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きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
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第64話 毒の壁

しばらくすれば男子学生と舘椿がこちらにやってくる。


「…ああ、常磐さん。久しぶり」


野球のユニフォームを着た男子学生が挨拶をする。


雲母

「絡城君、お久しぶりです」


箱柳

「絡城君、今時間大丈夫かしら」


絡城

「うん。話せるよ」


一行は校門に入って直ぐにあるベンチに腰掛ける。


雲母

「実はね、謝りたいことがあって今日来たの」


絡城

「謝りたいこと?」


雲母

「そう。私の従兄弟の常磐琥珀、知ってる?」


絡城

「…知ってる」


雲母

「多分だけど、絡城君は私から遠ざけるために転校させられたんじゃないのかなって…」


絡城

「ううん。違うよ。確かに琥珀さんには転校の話を持ちかけられたけど、条件があっての事なんだ。野球部の部活動、こっちの方が力が入っててね。こっちで良いポジションに入らせてもらえる様に口利きをしてもらえる事を条件に転校を決めたんだよ」


雲母

「…そうだったんだ」


箱柳

「宛が外れたね、雲母さん」


弦浦

「確かにこっちの野球部の方が強いっちゃ強いからな」


絡城

「宛が外れた? 所で常磐さんから遠ざける為って、どういう」


箱柳

「あ、もう帰っていいよ。話は済んだから」


雲母

「ちょ、ちょっと…箱柳さん、いきなりそれは」


箱柳

「聞かなくていい話もあるからね。絡城君、時間取らせちゃってごめんね」


絡城

「いや、いいんだ。じゃあまた、会えたらその時はよろしく」


雲母

「うん。野球、頑張ってね」


箱柳

「次は桑緒里と御籤か。今学校にいんの?」


箱柳は舘椿に聞く。


舘椿

「どうでしょう…。確か2人とも野球部のマネージャーやってたはずですけど。ちょっと連絡取ってみます」


舘椿は電話をする。


舘椿

「…学校にいるみたいです」


箱柳

「そう。会ってくれるの?」


舘椿

「生徒会室の鍵を開けて中で待ってる、らしいです」


雲母

「…」


あの2人に会うことになるとは。雲母は緊張し始めた。いきなり罵倒されることを覚悟しながら一行は生徒会室へと赴く。


箱柳

「んじゃ、開けるね?」


箱柳が先頭に立ち生徒会室の扉を開ける。


2人の女学生が椅子に腰掛けている。


箱柳

「あなた達が桑緒里さんと御籤さんだね」


「…」


「今更なんの用よ」


雲母

「…お久しぶりです。桑緒里さん、御籤さん」


桑緒里は押し黙っている方の女学生。棘のある言い草で来た女学生が御籤。


雲母

「今日は、2人に謝りたいことがあってここに来たんです」


御籤

「はぁ? 謝りたいですって?」


桑緒里

「あんたの従兄弟に頼まれて来たんじゃないのかよ」


雲母

「実は、琥珀兄さんがあなた達に何かの条件を持ちかけて転校させたんじゃないかと思って…」


桑緒里

「そうだよ。ウチらはあんたの母親と従兄弟のおかげでここに転校させられたんだよ」


箱柳

「さっき絡城君に確認とったんだけど、あなた達の取り越し苦労で雲母さんに手を出して罰せられたんじゃないの?」


御籤

「くっ! そんなの分からないでしょ? あんたが絡城君を誑かして琥珀のヤツが無理やり転校させられたのかもしれない。そんなこと、本人の口から言えるわけないじゃない!」


