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きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
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第54話 繋がった

放課後。海鼠はまた生徒会室へ赴く。


琥珀

「お、来てくれたね」


海鼠

「本日も報告に上がりましたです〜」


琥珀

「いつも悪いね」


海鼠

「これも法助二等兵の為です。生徒会長なら悪いようにはしないはずです」


琥珀の頬がややひくつく。


琥珀

「そうだねー。僕も彼の力になれることがあるなら本望だよ。ただ部活動の掛け持ちっていうのはあまり例がない事だから、水鳥君の状況をちゃんと把握しておきたいかな」


海鼠

「そうなのです〜。浮気は良くないのです。ちゃんと文化部1本にして集中して欲しいところですねぇ」


琥珀

「ははは、浮気は確かに良くないね。どちらかでめぼしい結果が残せるなら、そっちに集中して欲しいところなんだけどね」


琥珀はメモ帳を取り出し、メモの用意をする。


琥珀

「さて。それでは話を聞こうかな」


海鼠

「法助二等兵は自分のクラスの教室の居心地が良くないみたいなのです…。それで昼休み文化部に来てお弁当を食べてるです」


琥珀

「ふむ。海鼠君はその理由を知っているのかな…?」


海鼠は少し悩んだあと口を開いた。


海鼠

「今は大丈夫らしいのですけど、虐めを受けてたらしいのです。それで教室で食べるお弁当より、文化部で食べるお弁当の方が美味しいって言ってたのです」


琥珀

「…なるほど。そんなことがあったのか」


知っている。知っている上でそれを黙認していたのだ。いじめっ子の主犯は華山範造。彼は空手部に所属しており、全国大会に出れる実力を有している生徒である。水鳥法助より結果を残して本校に良い実績を残せる華山の方を優遇していた。

問題自体は把握していたし、それを収めるように梵款太郎にも通達してあったが、何分抑制の効かない生徒であったのも事実である。2年2組担当の玉菊にも話は行っていたが、結果は焼け石に水で誰も解決出来ずに空手部の次期主将になるという条件で放置されていた。今上がった情報は知っているものだったが一応報告の内容をメモに書き記す。


海鼠

「生徒会長はいじめっ子に注意したりするのです?」


琥珀

「時には注意喚起に向かったりもするな。ただそれは生徒指導の先生の仕事だし、僕の管轄外の話でもある。残念だけど僕には力になれないかな…」


海鼠

「生徒会長でも難しいですか…」


琥珀

「時間が解決してくれるっていうのもあるし、本人達の問題でもあるからね。周囲がどうこう言っても結局収まりはしないし、余計酷くなるケースだってある」


海鼠

「生徒会長がバーンってやっつけられたらいいのにです〜」


琥珀

「コラコラ海鼠君。暴力は何も解決しないよ。お互いキチンと話し合って問題と直視しないと、ね?」


琥珀はにっこりと微笑んだ。


海鼠

「今日はこんなものですね〜。生徒会長から法助二等兵に聞きたいこととかあるのです?」


琥珀

「…え? 僕からかい? うーん」


琥珀はあからさまに悩むようなポーズをとる。チャンスだ。海鼠は密告の仕事に対して前向きになっている。


琥珀

「例えば水鳥君に仲がいい人とか、好きな人が居ないかとか聞いて見て欲しいな。クラスでも部活動でもいいから」


海鼠

「え? 好きな人、です?」


海鼠はキョトンとした。何故そんなことが気になるのだろう。


琥珀

「そうだね。さっきの話の続きってことでもないけど、クラスとか部活動で仲良しがいればその人に掛け合って助けてあげられるんじゃないかなって思ってさ。文化部や空手部だって大切なコミュニティだ。だけどクラスから離れてしまっては集団的な社会性は培われない。仲良しとだけ一緒にいられるのは確かに楽でいい事だけど、協調性がない人間に成長しては水鳥君の為にならないだろう?」


海鼠

「ふぅむ。それもそうかもですね〜」


海鼠は人差し指を顎に押し当てて首を傾げる。


琥珀

「…どうかな? 聞いてきて貰えるかな?」


海鼠

「わかったです〜。それとなく聞いて見るです〜」


琥珀

「ホント? ありがとう海鼠君。恩に着るよ」


海鼠

「そんな大袈裟なです。ちょちょいのちょいで聞いてくるのです」


海鼠は笑顔でコクコクと首を縦に振る。


琥珀

「よし。それじゃあお礼に僕の話をしようか。どんな話が聞きたい?」


海鼠はメモの用意をする。


海鼠

「そうですね〜。それじゃあ生徒会長の、好きな人の話が聞きたいです〜」


琥珀の顔がまたひくついた。


琥珀

「え? 好きな人かい? …うーん」


勿論雲母が好きだなんて言える筈がない。頭をかいて悩む。


海鼠

「居ないです〜? なら、好きな人の特徴とかはどうです?どんな人が好きです?」


琥珀

「好きな人の特徴かい…?」


少し考える。雲母の特徴を何となく思い浮かべた。


琥珀

「そうだね…。困ってる時に助けてくれる人とか、好きかもね」


海鼠

「ほうほう。他にはないです?」


琥珀

「うーん、それでいて守りたくなるような何処か儚げな印象の人も好きだね。でも好奇心があって色々なことに手を出す活発な人も好きかな」


海鼠

「…うーん。…ふふ、なんだかハッキリしない感じです。身体的特徴とかはどうです? 例えば背が高いとか、髪が長いとか。どうです?」


琥珀

「身体的特徴かい?」


琥珀は少し悩んだ。


琥珀

「あ…! あるよ」


海鼠

「む? ありますです?」


琥珀

「意外と細身の人もストイックな感じがして好きだよ」


海鼠

「…え…?」


海鼠は頭の中でなにか違和感を覚えた。しかしそれは徐々に形状を為して答えに【繋がっていく。】


海鼠

「…分かりましたです。ありがとうございますです」


琥珀

「うん? なにか浮かないね。君の思ってたような答えじゃなかったかな…?」


海鼠

「…生徒会長は、すごくすごくいい人なのです。生徒会長の恋、きっと結ばれるように応援するのです」


琥珀

「…え? どういうこと?」


まさか勘づかれたのでは? と思ったが今の答えで雲母を連想するような事はないはずだ。まぁ、本人がこういっているのだからそれでよしとしておこうか。


海鼠

「…生徒会長、また明日来るのです。その時、しっかり、ゆっくり、じっくりと、話を聞くのです」


琥珀

「…あ、ああ、また明日…」


海鼠はメモ帳を仕舞えば項垂れながら外へ出て行った。


海鼠

「…【繋がったです…!】」


海鼠はパタパタと走って校門から出ていく。


海鼠

「【生徒会長は法助二等兵のことが好きなのです!!】」

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