第54話 残念勇者は全部にする
またこの女神様、訳わかんない事言い始めたな。
『割れ厨』ってあれだろ?
ゲームとかに金払わず、違法ダウンロードする奴。
中には『購入厨』とか言って、正規版をキチンと買う人をバカにするような、モラルの無い奴もいるらしいけど。
「えっと、どういう事ですか?」
「さっき彼らが言ってた『異世界=ゲーム仮説』だけど、まあだいたいあってるわ。あと、その基礎を作ったのは私ってのも正解。自分が散りばめた要素を集めて、考察してもらって、真実を導き出してくれるっていいわよねー! で、じゃあ私がなんでそんなものを作ったか、って話なんだけど」
「人間を拉致して、嫌がらせするためだろ?」
「実はそうなの」
「オイ」
「ふふふ、冗談よ」
なんだコイツ。
異世界に喚ばれた時は厳かな感じ出してたけど、意外とノリ軽いな。
「私はね、さっきも言ったけど『試練と謎』の女神なの。人間に試練や謎を与えて、試練を乗り越えたり、謎を解いて貰う事で、自分の存在を維持してる。フローラ姫を模した仮の姿から、この姿になれたのも、忠之が私の提示した謎を解いてくれたからよ」
「じゃあ解かなきゃよかったな」
「大丈夫、アナタは提示された謎を放置できるような人じゃないもの。じゃなければ、私自ら作成したゲームをクリアできる訳ないじゃない?」
「俺の性格分析しなくていいから、続けてよ」
「そうね。で、試練や謎を解いて貰うために、あなた達の話に合わせれば『ナーロッパテンプレ』を作ったのよ。それを他の神に配布する事でナーロッパ世界群が作られ、それぞれに人が召喚されて、ゲームをクリアして貰う事で、立案者の私に力を集める仕組みを作ったの」
「正にゲームを売って、集金みたいな感じだ」
「そういう事。神ってのは世界を創造して信者を集めたがるものよ。それを簡単に行える『ナーロッパテンプレ』は重宝されたわ」
インスタントな世界創造か。
神ってのもものぐさだな⋯⋯。
「で、このテンプレ配布には条件を付けたの。定期的に異世界人⋯⋯つまりあなた達の世界から人を召喚し、試練や謎を与える事と、絶対に基礎テンプレを改変しない事よ」
「まず⋯⋯なぜ異世界人なんだ? 現地民じゃダメなのか?」
「うん。現地民って結局テンプレに内包されてるから、それで謎や試練を解いて貰ってもただのマッチポンプなの。要は自慰行為みたいなもんで、それじゃあ子供は産まれない、みたいな感じ」
美人が自慰行為とか言うと、興奮するな。
「じゃああとは、なんで改変しちゃダメなんだ?」
「改変されちゃうと、その世界でいくら試練や謎解きをされても、私に力が入らなくなるのよ」
なるほど。
改変されると集金できなくなるわけだ。
海賊版だと収入が無い、みたいな感じだな。
それを指して『割れ厨』か。
「しかもよ!? 一部の奴らは、私に入るハズの力を横取りする仕組みを作ったの! 異世界人を召喚して、試練や謎を解かせて、力は自分が貰う。許せるわけないよね!?」
「いや、知らんけど⋯⋯」
「しかも、私はテンプレに制限を付けたわ。異世界人を召喚できるのはその世界ごとに一年に一回、一人だけ。だってポンポン召喚されたら、流石にこっちの世界に影響出ちゃうから。だからナーロッパ世界群の数から考えても、こっちから召喚される人数は本来、年間二十人にも満たないわ」
うーん、今世界の人口が八十億くらいらしいから、年間四億分の一ってことか。
凄い確率引き当てたな、俺。
ガチャならどんだけ課金が必要なんだ?
