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ビギナーズラック・オンライン  作者: 門閥貴族
咎人たちと狼の王
19/28

生きている?

1.ヒンメル/天の広場



 フリーマーケットを出た私たちは早速入手した【陽の目】を渡して報酬を受け取る。


 報酬内容は【雲の鎧】という装備だ。鎧という名の通り戦士用の装備であったが、着ると全身がもこもことした雲に包まれてしまう。


 こんなもので身体を守れるのか? しかし防御力は高かった……。なんてやっていると。


【ヒンメルの住人との友好度:10/100】


 通知音がしてメッセージが表示された。友好度か。どうやらこれを100まで上げることで目的のアイテムである【天使の羽】を入手できるらしい。


「この感じだとあと9個のクエストをクリアする必要があるな」


「そうですね。ちょっと長いですけど、頑張りましょう!」


 討伐クエストに素材集め、お使い……数が多いのでグループを作り手分けして行う事にした。

 第一グループはスイちゃんとみかんさん。第二グループが私とフィンとなる。


 こう分けたのは単純に、何かあった時に戦士である私なら戦えないフィンを守りやすいからだ。


 そういった理由もあり戦闘系のクエストは主に第一グループが、お使いや簡単な素材集めは第二グループが受け持つこととなる。


「よろしく頼む、フィン。それにちゃっぴー」


「は、はい! おやくにたてるようがんばりますっ」


「チピ」


 それこそ病弱なフィンはどこかで休んでいても良かったのだが……彼女自身が『手伝います』と言って引かなかった。つくづく良い子だなと感じる。



 私たちはまず薬屋の主人から武器屋に薬を届けて欲しいという依頼をこなすことにした。なるほど、街は広くただこれだけの事でも店を持つと大変だろう。


「フィンはあんないをしますねっ」


 そう言うので先導役を彼女に頼む。彼女もここに来るのは初めてだったはずだが、どこでマップを覚えたのだろう?


 その案内は正確で滞りなく武器屋に到着する。


「うちは長持ちが自慢の武器屋だぜ。……おぉ、薬か? ありがとなぁ」


 これでクエストが一つ完了する。お使いクエストは行ったり来たりが大変だが、優秀な案内役がいるお陰で比較的楽に思える。


 さあ次の依頼だ。武器屋を出ようとする私たちを……「待ってくれ」主人が引き留めた。


「なんだ?」


「うちには息子がいるんだがもう3日も帰ってなくてな。良ければ探してきてくれないか?」


「3日も!? 任せてくれ、すぐに行こう」


 主人によると街の近くにある【雲の平地奥】というエリアに出掛けたきりだそうだ。


「いいんですか? この依頼はその……ほうしゅう、あまり良くないみたいですけど」


 そう言うのはフィンだ。報酬……確かにクエストリストに表示されているのは【キュア水3個】のみ。

 友好度を稼ぐためなら他のクエストの方が効率も良いだろう。ただ……。


「すまない、フィン。しかし息子が帰ってないと主人も心配だろう。そう思うと落ち着いていられなくてな……。

 とはいえ、薬の完成が優先だな」


「い、いえ! それはいいんです! フィンはまだぜんぜん大丈夫ですから」


 フィンは少し声のトーンを低くして話を続ける。


「あいてはNPCです。おにいさんがパーティの皆にやさしいのは分かります。でも、どうしてかれらのことも気にかけてくれるんですか?」


「そうだな。それは……『彼等も生きているから』だな」


「生きている……?」


「ああ。同じように生活があって、役割があって、悩みがある。その一部は私たちの様な冒険者にしか解決できない。それなら少しでもその手伝いがしたいんだ」


 そう言うとフィンはしばし小さな声で「生きている……」と繰り返した。何かまずいことを言っただろうか? しかしこれが私の本心だ。


 ゲームを始めたころ私も困っていたところを人に救われた。だから私も人をなるべく救いたい……そんな感覚だろうか。


「……ありがとうございます、おにいさん。そんな風にいってくれる人ははじめてです」


 そう言ってフィンはにこやかに笑う。納得してくれたようだった。


「じゃあ、むすこさんを探しにいきましょうかっ」


「ああ。しかしモンスターが出るだろうし、フィンは残っていても……」


「だいじょうぶです! うちのちゃっぴー、こう見えてもつよいんですよっ」


 そう言うと彼女は私の手を引いて駆け出す。ちゃっぴー……このふわふわした兎みたいなペットがそんなに強いのだろうか?


 ともあれ付いてくるからにはしっかり守らねば。気合を入れなおして私は【雲の平地奥】へと向かう。

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