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きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
17/76

第16話 文化部に入部せよ

法助

「常磐さん…?」


雲母

「はぁ、はぁ…」


雲母は銀子の頭を創作物でひとしきり叩けば息切れを起こしていた。


雲母

「ほ、法助…。ごめん、取り乱しちゃって」


法助

「いや、大丈夫だよ」


銀子

「この圧政者め…! 生徒会という権力を振りかざし、オレ達の安息の地を侵そうというのか!?」


雲母

「こんな漫画を描いてちゃ部員なんか集まりっこありません。文化部を存続させたいなら悔い改めてください」


「あわわわわ…。それはわかってはいますけどウチ達はコレが生き甲斐なのです」


「ううう、部員が集まらないことに加えてかなり否定的にダメだしされてしまいましたデス」


法助

「君達、名前は?」


「はわ、名前ですか…? ウチの名前は海鼠一二文(なまこひふみん)です。3年生2組です」


おカッパの女の子がモジモジしながら名乗る。


「はい、私の名前は森永天響(もりながあまき)と言いますデス。2年1組デス」


丸メガネの女の子が名前を言えばすぐ雲母が詰め寄る。


雲母

「いいですか森永さん。貴女方の為に中学時代はきちんとした部活に所属すべきです。香炉部長と海鼠さんは既に受験が差し迫っていてもう取り返しがつかないですが…」


雲母の説教が停止する。


雲母

「森永さん…?」


天響

「はいデス」


雲母

「3年生に姉がいたりしませんか…?」


天響

「うん? ああ、従姉妹がいますデス。天使姉には会えば今でも振り回されてしまいますデス。何度も危ない目に会いましたネ…。もしかしてお知り合いデスか?」


雲母

「はぁ…。なんてこと」


雲母は頭を抱えた。まさか森永の従姉妹だったとは。


法助

「とと、僕にも漫画見せて貰えるかな?」


法助は海鼠と森永に見せてくれるように頼んでみる。


雲母

「だ、ダメ!」


法助

「ええ? 見ちゃダメなの?」


法助はキョトンとする。少し悲しげだ。


雲母

「法助に到底見せられるようなものじゃないよ」


銀子

「くっ! 言うに事欠いて見せられるものじゃないと来たか。オレ達みたいなマイノリティーな存在を否定するような言い草じゃないか。これでも一生懸命生きてるんだぜ? 少しは認めてくれたって良いじゃないかよ! オレ達の感性や性癖をよぉ!」


銀子が雲母から漫画を奪い取ろうとする。しかし銀子は雲母には敵わなかった。頭を抑えられ身動きが取れなくなる。雲母は力も強いのだ。


銀子

「あぐっ!」


雲母

「性癖だなんて…。ふ、ふん。よく言えたものですね。そもそも貴女のような存在が風紀を乱すのです。少しは恥を知りなさい」


銀子

「うわ、出た! まるで漫画の風紀委員みたいな言い草!」


頭を抑えられながら雲母をキッと睨みつける。


法助

「ちょちょ、あまり強く言い過ぎるのも良くないよ…。彼女達には彼女達なりにやりたいことがあって漫画研究部を立ち上げたんだから」


銀子

「そうだそうだ! そこまで否定される謂れはないぜ!」


銀子が威勢よく雲母に言い放ち抵抗する。しかし頭を抑えられており身動きが取れない。


雲母

「…確かにそうだね…。ちょっとショックを受けちゃって言い過ぎたのは認める」


海鼠

「銀子隊長…。弱いであります」


天響

「そ、そうデス。其方の生徒会様も漫画を拝見されてはどうデス?疑われまままなのは心苦しいデス」


雲母

「だからそれはダメだよ!」


法助

「常磐さん、僕は何を見たって驚かないよ。心配しなくて大丈夫だから、ね?」


雲母は不貞腐れた表情をして目を逸らす。彼女がここまで心配してくれるのは何故か嬉しかった。しかし文化部一同も部を存続したくて必死なのだ。何処がどう悪いのか、自分も知っていて損はない。法助は天響から渡された創作物を拝見する。


法助

「…」


法助はペラペラと読んでいく。


〜薔薇騎士物語〜


奴隷に身を落とした少年が脱走し、一介の騎士に成り上がる。そして幼き頃から恋心を抱いていた貴族令嬢を賭けて子爵の元主人に一騎打ちを挑む。激闘の末に主人公の騎士が一矢報いようとするも令嬢が戦いに割って入り主人が油断した騎士を打ち負かす。


法助

「…ふんふん」


残念な結果に眉をひそめた。法助はさらに読み進めていく。


騎士から奴隷に逆戻りした奴隷騎士は手足を繋がれて主人に捕まり手痛い拷問を受ける。しかし主人から衝撃の告白を受ける。


法助

「…!?」


奴隷騎士がまた自分の元へ舞い戻るよう、令嬢を出汁に綿密に計画していたのだ。自分は主人と無理矢理結婚を約束させられている。だからいつか必ず助けに来て欲しいと。その約束を律儀に守り奴隷騎士はまた主人の元へ戻ってきた。そして主人が危ない時には身を挺して主人を守るようにと。


