森へ来たそう。

 先にある町【リンフィア】は魔法使いの町らしい。


 魔職希望者はステータスを魔力に振らねばならず、攻撃に振れない。つまり、クラス習得レベルに至るまでの初心者時代はとても大変だと語った。


「だから他の方とパーティを組んでいたのですが、ここまで来たら突然『弱い奴は一人でくたばってろ』と追い出されたんです……」


 私は港町で向けられた多数の冷たい視線を思い出した。


「もし貴女が良ければ私と『パーティ』を組まないか?」


「いいんですかっ?」


 ミカンさんの目が輝く。


「もちろん。私もレベルを上げたかったんだ」


 そう頷いて、初めてパーティを結成する。


 狩りの最中に気付いたが、やはりモンスターへのダメージが倍近く上がる事がちょこちょこあった。

 これが会心攻撃という物だろうか? もしや招き猫から授かった【ビギナーズラック】のおかげかもしれない。


 ……しばらくの間二人で森のモンスターを狩り、お互いのレベルが10に達しようという時。


 私が止めを刺した【森スライム】から白く短い杖が落ちている事に気付く。

 【白樺の杖(☆☆)】と表記されたそのアイテムを懐に仕舞い、レベルの上がった私たちは魔法使いの町【リンフィア】へと歩を進めた。



2.リンフィア



 幹の太い大きな木々が聳え立ち、そこをくり抜いた住居がいくつも立ち並ぶ町――リンフィア。

 

「本当に助かりました! 何てお礼をしていいか……」


 町について開口一番、そんな事を言われる。


 「いいんだ」と私は返した。私だって人の助けが無ければここまで来られなかったのだ。

 MMOとは本来、こうして協力し合うものなのだろう。

 

「そうだ、これを」


 私は狩りの最中に手に入れた【白樺の杖】そして山ほど出た【スライムの靴】を一つ手渡す。


「こ、これって……すっごくレアな装備ですよ! とても受け取れないです……」


「そうなのか? しかし、靴はともかく杖は魔法使いしか装備出来ないようだ。それなら、ミカンさんに役立てて欲しい」


「それなら……ありがとうございます。本当に助けられっぱなしですね。

 わたしから返せるものは……これくらいしか」


 ミカンさんはそう言うと左指に嵌めていた【翡翠の指輪】を私の指に嵌める。


「ありがとう。大切にするよ」


「いえいえ!

 そういえば、めちゃうまチキンさんはどのクラスになるんですか?」


「ふむ。そうだな……」


 折角来たんだし魔法使いも、と思ったが私には魔力が無い。

 がむしゃらに力を求めたおかげで攻撃力にしかステータスを振って来なかったのだ。となると……戦士職だろうか?


「それならシルバーキャットへ行くんでしょうか。道中、気を付けて下さいね」


 シルバーキャット……どうやら、次の目的地が決まったようだ。


「ありがとう。ミカンさんも、またいつか」


「はい! あ、それと……」


 ぴこん。通知音が鳴って、私はメニューを確認する。



【"冷凍ミカン" 様から友達申請が届いています】



 ここまで来て一人も友達の居なかった私は即座に了承する。

 ……率直に言って、とても嬉しかった。


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