第26話 私はバニラちゃん
バニラ
『先日はよくもやってくれましたねぇ』
ベリック
『ああ? どうだ、盛り上がっただろ?』
バニラ
『私はあなたがやった事にお冠です。盛り上がっただなんて余計なお世話です。折角作った家を破壊されて喜ぶ人がいるもんですか』
ベリック
『ガキだなぁ。こういうのサプライズがあれば視聴者も増えるんだよ。オレはその協力をしてやっただけだ』
バニラ
『ふーん。そうですか。実は今日、そのお礼がしたいと思ってメッセージを送らさせて貰いました。あなたと対戦がしたいんです。来て貰えますか?』
バニラは時間を指定する。
ベリック
『ああいいぜ。今日は日曜、F直々に遊ぼうだなんて申し出を断るのは野暮ってもんだ。もちろんライブ配信をするつもりなんだろ?』
バニラ
『…ふふふ、そのつもりです。あなたを公衆の面前で叩きのめす。それによって私の復讐が完遂されるのです。心待ちにしていますよ。悔しがるあなたの姿を見るのを、ね』
ベリック
『オレは別に姿を晒すつもりはないぜ?』
安栖里はこのメッセージをショートで切り抜き宣伝した。するとバニラ・フロートのSNSのアカウントに多数の是非見に行きたい旨のコメントが寄せられ、良い宣伝になったことを安栖里は確信した。
天使
「まだFになって数日だってのにエラい企画を立ち上げたわね」
雲母
「私はこの悪質ユーザーを倒す為だけにバニラちゃんとして戦いを挑んでいるだけです。それ以外に他意はありません」
安栖里
「相当根に持ってるね…」
雲母
「このままではあの時爆発されたバニラハウス1号店が浮かばれません。このバニラハウス2号店、決してやわな作りにはなっておりませんので。私があのベリックとやらに見事に勝つところを是非とも2人に、いえ、配信を見に来てくれたリスナーさん達にご覧に入れましょう」
天使
「あんた割と芝居がかった言い回し好きよね。Fに向いてるんじゃない?」
午後3時頃、約束の時間になればライブを開始する。100人近くのリスナーが配信を見に来ている。
天使
「自分の撮影そっちのけでこれを見てしまってるわ。この100人近くのリスナー、結構暇人なのね」
安栖里
「コラ、ファンになんてこと言うんだ」
雲母
「わぁ、100人近くの人が見に来てくれてるなんて…。今日は見に来てくれてありがとうございます〜」
雲母の配信が開始する。
「バニラちゃん頑張れ」
「やられても気にするな」
「海外のノーティー兄貴頑張れ」
「絶対やられる」
「期待してる!」
雲母がタウンクラフトを立ち上げる。自分のタウンにログインすれば広いマップにアイスクリーム屋のようなカラフルなお店が並んでおりポップな雰囲気に仕上がっている。
「可愛い」
「短期間でよく作った」
「ここで戦うの?」
「また爆発される。可愛そう」
「さすがにバックアップとっただろ」
雲母
「前回海外ユーザーの人にいきなり爆破されちゃったんだけど、それより以前に来て貰ってたユーザーの人達からの贈り物があったからバックアップは復元しなかったよ」
雲母はコメントや贈り物を見せる。
「エラい」
「健気」
「良い子だ」
雲母はそのコメントを見ればほっこりする。すると誰かが入室しようとしてくる。ベリックだ。
雲母
「…来た!」
雲母はベリックを入室させる。雲母はバニラとしてコメントを打つ。
バニラ
『…いい天気ですね』
ベリック
『そうか?ふーん。これ、2日で作ったのか』
バニラ
『そうですよ。見てください。あのアイスクリーム屋さんなんてとても可愛いでしょう?』
ベリック
『一生懸命作った所でいつかは飽きて消される。たかがデータだからな。なら盛大に壊される方がいいだろう? 例えばオレみたいなヤツに』
バニラ
『そうですよ。あなたを倒す為に一生懸命作りました。ですが壊されるのはあなたです。私は自分のお家を壊されたことにとても腹が立っています。今日はあなたに仕返しをする為に呼びました』
ベリック
『オレを倒す為にわざわざ作ったって?』
ベリックがキャラクターをスクワットさせる。
ベリック
『それは愉快な話だな。たったあれだけの事でここまでやってくれるだなんて。やはりオレは間違ってなかった』
バニラ
『…バニラちゃんは私。私はバニラちゃんです。ならば自分の家を無惨に破壊されたとなったら必然的にあなたに報復をします。それを愉快ですって…? 決めました。あなたには最低な目にあってもらいます』
ベリック
『御託はいいからさっさと始めようぜ?』
バニラは手前のレバーを引く。すると【タレットが地面から現れベリックの立っている場所に向かっと矢を一斉に放つ。】ベリックのアーマーの耐久度がガッツリ減った。バニラはアイスクリーム屋の裏へ足速に逃げていく。
天使
「多分1番いいアーマーを着てるわね」
安栖里
「まだチートは使ってないみたいだね。負けそうになったら使いそうだけど」
ベリックは自分の下にピストンを置けばぴょーんとジャンプした。アイスクリーム屋の上に登ればバニラを確認する。ベリックは正確にバニラに向けて矢を打つ。するとバニラの動きが遅くなった。
「鈍足矢だ」
「上手い。やり慣れてる」
「追いつかれる〜」
