表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
21/76

第20話 自爆スイッチ

箱柳

「何よ。さっさと何か描いたらいいじゃん」


法助

「いや、まずは話を聞こうかと」


法助は眉を下げて困った表情をする。


箱柳

「あんたの時間を使ってるって思われるのが嫌なの」


法助

「む、わかった…」


ひとまず適当な石膏を持ってくれば机の上に置いて描き始めた。


箱柳

「法助、運が良かったね」


法助

「え? 何が?」


箱柳

「好きな相手をあの常磐を指名した事だよ」


法助

「運が良かった…? それは何故?」


箱柳

「例えば深郁とか私とかを指名してたら、もっと酷く虐めてやってたよ」


華山も言っていたが雲母はクラスメイトから邪険に扱われているのか。容姿端麗で頭も良いと嫉妬されたり扱われにくいと思われたりするのだろうか。どちらにせよ自分よりも上の人間は鼻につくと思うような人達の事だ。別に気に掛ける必要は無いだろう。


法助

「常磐さんは優しいし良い人だよ。僕は常磐さんのことを…友達として好きさ」


法助はデッサンをしながら話を流すように描き続ける。


箱柳

「ふーん。例えばあんた、友達から親にあんたは訳ありだから遊ぶなって言われたらどう思う?」


法助

「え?」


結構ショックだ。友達の家族自体から否定されてしまっていては友達の遊びたいという意思は尊重されないし、そのバックボーンで訳ありという烙印が押されていてはその事実がいつまでも引っかかってしまう。


法助

「正直嫌だなぁ…」


箱柳

「そうでしょ? 常磐雲母の母親は学園長なの。自分の子供のクラスの問題くらい把握してんのよ」


法助

「ええ? そうなんだ。偉い人なんだね」


法助は感心した。雲母自身あそこまで賢い人だったのならそれも頷ける。きっとしっかり教育されているんだろうな。


箱柳

「常磐と1年の頃同じ学年じゃなかったでしょ、あんた」


法助

「うん。クラスは違ったかな」


雲母を最初見た時、綺麗な人が居るもんだと思った。チラっと視界に入ればそこにずっと置いておきたいような、そんな美しい女性であった。

まさかこんな自分が告白するだなんて、普段から関わり合いになる機会があるだなんて心にも思わなかった。


箱柳

「1年の頃、常磐と同じ学年の子が強制的に転校させられたんだよ。理由は分かる?」


法助

「…えっ?」


箱柳

「あいつの態度が気に食わなかったクラスメイト5人がちょっかいかけたんだよ。それがあだになって先生に連絡が行けば学園長に連絡が行き、トントン拍子で5人の転校が決まったの。それも秘密裏に?」


法助

「それは、知らなかったな」


恐ろしい事だ。そんなことがあればその人とかかわり合いになろうと思わない。本来ならいじめを受けた被害者が恥を忍んで転校するか何か対策を講じられる事になる。その逆が行われていたとは。そして雲母自身に何か気に食わない事があればお咎めが来るかもしれないと考えられる。本当の罰を与えられる可能性のある人間には普通近寄らない、それはごく普通の考え方だ。だが…。


箱柳

「みんな知ってることだよ。知らないのはあんたくらいなもんだよ」


法助

「僕は、知らずに自爆スイッチでも押していたようなものだったんだね」


箱柳

「ははは! そうそう。だからみんな笑ったんだよ。あんたがやった事の重大さを知らないもんだからさ」


箱柳は椅子から立ち上がれば近寄ってくる。


箱柳

「ねぇあんた。あんた今、常磐と何かと関わりがあるじゃない?」


法助は嫌な予感がしてきた。


箱柳

「あいつを追い出せれば、あんたのクラスでの評価は変わるんじゃない?」


法助

「箱柳さん」


そんなことを1ミリも望んじゃいない。


法助

「僕はそんなこと望んじゃいないよ。クラスで唯一人間扱いしてくれたのは常磐さんだから」


箱柳は無表情で法助の絵を眺める。


箱柳

「あ、そう。まぁそんなとこだろうと思った」


箱柳は自分の座っていた席に戻る。


箱柳

「あんたは今、いつ踏むかも分からない地雷の上で生活している事を理解してる?」


法助

「僕はそう思わない。彼女がその地雷だなんて。勿論君の事も、誰の事も。転校させられた5人だって、ちゃんと友達として正しく接していれば無理矢理転校させられることもなかったんじゃないかとも思ってるし」


