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きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
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第69話 死ぬ為に生きる

琥珀は電話を掛けている。


琥珀

「…箱柳君、電話に出ないな」


弦浦

「本当にここにいるんですか…?」


琥珀

「分からない。君は校門を出るところは確認したんだよね?」


弦浦

「はい…。確かに出るところは見てます」


「生徒会長、どうしますか?」


琥珀

「今連絡の付かない子がいて、その子から掛かってくるまで待ちたいところなんだけど。少し中の様子を見て欲しい。いいかな?」


「はい。分かりました」


傀儡の2人は中に入っていく。


弦浦

「従順なんですね」


琥珀

「そりゃそうさ。彼等には欲しいものを与えてあるからね。それ相応の奉仕をして頂かないと」


弦浦

「俺はどうしたらいいですか?」


琥珀

「うーん。もう暫くしてから中に入って貰えるかな?」





天響

「来たデス」


安栖里

「よし。いっせいのーでいくぞ」


男子生徒が暗い廃ホテルの中をライトで照らしながら探索する。2人は物陰に隠れながら男子生徒が来るのをじっと待つ。


天響

「いっせい!」


安栖里

「のーせ!」


長い棒を2人で引き上げた。男子生徒は足がもつれて転倒してしまう。すかさず天響が足に結束バンドで拘束する。


「な! なんだ!?」


天響

「チッチッチッ、大人しくするデス。すぐ終わるデス」


天響と安栖里はホテルの一室に男子生徒を引き摺り込む。安栖里が両手を拘束すれば、天響は男子生徒の鼻にチューブを差し込み、首を上げて口を塞げば液体を流し込んだ。


「んぐ、んぐぐぐぐ、ごぼ!」


天響

「喉の【弁】が解放されて飲み込まざる得ないのデス。さぁさぁぐいっとごくっと飲み込むデス。きひひひひ、美味しいデスかぁ?」


安栖里はドン引きしながらその様子を観察している。


安栖里

「怖! あんた怖!」


男子生徒はあまりの恐怖で戦意喪失している。口をガムテープで塞いで両手を結束バンドで縛る。


天響

「よしよし。1人ゲットです」


安栖里

「後2人か」


天響

「上手くすれば生徒会長もこれで拘束出来るデス」


「…おい! どうしたんだ…!?」


もう1人が心配になって様子を見に来る。2人は両サイドの壁越しに隠れる。


「…!? な、一体何があったんだ!?」


拘束されている男子生徒を見れば驚愕の声を上げる。天響は頭陀袋を被せてふくらはぎを蹴り膝をつかせる。男子生徒は頭陀袋を外そうとバタバタする。その間に安栖里は足に結束バンドで拘束し、天響が両手を後ろ手で組ませて安栖里が手際よく拘束する。頭陀袋を外す。