後から破裂するクロスボウを打たれる。被弾してアーマーの耐久度が下がる。
雲母
「鈍足を治してる暇はなさそう…」
バニラがレバーを引くと地面に穴が空いた。中に入る。するとベリックはまた爆弾を置いて爆発させる。しかし頑丈な鉱石で作られた地面はなかなか破壊することが出来ない。
天使
「お、爆弾が効いてないわね」
安栖里
「1番硬いブロックに色を塗ってカモフラージュしてあるんだね」
雲母は別の場所からピッケルで穴を開け、頭を出せば破裂するクロスボウをベリックに向けて放つ。アーマーをほぼほぼ破壊することが出来た。
「かなり作り込まれてる」
「対人用に仕込まれてるね」
「穴を開けやすい場所もあるんだ」
ベリックが何かのアイテムを使う。するとバリアが張られた。バニラの元へ地道に近づいて行く。
雲母
「まずい!」
雲母は頭を引っこめてブロックで穴を埋めようとする。しかし先を越され、【毒沼を流し込まれた。】
天使
「ああ、汚い手を使うわね」
安栖里
「毒沼は広範囲に広がって浸かるとスリップダメージを引き起こすから早く塞がないと…」
雲母は流れ込んでくる毒沼から逃げる。上で爆発が起こり続ける。すると脆弱なブロックの場所が割れてしまいそこにも毒沼を流し込まれてしまう。
雲母
「逃げなきゃ逃げなきゃ!」
バニラは堪らず地上へ飛び出せばベリックから背を向けて逃げだす。すかさずベリックが追いかけてくる。
ベリック
『おい、オレを倒すんじゃなかったのかよ?』
バニラ
『逃げるのも作戦の内です!』
バニラが逃げた先には池があった。カラフルな池で美味しそうなアメが沢山沈んでいる。バニラはバシャバシャ泳ぎながら対岸を目指す。するとベリックも後を追ってきた。
雲母
「かかったね」
雲母が水色の爆弾を放つ。すると池の表面が凍りつきベリックが上から出られなくなった。
「閉じ込めたww」
「悪い子だ笑」
「窒息するぅ〜」
ベリックが出ようともがいているのが分かる。壁に向かってツルハシで穴を開けようとするも硬い為時間がかかる。氷を溶かす為には火が必要だ。しかし今は水の中、氷を溶かす術がない。
雲母
「やったか…!?」
するとベリックが貫通するクロスボウをバニラに向かって放ってきた。バニラのアーマーは破壊されてしまう。
雲母
「なんて往生際が悪いっ!」
時間経過で氷が溶け始める。ベリックが水の中から出てきた。
「万事休すか!?」
「ああ! でてきちゃう」
「どうなるどうなる」
ベリックが出てきたのを確認すればソーダの建物の中へ逃げ込む。中は緻密な作りになっている。バニラに向かってビュンビュン貫通矢が打たれる。幾らか被弾してしまうものの何とか上に到達する。上に到達すればレバーを引く。するとソーダの建物の下のブロックが丸っと消滅する。そしてソーダの建物は下へ落ちていく。落ちる寸前に雲母は脱出を試み地面に着地する。
雲母
「…よしっ!」
すると直前でベリックがソーダの上に出てきたのを確認出来た。脱出間に合わず倒せたかに思えた。【しかしベリックは浮遊しだした。】
ベリック
『はっはっは。よく頑張ったな。しかしあっけないもんだよな。こんなに頑張ったのに最後はチートでやられるなんてよ』
雲母
「…」
雲母は何もせず盾を構えている。
ベリック
『じゃあな。これでおしまいだ』
ベリックは破裂するクロスボウを構えバニラに撃とうとする。
が、突如上からアイスクリームが降ってきた。
雲母
「ソーダの上にアイスが無いのは不自然でしょ?」
ベリック
『なに!?』
ベリックは落下物に対応出来ずそのままアイスクリームに押し潰されるように奈落の底へ消えて行った。
【ベリックは死んでしまった。】
雲母
「勝った…!!」
雲母はガッツポーズを決める。するとバニラもまるで嘲りを含んだ目でガッツポーズを決めた。
「凄い!」
「まさかの二段構え」
「勝ちに対する恐ろしい執念を感じる」
「まさか倒せるとは思わなかった」
「clap clap」
「出来杉。八百長では?」
「八百長でもエンタメとしても面白かった。また見たい」
ぶわーっとコメントが流れる。雲母はそれを見れば心がとても満たされるのを感じる。
ベリック
『ファック。まさかソフトクリームが降ってくるとはな。やられたぜ』
バニラ
『ふんだ。これに懲りたらもう二度と人の家を壊さない事ですね』
ベリック
『今度はオレのタウンに来いよ。リベンジしてやる』
雲母はそのコメントを見てニッコリ笑った。配信はそこで打ち切られる。
天使
「よくやったわ。すごく見応えがあったわよ」
安栖里
「これでチャンネル登録者もうなぎのぼりで増えていくはずだよ。よく頑張ったね」
雲母
「ありがとうございます…。はぁ、こんなに面白いんですね、ゲームって」
天使
「ゲーム、まともにやった事なかったのね」
雲母
「はい…。お母さんに禁止されてて」
安栖里
「ならこの事がバレないように気をつけなきゃね」
天使
「今日は帰ってテスト勉強しなきゃね」
雲母
「…全然勉強出来てないや。早く帰って頑張らないと」
一行は家路につく。雲母は今日あったことが頭に離れず、ずっとタウンクラフトのことを考えていた。勉強があまり手につかなかったが雲母は幸せであった。
雲母
「ふぅ…。楽しかった」