桑緒里

「ましてや雲母本人によぉ!」


2人はとてもご立腹のようだ。


雲母

「…本当に、申し訳ありません」


箱柳

「うんうん。実はそうなのかもしれないよね。だから2人にちょっと協力して欲しいことがあるんだけど、いい?」


桑緒里

「なんだよ!? 何を協力させようっつんだよ! 言っとくがお前達の良いようになんて絶対させねぇからな!」


箱柳

「常磐琥珀に復讐する。そうすればあなた達の気持ちも幾分かは晴れるんじゃない?」


御籤

「…琥珀に、復讐…?」


御籤の表情が強ばる。


桑緒里

「アイツに復讐だと…? 何言ってんのかわかってんのか?」


箱柳

「もちろん。それにはあなた達の力が必要なんだよ。常磐琥珀の被害者であるあなた達の力が、私達の学校の影響の及ばないあなた達の力が、ね」


桑緒里

「そいつはどうなんだよ」


雲母を顎でしゃくる。


桑緒里

「そいつは琥珀の身内なんだろ。それなのに復讐ってどういうことだよ。意味がわからねぇ」


雲母

「…私も琥珀兄さんに復讐するつもりでここに来ました。お願いします。力を、貸してください」


雲母は立ち上がり深く頭を下げた。


御籤

「…」


桑緒里

「…チッ」


2人は目を細めて雲母を見る。まだ納得がいかないようだ。


箱柳

「どうしたの? 協力するの? しないの?」


御籤

「…条件があるわ」


雲母

「条件…?」


御籤

「悠郁さんに話をつけて。あの子が良いって言うなら私達も協力する」


雲母

「悠郁さんに?」


箱柳

「なら一旦私達の街に戻らなきゃね」


御籤

「大丈夫よ。しばらくすればここに来るはずだから」


雲母

「…え? なんで?」


御籤

「野球部の練習後に3人で遊ぶ約束してたのよ。だからもう少し待てばここで会えるわ」


雲母

「…分かりました。悠郁さんを待ちましょう」


弦浦

「どうやら話は纏まってきたみたいだな」


箱柳

「そうだね。悠郁が来るまで時間を潰そっか」


一行は悠郁がここに現れるのを待つ。しばらくすると誰かが生徒会室に入ってくる。


「お邪魔します」


コンコンコンと誰かがノックすれば、桐邑にそっくりな女学生が生徒会室に入室してくる。


雲母

「…悠郁さん」


悠郁

「雲母さん。お久しぶりです」


雲母

「実はお話したいことがあって、今日はここに来ました」


悠郁

「…そうですか」


雲母

「悠郁さんと従兄弟の琥珀兄さんとの間で問題が生じて、それで悠郁さんが転校させられたと聞き及んでいます」


悠郁

「…」


雲母

「その事を謝る為に皆様に呼びかけました。それで…」


悠郁

「私と雲母さんだけでお話がしたいです。他の皆様は退室願ってもよろしいでしょうか?」


箱柳

「2人で話? なんで?」


悠郁

「積もる話もあるでしょうし、もしかすれば恥ずかしい話もあるかもしれませんので。2人での話し合いを希望します」


桑緒里

「悠郁がそういうならそれに従ってもらうぞ」


箱柳

「…ん。雲母さんはそれでいい?」


雲母

「はい。大丈夫です」


雲母と悠郁を除いて生徒会室から出ていく。


悠郁

「…本当に、お久しぶりです。雲母さん」


雲母

「…はい」


悠郁

「元気にされてましたか?」


雲母

「ええ。私は変わりないですよ。元気です」


悠郁

「…そうですか」


悠郁は窓の近くに立てば外を眺める。


悠郁

「ねぇ。雲母さん。琥珀さんとは仲良くやっていますか?」


雲母

「…いえ、琥珀兄さんとは今距離を置いています」


悠郁

「なら打ち明けたんでしょうね。あなたの事が好きであると」


雲母

「…知っていたんですか」


悠郁

「はい。私はそこまでたどり着きました。そして雲母さんにその事を打ち明けると琥珀さんを脅したんです」


雲母

「…」


意外な事実だ。悠郁は琥珀が雲母を好きな事を探り当て、その事を出汁に琥珀に話を持掛けるところまでたどり着いていたらしい。かなり頭の冴える人物なのかもしれない。


悠郁

「…私は琥珀さんとの情報合戦に敗れ、そしてここに転校させられた。そう予想していたならそれは正解です」


雲母

「悠郁さんは琥珀兄さんを何故脅したんですか? あの2人が転校させられたからですか?」


悠郁

「それはね…」


悠郁は生徒会室の入口に移動する。そして【鍵を掛けた。】


悠郁

「雲母さん。私、あなたが好きだからです」


雲母

「…え?」


雲母の血の気が引いていく。ガタっと席を立つ。


悠郁

「私はあなたの事を想っていた。だから琥珀さんと対立することになったんです。やっと、ようやくたどり着いてくれましたね」


雲母

「…ど、ど、どういうことですか…? あなたが私を好き…??」


雲母は動揺して目が左右に揺れる。何を言っているんだコイツは。理解が追いつかず気が動転している。


悠郁

「はい。私はあなたの事が好きなんです」


悠郁はゆっくりと雲母の方を振り向く。


雲母

「それはおかしいでしょう? あなた女の子じゃないですか!」


雲母は眉を寄せ詰め寄る。


悠郁

「おかしいことはありませんよ。女性が女性を想うことは珍しいことはありません。全体の10%にも満たないですが、それは確かに存在しているのです」


突如掃除のロッカーから物音がする。雲母はバッと振り向く。キィっと開けばロッカー誰かが出てくる。


「常磐さん、くくくく、覚悟しなさい。あんたはもう逃げられないよ」


雲母

「深郁…さん…!?」


悠郁

「深郁、雲母さんを怯えさせないで」


悠郁は雲母の背中に触れる。雲母はそれを払い除ける。


雲母

「ち、近寄らないで!」


雲母が深郁に背を向けた直後、深郁が雲母を取り押さえる。


雲母

「…!!」


悠郁

「…雲母さん、いえ、雲母。今から【あなたと私は初めてを共有する】のです。それで初めて私とあなたは協力関係になれる。それが琥珀さんに復讐をする条件です」


雲母

「初めからこうするつもりだったんですか!?」


悠郁

「そうですよ。絡城君を除く【5人はこの事を共有しています。】あなたはまんまと嵌められたんですよ」


雲母

「…ご、5人…!?」


悠郁

「そうです。【箱柳苗生さんはあなたを売ったんです】」


雲母は雷に打たれたような衝撃が走る。自分をまんまと利用してここに導かれた。教室でのことも、初めからこうするつもりで仕掛けられたことだったのだ。それを確信した瞬間舌が震え、目眩がし出した。目に映る部屋の壁全体が【まるで毒の壁のように】ドロドロと融解していくような錯覚を覚える。


悠郁

「さぁ雲母。覚悟を決めなさい」

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