「はぁ、はぁ、なんだ!? なんのつもりなんだ!?」


2人を見た男子生徒は恐怖で戦慄いている。


天響

「あなた方は愛の犠牲になるのデス。付く相手を間違えた自分達を恨むデス」


天響は口をガムテープで塞げば顎を上げて鼻にチューブを差し込みまた液体を注入する。


「んんん、んんんぐぐぐ、ぶふ…!」


安栖里

「…ああ、癖になりそうだ。全く君の所為だからね?」


安栖里が恍惚とした声色で言う。


天響

「先輩殿、闇堕ちするのが早すぎるデス」





琥珀

「…帰ってこないし、連絡も付かないな」


弦浦

「どうしたんでしょう…」


琥珀

「弦浦君。先に行ってくれたまえ。僕は後についていく」


弦浦

「ええ、俺がですか?」


琥珀

「なにか不満が?」


琥珀が怪訝な表情で弦浦を見る。


弦浦

「い、いえ」


弦浦はホテルの中に入る。


弦浦

「なんなんだよここ…。お化け屋敷か?」


ライトで足元を照らしながら進んでいく。1階のロビーを探索し終えた後2階に上がる。


弦浦

「…」


中は荒れ果てており物音1つしない。部屋を1つ1つ探索していく。するとある部屋で蠢く何かを確認する。一緒に来た男子生徒2人を発見した。


弦浦

「…なっ!?」


弦浦はバッと後ろから拘束される。


弦浦

「誰だおめぇら!?」


天響

「大人しくするのデス。すぐ終わるデス」


安栖里

「安心してくれたまえ。すぐおねんねしてグッドモーニングさ」


安栖里が結束バンドで足を拘束しようとする。


琥珀

「誰だお前達!」


天響

「あ! まずいデス!」


安栖里

「流石に生徒会長は厳しい!」


琥珀が怒り心頭でこちらに向かってくる。弦浦はその隙に拘束を解いた。


弦浦

「はぁ、はぁ…!」


琥珀

「弦浦君、君は箱柳君とあの2人を探したまえ!僕はこの2人を処理する」


弦浦

「わ、分かりました!」


弦浦は駆け足でその場から離れる。琥珀の手が安栖里と天響に伸びる。その手をガッと誰かが掴んだ。


款太郎

「琥珀。質問がある」


琥珀

「な!? 梵君か!? 何故ここにいる!」


款太郎

「質問しているのは僕だぞ」


款太郎は琥珀のみぞおちに正拳突きを放った。


琥珀

「ぐほっ!」


琥珀は苦しそうに呻く。


安栖里

「あとは頼んだぞ款太郎!」


天響

「お願いしましたデスー!」


安栖里と天響は離脱する。


款太郎

「法助君を何故痛めつけた」


琥珀

「…ぐ、どうやら何か企てが生じているようだな。…君からゆっくり話を聞くとしよう」


琥珀は不敵な笑みを浮かべる。





弦浦

「…!」


弦浦はある一室で箱柳を発見する。窓際で外を眺めていた。


弦浦

「…苗生!」


箱柳

「あんた、傀儡だったんだね。ま、そうだろうとおもってたんだけど」


弦浦

「どうしてだ? 何故こんなことになってんだ!? どうして俺に教えてくれなかった!?」


箱柳

「私があんたに何かを教える義理があるの?あと、苗生って呼ばないで。マジでキモいから」


弦浦

「答えろ! 答えてくれ苗生! 生徒会長に刃向かったらどうなるか、わかってるのか!?」


箱柳

「うん。理解してるつもりだよ。だけど生徒会長は今日終わる。あんたはさっさと逃げれば?」


弦浦

「苗生、苗生、どうしてだ? 何故俺のことを認めてくれないんだ…! こんなにも想ってるのに、お前だけを想っているのに!」


弦浦は両手の拳を力強く握り歯を食いしばった。


箱柳

「あんたが私を好きでも、私はあんたのこと好きじゃないから。勘違いしないでよね。どうせ私の事を引き合いに出されたんでしょ?」


弦浦

「…だとしても、俺は苗生を裏切っちゃいないっ!」


箱柳

「法助は雲母さんが好きだから、私に付け入るチャンスがある。そしてあんたは傀儡としてここにやってきた。それは間違いないんじゃない?」


弦浦

「苗生、逃げよう。俺と2人で逃げよう。ここに生徒会長が来る。手遅れになる前に…」


琥珀

「手遅れになる前に、なんだって…?」


琥珀が背後からぬっと現れる。


琥珀

「答えてくれ弦浦君。箱柳君と何をするつもりだい?」


弦浦

「生徒会長…!」


箱柳

「生徒会長、こいつは何もしちゃいないよ。あなたの傀儡として立派に役割を果たしたんだから」


琥珀

「傀儡だと? 人聞きが悪いな。彼等は進んで僕に従っているだけだ。君はどうか知らないけど、その言い草は聞き捨てならないよ」


琥珀の手が弦浦の肩に伸びる。手は【血に濡れている。】


琥珀

「なぁ弦浦君。箱柳君の秘密、教えてあげようか」


弦浦

「…え?」


琥珀

「彼の父親は僕の父の会社の社員でね。それなりの役職についているんだけど、実は箱柳君が幼いころに離婚していてね」


箱柳

「…」


琥珀

「箱柳君の母親は再婚して問題なくいい暮らしをしてるんだけど、箱柳君は相変わらず自分の父親の事が好きでね。たまに会っているらしいんだ」


弦浦

「生徒会長、あんた…」


琥珀

「そうだよね箱柳君。君は自分のパパの事が忘れられないんだよね? 母親に隠れて一緒に、丁度こんな場所でパパと会っていてもおかしくないかもしれないな。どうなんだい箱柳君?」


琥珀が涼しい顔で笑いながらそう答える。弦浦の表情は氷ついており両目を大きく見開けば箱柳から目が離せないでいる。


琥珀

「どうだろう弦浦君。君は箱柳君の事が好きなんだろう? なら丁度いいじゃないか。丁度いい場所で丁度いい情報を手に入れることが出来た。ならそれを使わないのは勿体ない。ほら、箱柳君を君の好きにしたまえ」


