エピローグ
雲母はドレスを着ている。天使がそれを着る手伝いをする。
天使
「まさに晴れの舞台ってやつね。とても似合ってるわよ雲母」
雲母
「ありがとうございます。…はぁ、こんな素敵なドレスを着れるなんて夢見たい」
天使
「ブライダルホテルの開店祝いでドレスを着せてもらえるなんて。凄いラッキーよ」
決行前夜。
天使
「雲母、法助。あんた達ブライダルホテルで結婚式体験披露会に参加しない?」
法助
「え? なんですそれ」
天使
「ホテルのパンフレットを作る為に写真を撮るのよ。あんたと雲母に衣装を着せるの。この際だからやっちゃいなさいよ」
雲母
「やる! やります! やるよね!?」
法助
「うん。面白そうだね。是非やろうよ」
天使
「ホテルの中のチャペルで写真撮って、バージンロードを歩くところを撮って、最後ブーケを投げる所を撮るの。参加すればレプリカだけど結婚指輪も貰えるのよ」
雲母
「凄いっ! 凄すぎるよ! 絶対参加する!」
天使
「甕さんが口聞いてくれたの。あのホテル、私の未来の就職先にする予定だから今のうちに顔を売らなきゃね〜」
雲母
「やったやった! ありがとう先輩! 大好き! 大好き! 大好き!」
雲母は天使のほっぺにキスの雨をふらせた。
天使
「こら! やめなさいっ! メガネが落ちるじゃないの!」
天使は堪らず雲母を押しのけた。
雲母
「ああ、ああ! 法助、私たち結婚するんだよ? 永遠に愛を誓うの。私と法助は永遠に結ばれるのよ。もう絶対離さないからね! んーまっ!」
今度は法助に熱いキスをお見舞する。
法助
「おっとっと、本当にする訳じゃないんだよ? …結婚するなら、ちゃんと式を挙げるよ…?」
雲母
「それでも最高のプレゼントだよ。私と法助はバージンロードを歩くの。2人で初めてを共有するんだよ…? 誰も式をあげてないホテルで、私達2人で、ね?」
雲母は法助に飛びつけばぎゅっと抱きついた。嬉しさで空まで飛んでいきそうな勢いを感じる。法助はアワアワと慌てている。
法助
「うん…。僕も楽しみだよ」
着付けの終わった雲母はホールへ出る。
法助
「…!」
法助は声が出なかった。美しい。まずその一言が頭に浮かぶ。
雲母
「…どう?」
法助
「…凄い、綺麗だよ。雲母」
雲母
「…ふふ、法助もカッコイイよ」
天使
「惚気けてないで行くわよ。みんな待ってんだから」
3人はチャペルへ向かう。すると作戦に参加したもの達が揃っている。
甕
「お! べっぴんだねぇ! まるでウエディングケーキが人間になったみたいだ!」
款太郎
「ううう、月姫が嫁に行く所を思えば泣けてきた…!して、憲助さん。月姫との式はいつ挙げようか」
憲助
「何を言ってるんだ款太郎さん、僕達はまだ付き合ってないんだけど…」
月姫
「…え? 憲助さん、私達付き合ってるんだよ? 知らなかったの…?」
憲助
「…どうしてこうなってしまったんだ」
銀子
「馬子にも衣装だな法助! 見違えたぜ」
海鼠
「背が高く見えるのですぅ〜。厚底ブーツです〜」
天響
「鼻を折ってから法助二等兵はちょっぴりイケメン度が上がったデスね。今なら雲母殿とお似合いのカップルデス」
琥珀
「雲母!」
琥珀が背後から現れる。あちこち包帯まみれで痛々しい。
琥珀
「遅れてすまない。ほら、カメラをちゃんと持ってきたよ」
天使
「あら、ご苦労さん。ちゃんとあんたも着飾ってきたみたいね」
琥珀
「はい! 天使様! どうでしょう!? 僕のこの姿、天使様のお眼鏡に叶うでしょうかっ!?」
天使
「包帯まみれでミイラ男みたいよ」
日陰
「どきやがれ三下がッ! 誰に断って天使様に近づいてるの!?」
日陰が現れ琥珀を突き飛ばす。痛そうに脇腹を抑える。
琥珀
「あだっ! 日陰君。勘違いしないでもらおうか。僕達は天使様の所有物なんだからね。天使様に気に入られた方が上なんだよ。全く君如きが僕と同じ土俵に立った気でいられるのは癪で仕方がないな」
日陰
「うっせーゲロドブッ! あんた天使様と一緒に写真撮ったくらいでいい気なってんじゃないよ! もう天使様に指1本触れさせないんだから!」
雲母
「琥珀兄さんがあの日からガラッと変わっちゃった…」
天使
「コイツらには隷属の悦を叩き込んであるわ。もう決して悪さはしないし、私の忠実な下僕よ。所で琥珀、新しいお金稼ぎの方法は思いついた?」
琥珀
「はい! 裁縫なんてどうでしょう。自作のアップリケを作ってクライアントに提供するんです」
天使
「それ内職じゃないの…。却下よ。地道すぎるわ」
日陰
「天使様の下着を売りましょう。それはもう高い値が着くはずです!」
天使
「買うのはどうせあんたと琥珀くらいなもんでしょ…。もっとマシなアイデアをひり出しなさいよ」
甕
「写真撮るぞー」
法助と雲母は写真を撮る。チャペルの中で手を繋いでいるところ、バージンロードを歩く所、チャペルの外での写真、結婚指輪をはめる写真。幾つか写真を撮って回った。
悠郁
「ブーケは私が取りますよ。深郁、あなたは自重しなさい」
深郁
「それとこれとは話が違うよお姉ちゃん。お姉ちゃんこそ自重しなきゃ」
ブーケを投げる場所が人混みになっている。
銀子
「クソ、背が低いのがこんなところで不利になるとは…。天響、おんぶしろ!」
天響
「やデスよー。私もブーケ欲しいデス」
海鼠
「みんなライバルです。ずるは無しですよー」
ブーケが投げられる。突如現れた苗生が、ブーケに群がる女生徒たちを踏み台に飛び込むようにブーケに向かってジャンプする。
苗生
「これは、私のものだよ!」
投げられたブーケの写真を甕が撮る。写真の中の時はそこで止まっている。幸せな記憶を写真の中に仕舞って思い出したくなれば見返す。それは思い出となり、辛い時に前へ踏み出す力になる。幸せな思い出も辛い思い出も記憶として頭の中に残り続ける。いつの日かこの時のためだったのだと納得出来る日が来るのを信じて。そうやって繰り返すうちに過去と向き合い心は前に進んでいく。生きていれば心の写真は増え続ける。いつか旅立つ時に寂しくないように、不安にならないように、昨日より人と人が想いやれるように。