「だけど改変された場合、例えば学校の1クラスごと召喚されて集団失踪事件に発展したり、本来存在しないハズのスキルを作ったりとやりたい放題なの。だけど私は『割れ対策』を仕込んでたわ」
「聞いたことあるな⋯⋯なんかのゲームでも、正規版じゃないと、船がいつまでも港につかないバグを仕込んでた⋯⋯みたいな奴?」
「そう。で、割れナーロッパ世界の場合は『改変してからしばらくは正常に作動するけど、一定召喚数を超えたら、バグが発生する』って仕様を埋め込んどいたの」
「いきなりバグ発生じゃダメなんだ?」
「うん。『上手く行ってる!』と思ってる奴の足元掬うのが楽しくない?」
他人の事言えんが、コイツも大概な性格しとるな⋯⋯。
確かに! と思う俺も俺なんだけどさ。
「で、仕込んだバグってのが『召喚された人間が元の世界に戻る時、割れ厨と意識が入れ替わってこっちの世界に飛ばされる』。まあ、分かりやすく言えば『これって! 私達! 入れ替ってるー!』って奴が起こるようにしたわ」
「お前、こっちの世界の文化に詳し過ぎんか⋯⋯?」
「で、こっちの世界の⋯⋯名前付けるとしたら『割れ神』かしら? 割れ神を殺せばソイツは消滅、本来戻ってくるべき人間が肉体を取り戻して蘇生し、こっちに戻れる⋯⋯っていうね」
「それ、結構キツい罰じゃない⋯⋯? 神様が人間になるんだろ? もう許したれよ」
「ダメよ。割れ厨なんてトコトン罰を与えた挙げ句、消滅させるべきなの。しかもこの『割れ神を私の変わりに消滅させる』って事自体が試練になるから、私に力が還元されるのよ。割れ厨に相応しい末路でしょ?」
割れ厨訴えて賠償金せしめる、って感じか。
うーん、コンテンツ制作者の海賊版への怨みはハンパないな。
まあ、単なる利益だけじゃなく、コンテンツへの愛を汚された、みたいな感じかもな。
まあ、話はだいたいわかった。
「つまり、俺にその『割れ神』をぶっ殺せ、ってことだ?」
「うん。これは割れナーロッパ世界に捕らわれた人を救出する事にもなる、とても崇高なミッションよ」
「うん! ぶっちゃけどうでもいい! 丁重にお断りさせて頂きます!」
要はコイツの利益の為に、俺に働けって事だろ?
なんでそんな事せにゃならんのだ。
しかもあの必死こいた異世界生活も、結局コイツが利を得るためじゃん。
「えー? でも忠之、恋人と友達の裏切りがわかったとき、私のおかげだって感謝してたじゃん。その借りを返す絶好のチャンスよ?」
「はい! とても感謝しています! でもそれとこれとは全然別! じゃあ僕は塾があるのでこの辺で帰っていいですか!」
さて、コイツのクッソくだらない戯れ言も聞き終わったし、聖域を解除して帰ろう。
今日の晩御飯なにかなー!
聖域解除のために、スキルを行使しようとした、その瞬間──女神の口からとんでもない条件が飛び出した。
「とりあえず相談して決めた数の『割れ神』殺したら、童貞捨てさせてあげる」
ピタッ。
「⋯⋯誰が?」
「もちろん私が。あ、特記事項の欄は嘘じゃないわよ? 処女だから⋯⋯優しくしてね?」
女神は上目遣いでこちらを見ている!
しかも胸元は激しく強調されている!
破壊力は抜群だ!
蘇る思い出──それはあの胸をムリヤリ揉みしだいたあの日の感覚。
それが合法になる?
「いやー⋯⋯でも」
「あ、フローラ姫のアバターにする? それとも、アナタのお隣さん⋯⋯美沙さんだっけ? あの娘のアバター作るのも可能よ?」
なん⋯⋯だと?
金髪ドスケベ女神、オレンジブラウンヘアーの絶世の美女フローラ姫、黒髪清楚な美沙ちゃんから外見を選べるだと?
ゴクリ⋯⋯何ちゅう提案してきやがる。
フッ、だがこの女神、人間の心理がわかってないな。
「あのさぁ、人間って選択肢を与え過ぎると、むしろ逆効果って知らないの? 買い物とかでも選択肢が多すぎると迷った挙げ句、結局やめちゃうんだぜ?」
「全部にする?」
「全部にするぅううううううっ!!」