弦浦の背中をポンと押す。背中を押されれば少しだけ前に進む。


弦浦

「…」


箱柳

「…」


箱柳は目を細めて弦浦を見つめている。


弦浦

「…苗生」


箱柳

「…」


弦浦

「俺はお前の事が好きだ」


箱柳

「…」


弦浦

「…お前の事だけを、想っている。例えどんな過去が合っても」


弦浦は1歩、2歩と箱柳の方へ進む。


弦浦

「どんなことをしていようとも。それは変わらない」


箱柳の前に立つ。


弦浦

「…悪いな生徒会長」


弦浦はくるりと振り返り構える。


弦浦

「俺はあんたに従わない」


琥珀

「…ふぅ、君もサンドバッグ決定だな」


琥珀が肩を竦めやれやれといったふうに前へ進む。すると突然天井が開けば琥珀の顔面に蹴りがお見舞される。


琥珀

「ぐぶっ!!」


琥珀は堪らず後ろに転倒した。


華山

「男見せたな弦浦」


弦浦

「…っ!! 華山か!?」


華山は弦浦の側まで後退すれば構えた。


華山

「2人でやるぞ。覚悟はいいか?」


弦浦

「畜生、やるしかないのか…!」





琥珀

「…どうやら眠ってしまっているようだな」


琥珀は捕まったであろう生徒2人を確認する。頬を叩いても起きそうにない。


琥珀

「箱柳君。君に最後のチャンスを与えよう」


通路には3人が無惨に転がっている。抵抗虚しくやられてしまったようだ。


琥珀

「水鳥と駆け引きしたまえ」


箱柳

「…駆け引き?」


琥珀

「そうだ。水鳥の両親は教師をしている。学園長の管轄外ではあるが、学園長からの声がかかれば解雇することも容易だろう」


箱柳

「法助の両親を解雇させる気?」


琥珀

「時間はかかるだろうが、見込みでは1年以内には実現可能だろうな。それを水鳥に持ち掛けるんだ。雲母を諦めないと両親はタダでは済まないとね」


箱柳

「…生徒会長、あんた悪魔だよ」


琥珀

「そんなことはないよ。理に反した事をしているのは君達の方なんだから。彼等は当然の報いだ。僕に刃向かったんだからね。ああ…。華山に蹴り飛ばされた鼻が痛くて仕方がないよ」


琥珀は鼻をクリクリと動かした。


琥珀

「彼等の処遇は後ほど正式に下すつもりだ。君、今日はもう帰るといい。何も出来やしないだろう? 無抵抗な君を殴っても仕方ないし、流石に殴りすぎて手が痛いや」


箱柳

「生徒会長はきっといい死に方しないね」


琥珀

「皆死ぬために生きてるんだよ。そして死ぬ前に何が残せるかが重要なんだ。僕は雲母との子を作って後世に命を引き継ぐ。それが僕の役割だと自覚している。君は水鳥とでも弦浦とでも勝手にくっつけばいい。それがいい死に方なら?」


琥珀はゆっくり立ち上がれば箱柳の服で手に着いた血を拭った。


琥珀

「ああ、今から雲母と会うのが待ち遠しいよ。僕達は今日一緒になる予定だ。今日この日を忘れられない特別な日にするつもりだからね。僕のことを愛してやまなくなるまで雲母を愛してあげるつもりだ。水鳥には特等席でそれを観てもらう。それじゃあ僕は学校に行くからね。良かったら君も見に来るといい。水鳥を前回より念入りに痛めつけないといけないけどね」


そういうと琥珀は立ち去る。去り際に華山の頭を軽快に蹴飛ばした。


華山

「…ぐっ!」


箱柳

「…」


箱柳は弦浦の元へ歩み寄る。


弦浦

「…う、うう。かは、げほ…」


箱柳

「…」


弦浦

「…苗、生」


箱柳は弦浦に膝枕をした。


箱柳

「…」


弦浦

「…大丈夫、か…? 何も、されなかったか…?」


箱柳

「…弦浦」


弦浦

「…」


箱柳

「…私は法助を愛してるの」


弦浦

「…ああ」


箱柳

「…私、法助を諦めない」


弦浦

「…はは、そうだな…」


弦浦はニッコリ微笑んだあと、眠るように気絶してしまった。箱柳は弦浦の頭を優しく撫で、俯いてじっと弦浦を眺める。箱柳は静寂に包まれる廃ホテルから外へ出る。外はもう少しで雨が降りそうだった。

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