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きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
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第53話 幸せもの

琥珀

「僕の家は地主でね。この辺一帯の土地を所有して貸し付けているんだ」


海鼠

「へぇ〜。そうなのですか。結構古い家柄だったりするんです?」


琥珀

「そうだねー。かなり古くからある家柄で家自体の規模も大きいよ」


海鼠

「生徒会長のお家大きそうです。一度行ってみたいです〜」


琥珀

「母屋と離れを合わせてもかなり広いよ。歩いてぐるっと1周するのに10分近くかかったりするかな」


海鼠

「あわわ、ウチの家なんか10秒あったら1周出来ますです〜」


琥珀

「あはは、少しくらい分けてあげられたらいいんだけどね」


海鼠

「生徒会長は自分の家の周りで沢山遊べたですね〜。ちょっと羨ましいです」


琥珀

「ああ、そうだね。従兄弟も多いから、彼等が来ればいつも一緒に遊んでいたよ」


海鼠

「ウチはあんまり従姉妹が好きじゃないです〜…。ウチのこといつもバカにしてくるです…」


琥珀

「そうなの?何故そんなことを?」


海鼠

「理由なんて大したものじゃないです。小さいからとか、オドオドしてるからとか、そういった些細な所をつついて来るのです。昔からそうです」


琥珀

「子供は残酷だからね。とは言ったものの僕達もまだまだ子供だけど」


海鼠

「生徒会長は誰かに虐められたこと、ありますです?」


ふと父親の事が脳裏に過ぎった。躾と称してベルトで背中を叩かれたり、出血する程強引に耳を引っ張られた事があった。ある時風邪をひいて病院に行った時に背中に青い痣があった為、母親が医師に詰められた。母親はその時なんでもありません、背中を遊具で打ち付けたとその場は誤魔化した。それを母親は父親に打ち明けたが、そんなことがあったからといってそれが止むはずもなく、しばらくそういった躾は続いた。


琥珀

「…ないよ。虐められたことはない。この学校で僕に手を上げられる人なんていないだろうし?」


海鼠

「生徒会長、大きいし強そうですです。やっぱりそういう所でお得なのです〜」


琥珀

「うーん。まぁ、自分の持ってるものに対して感謝の気持ちは湧きにくいよね。そういう所も親に感謝しなくちゃいけないのか、な?」


少し皮肉めいた調子で答える。勿論感謝などしているはずもない。やられたことは全て覚えている。正直父親には殺意すら覚えている。当たり前のことだがその衝動を行動に移すかどうはまた別の話であって、その辺の分別は弁えている。


海鼠

「生徒会長は習い事とかしてたのですか〜?」


琥珀

「習い事? 僕は色々やってきたよ。水泳、書道、柔道、算盤、英会話とか。あと専属の家庭教師がいたかな」


海鼠

「へぇ〜! 凄いです〜! 生徒会長は柔道してたからこんなに大きくなったです〜」


琥珀

「いやいや、柔道をしてても小さい人は居たよ。普通に遺伝だと思うんだけど」


海鼠

「ウチは習い事とかやった事ないですー。生徒会長は色んな経験をしてるです」


琥珀

「やるからにはいい成績を残してきたつもりだけどね。海鼠君はやりたかった習い事とかあるのかな?」


海鼠

「ウチですか? うーん、茶道とか雅で良さげです〜。水泳とか算盤も気になりますね〜」


琥珀

「ある程度年齢がいってしまうと世間体的な意味で出来なくなっちゃうよね。小さい頃からそういう経験を積めた事は幸いだったと思うよ」


海鼠

「ふふふ、生徒会長は幸せものです〜」


ふと雲母の事が脳裏に過ぎった。雲母は僕が父親に躾られている場面を見て心配してくれた。雲母が5歲の頃だった。あんな事は普通ではない。あんな事があっていいはずは無い。そう気付かせてくれた。雲母が父親に躾を辞めるように言ったのは雲母が7歲の頃。母親ですら聞かなかった父親の躾を止めてくれたのは雲母だった。そういえばそうだ。雲母は僕を助けてくれたのだ…。


琥珀

「…」


琥珀は少し虚ろな表情になる。


海鼠

「…どうしたのです?」


琥珀

「…あ、いや。僕は幸せものなんだなって、そう思っただけだよ」


2人は暫く話し合う。


海鼠

「あ! もうこんな時間です〜。生徒会長、お話聞かせてくれありがとうございましたです」


琥珀

「うん、こちらこそありがとう。こんな話で良ければまた聞かせてあげるよ」


海鼠

「はいです! また聞きたいです〜。それじゃあまた明日ですー」


海鼠は手を降れば生徒会室を後にした。翌日のお昼休み。法助が課題を提出する。


銀子

「ん。ご苦労さん」


海鼠

「…じー」


海鼠は法助の顔をじーっと見つめている。


法助

「うん? 海鼠副隊長、どうしました…?」


海鼠

「別に? なんでもないです〜」


法助はキョトンとしながら席に着いてお弁当を広げる。


法助

「いただきます」


海鼠

「法助二等兵は何故ここでご飯を食べるのです?」


法助

「…え? えーっと…」


答えに詰まった。教室で食べるよりここに居たいから。それもそうなのだが、単純に教室が嫌だからだ。


銀子

「海鼠、言ってやるな。オレ達と同じように教室に居場所がないんだよ」


海鼠

「…そうなのですか? ウチ達と同じなのですね…」


法助

「…みなさんもそうなんですか…?」


法助はしり込みしながら聞いてみる。


海鼠

「ウチと銀子隊長はちょっと浮いてるです。天響一等兵は単純にここにきたいかららしいです」


天響

「ここに来れば気兼ねなく漫画を描けるのデス。向こうよりこっちの方が気を使わなくて楽でいいのデス」


銀子

「オレ達の漫画は教室では開けねぇからな。天響はたまにクラスメイトと飯を食ったりしてるけどよ」


天響

「誘われれば食べるのデス。まぁ、あまり誘われませんデスけど」


海鼠

「法助二等兵はクラスで浮いてるです…?」


法助

「…実は、僕クラスで虐められてたんです」


銀子

「…なんだって?」


銀子が怪訝な顔をして法助を見る。


法助

「今は大丈夫なんですけどね。だけど、ここで食べるお弁当は、教室で食べるお弁当より美味しいので。…えへへ」


海鼠

「…法助二等兵。野暮なことを聞いてごめんなさいなのです」


海鼠はしゅんとしてしまった。余計なことを聞いてしまったかなと少し反省する。


法助

「いえ、いいんです。僕には隊長達や天響一等兵殿がいますので」


銀子

「…法助。もし困ってんならオレに相談しろよ。オレが助けてやるからな。お前を虐めてるやつをぶっ飛ばしてやる」


天響

「ふっ。照れますデスね。法助二等兵にならいつでも胸を貸すデス。頼りにしてくれていいデス」


銀子

「天響、それ意味わかって言ってるか?」


海鼠

「…ここなら誰も法助二等兵を虐めたりしないです。いつでも好きな時に来るといいですよ」


法助

「…ありがとうございます。素直に嬉しいです」


法助は少しうるっときた。


4人はその後、ワイワイ楽しげにお昼休みを過ごせば、午後の授業の時間になり各々の教室に戻って行った。

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