奴隷騎士

「お、俺は嵌められたのか!?」


子爵主人

「…そうです。貴方は必ず私の元へ戻ってくる。そう信じていました」


奴隷騎士

「くっ、殺せ…! 俺にはもう生きる意義を見いだせない。愛すべき人にも裏切られた。ただ惨めに朽ち果てていくだけだ」


子爵主人

「そんなことはありません。貴方は素晴らしい人、いえ、私の騎士です。こうして私の元へ戻ってきてくれたのですから。死ぬ事は許しません。私は求め焦がれていた。切っても切れない関係で結ばれている関係を。そう、私と貴方のように。貴方はもう私のものなのですから…」


奴隷騎士は虚ろな目をしている。その唇に子爵主人が唇を重ねる。


法助

「…うん?」


法助はペラ、ペラと前後を確認した。この子爵主人は男性である。もちろん主人公の奴隷騎士も男性だ。しかし子爵主人と奴隷騎士が接吻を交わしている。


法助

「え?…これちょっとおかしくない?」


天響

「はい? 何がデス?」


法助

「男同士でキスしてるよ?」


海鼠

「…これが薔薇なのですぅ」


雲母

「…あああ…」


雲母はまた頭を抱えた。


法助

「…」


法助は続きを読み進める。なんと奴隷騎士と子爵主人が結ばれてハッピーエンドになってしまった。


法助

「うーん…。他に漫画ある?」


天響

「どうぞ…デス」


法助は天響から他の漫画を受け取る。しかしこれも男性が男性と結ばれる終わり方だ。法助は目を丸くして顎をポリポリとかいた。


法助

「えと、男性と女性が結ばれる本は無いの?」


銀子

「けっ! お子ちゃまがよ。コイツは何もわかっちゃいねーよ」


海鼠

「薔薇の良さを理解出来るのは乙女だけなのです〜」


雲母

「何を偉そうに…。これは不純物です。私が焼却処分しておきますので」


銀子

「な! やめろ! オレ達の汗と涙の結晶が!」


雲母

「そんな綺麗なものであるはずがありません。いや、よく考えてみれば汗と涙もあまり綺麗でもないかな…」


雲母が法助から漫画を回収しようとする。


法助

「まって」


雲母

「え…? どうしたの?」


法助

「…この漫画に出てくる男の人達。凄く良い体つきしてる。うん。綺麗だと思うよ。君達、とてもよく見てるんだね」


銀子

「あ、いや…。そう、か…? へへ、そうだろ」


銀子が人差し指で鼻をかく。


海鼠

「あわわ、そう言われるとむしろ卑猥な感じがしないでもないですね?」


天響

「あはは、ちょっと複雑な気分デス…。でも、どうです?こういった愛の形もあると思いませんデスか?」


法助

「愛の形は理解できなかったけど、絵はとても綺麗だと思ったよ。凄く頑張ってると思う。常磐さん、どう? 綺麗な絵じゃない?」


雲母

「む、それはそうだけど…。大事なのは内容だよ。ちょっと、こっちに向けないで」


雲母は漫画を押し返した。


法助

「…僕も頑張って練習したら、こんな絵が描けるかな?」


天響

「!?」


海鼠

「!?」


銀子

「なんだと…!?」


3人がぎょっとした。まさか法助が興味を持つとは思わなかったようだ。


銀子

「そ、そうだな。何事も練習が必要だが、いつかはこれくらいかけるようになるんじゃないか…?」


銀子は法助の肩をパンパンと叩く。


銀子

「その為には、な?漫画研究部で描く練習をするのが近道だと思うんだが、どうだ少年。…興味が湧いたか?」


法助

「…」


法助が漫画をペラペラと読み進めていく。


法助

「…ちょっと興味湧いてきたかも」


雲母

「ええっ! ちょっと法助! 本気で言ってるの!?」


法助

「確か部活は掛け持ちしても大丈夫なんだよね? 銀子さん、週一でも顔出せるなら来てみてもいいかな…?」


銀子

「そうかそうか! 少年は男だが背に腹はかえられねぇ。少年がどうしてもって言うなら入れてやらねぇこともないぜ」


雲母

「…頭痛がしてきた…。法助?今日は廃部を言い渡しに来たんだよ…?体験入部に来たわけじゃないんだよ??」


法助

「そうだけど…。あまりに不憫じゃないか。好きな事をやろうとしてるのに無理矢理潰しちゃうなんて…。可哀想だよ…」


雲母はため息を吐いた。腰に手を当て仕方ないといったふうに眉をひそめ法助を見つめる。


雲母

「…空手部はどうするの? 掛け持ちでできるような部じゃないと思うんだけど」


法助

「うっ…。それもそうだけど…」


天響

「昼休みにここへ来ると良いデス。そこで課題を出すので家で描いてくると良いデスよ」


法助

「なるほど、そういう手もあるね」


雲母

「…ふー」


まさかの法助が陥落されてしまった。廃部には出来なかったものの一応生徒会としての仕事が出来たように思われた。


法助

「常磐さんもどう? 一緒に入らない?」


雲母

「嫌だよ…!」

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