箱柳

「あいつは敵だよ?」


法助

「敵だとか味方だとか、もう疲れちゃった」


法助はふぅ、と溜息を吐く。そこでペンを置いた。


法助

「クラス全体が彼女を毛嫌いしている。だけどクラス全体が僕の事を除け者にしてるのも事実だろう? ならば僕に相談を持ち掛けず他のクラスメイトに頼るべきじゃないかな」


法助は訝しい表情で箱柳を見据える。


箱柳

「法助…本を取られた時、汚い所ばかりに目が行って、綺麗な所を見ないんだって言ってたじゃない?」


法助

「え?」


箱柳

「あんたがクラスに無関心なのも、常磐がああやって毛嫌いされるのも理由があってのことだと思わない? 【クラスメイトを汚いものだと思って見てない?】」


法助

「それは…」


僕が何故こうなってしまったのか。少し考えてみるが、今となっては思い返してみてもちゃんとした理由が思い浮かばない。そう思えば言葉に詰まった。


箱柳

「私達のこと、時間が経てば通り過ぎるものだと思ってんでしょ。一時的な関係であって今後の人生には関係の無い人間だって。そんな目で私達を見てない?」


法助

「いや、そんなことは」


箱柳

「いつだって自分が悲劇のヒーロー、ヒロインだってそんな面してる気がしてならないんだよね。あんたも常磐も。はっきり言ってあんたが本を取られて、あんな言葉が出た時1ミリも同情しなかった」


自分が悲劇の主人公。そして彼女も悲劇のヒロイン。客観的に自分を見てみるとそう思われても仕方がないかもしれない。


箱柳

「みんな何かしら不安や不満、憂いを抱えてんの。だけど不幸ズラして自分の世界に閉じ篭ってるヤツをみるとイライラすんの。そう思わない?」


法助

「…でも、それはアプローチの仕方が間違ってるようにも思うんだけど?」


法助は上目遣いで箱柳を見る。


箱柳

「あんたクラスで遊びに誘われたことある?」


法助

「あったかどうか、多分なかったと思うけど」


箱柳

「は、誘われるわけないじゃない。自分から誘わないと。人が人を好きになる要素としてあんた何処を見る?」


突然の質問に目を白黒させる。


法助

「うーん、顔が可愛いとか、綺麗だとか?」


箱柳

「はぁ、バカだね」


法助はキョトンとする。どうやら違ったようだ。


箱柳

「大まかに分けて健康か不健康だよ。付き合ってて精神衛生上害があるか無いか、そうじゃない?」


法助

「む、そうかもしれないね。つまり僕は不健康そうに見えたってことか」


箱柳

「人は人を見る時、停滞してるものに対して得るものがないとか何か理由があって止まってるって考えるじゃない?そうなると病気を疑ったりやる気が無いって気がしない?」


法助

「…」


なるほどそういう考え方もあるのかと少し関心する。


法助

「僕はやっぱりそうに見えたって事だね」


頭をポリポリとかく。


箱柳

「そうだね。少なくとも空手部に入る前やあんたが絵に関心があるって知る前は?」


法助

「絵に?」


箱柳が立ち上がり髪をなびかせた。美術室に入る西日で少し色っぽく映る。


箱柳

「ねぇ法助、私を描いてみなよ」


法助

「あ、え、ええっ!?」


何と自身を描くように提案してきた。思いがけない言葉に驚愕してしまう。目を大きく見開けば箱柳に釘付けになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