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きみとあなただけの教室  作者: ぐれこりん。
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第10話 あの女

華山

「よう。ちゃんと来たか」


華山がニヤつきながらこちらにやって来る。


法助

「…うん」


華山

「どうした? まだ慣れないか?」


法助

「…部長さんやほかの部員たちのには良くしてもらってるから、何とかやっていけそうな気はするよ」


華山

「そうか。なんでもやってみるもんだな」


法助

「華山、あんたに話がある。今日一緒に帰らないか?」


華山

「…いいぜ。着替え終わったら部室の外で待ってな」


空手部の部活はまずはぐるぐると道場の中を走ったあと、準備運動と軽いトレーニングをする。最初はこれが結構きつい。腕立て、スクワット、腹筋背筋。それぞれ50回ずつ。スクワットや腕立てなんかは20回もすれば息が上がってくる。それを部員が円になるように並び10回ずつ交代で数えていく。腕立ての時に法助の順番が回ってきた。


法助

「…くっ、はぁ、はぁ、2…1、2…2!」


何とか腕立てを終える。腕立ては手だけではなく背中や腹筋まで痛くなる。


華山

「くくく、へばってんな」


華山が法助の方を見て意地悪そうに笑っている。続いて基本稽古、移動稽古。法助はまだ技を覚えていない為、その様子を見学する。立ったまま正拳突きをしたり、移動しながら足技の稽古をする。そして受け組手。正拳突きをミットで受けたり足技を受けたりの稽古だ。


華山

「ホースケ、受けてみるか?」


法助

「わかった」


法助は空手のミットを持って華山の正拳突きを受ける。バッ、とミットで受ければ後ろに仰け反ってしまった。


法助

「…う」


華山

「上半身だけで受けるな。後ろに流されてちまうぞ。足でふんばって腰に力を入れるんだ」


法助

「わかった」


法助はぐっとこらえて華山の正拳突きと足技を受ける。何とか堪えられるようになった。


華山

「突きも足技もそうだが、腰が疎かになっていれば体重が乗らない。体幹を上手く利用出来るように努めろ」


法助

「うん」


日によって練習のメニューは違うものの大体はこの流れだ。その後乱取りといって適当に相手を選んで組手をする。基本的に寸止めだが、誤って拳が当たったりすることもある。法助はまだ基本稽古も出来ないためそれも見学していた。

そうこうすれば2時間が経つ。部活が終わる時間になれば軽い整理運動をすれば部員たちは一定間隔で正座して黙想をする。最後はありがとうございました!と大声で挨拶をすれば部活は終わりである。全員で道場の中を掃除し、走り込みをする部員も入れば組手をする部員もいる。


法助は部活が終われば華山を待った。部室から華山が出てくれば法助の方へやってくる。


華山

「待たせたな」


法助

「いや、大丈夫だよ」


華山

「俺に話があるだなんて、珍しいこともあるもんだ」


2人は自転車置き場へ行けば各々の自転車に乗り込み帰路につく。


法助

「…単刀直入に聞きたいことがある。なんで部活に誘ったんだ?」


法助は怪訝な顔をして華山に伺う。


華山

「…へっ、まさかそれを聞いてくるとはな」


華山は軽く笑ったあと、少し考えて言った。


華山

「ホースケお前、クラスの事何も知らないだろ」


法助

「…うん。出来るだけ誰とも関わらないようにしてきた」


華山

「ならアイツの事も知らないよな。常磐雲母。お前が好きだって言ったあの女だ」


あの女。その言い草が少し引っかかったが、変に詮索せずまずは話を聞こうと思った。


法助

「…常磐さんのこと、全然知らない。あの場を何とか切り抜けようとして常盤さんの名前を出しただけだったんだ。あの人には悪いと思っている」


華山

「ふん。気にすることはない。クラスの連中は誰もあの女の事を好きじゃないし、【仲良くなろうとも思っちゃいない】」


お前が悪いんだけどな、と法助は思ったが気にせず話を聞く。


法助

「…そうなの?」


華山

「そうさ。皆アイツの事を追い出したがっている。何故だか分かるか?」


法助

「いや、全然? な、なんで…?」


華山

「まぁ、理由は色々ある。アイツは成績がいい。毎回テストは満点近いらしいじゃないか。まずそれが鼻につくやつもいる。そして容姿がいい。それは分かるよな?」


法助

「そんな理由で?」


華山

「まぁ聞けよ。そして極め付けが誰とも仲良くなろうとしないことだ。これは決定的だろうな。お前だってそうだろ?端からその気がないヤツとは仲良くなろうと思わない」


法助

「…それもそうかもしれない…。僕は人付き合いが苦手なんだ…。上手く相手と仲良くなれる自信が無い」


華山

「それくらいなら誰かと仲良くなろうと思えば出来るだろうさ。だが常磐のヤツはそれをしない。何故だか分かるか?」


法助

「…何か理由があるの?」


華山

「ああ、アイツのな、アイツの身内とは誰も関わりたがらないからだよ」


法助

「…え?」


法助は驚いた。華山の顔をじっと見つめれば速度が落ちてしまい離れてしまう。慌てて立ち漕ぎして追いつく。


華山

「それ以上気になるってんなら、本人に聞いてみな。お前、俺よりアイツと仲がいいだろ」


法助

「ま、待って。華山、それが僕を空手部に入れようとした理由がまだだ」


華山

「…俺はな。お前の事が気に入らないんだよ」


法助

「…」


華山

「だから部活でぶっ飛ばしてやろうと思ってお前を誘ったんだ。それ以外他意はないぜ」


法助

「…いやいや、それはおかしいだろ?」


法助は呆れた顔でため息をつく。教室での事を忘れた訳じゃあるまいな?と心の中で突っ込んだ。


華山

「おかしくないぞ」


華山がこっちを見る。


華山

「このままいけばいずれホースケは【学校に居られなくなる】だろう。その前に部活でお前の事を殴り飛ばしてやろうと思ったからさ」


法助

「えぇ? それってどういう」


華山

「ま、それまで精々常磐のヤツと仲良くするこった。それがアイツと関わっちまったお前の運命なんだよ。じゃあなホースケ」


華山との話合いで法助の胸に不安と疑念がふつふつと湧いてきた。果たして今の話は本当だったのだろうか。単に不安を煽ってきただけなのだろうか。もし空手部に入部する事が華山からの助け舟であったとしても、まだ自分は知らなければならないことが沢山あった。モヤモヤした気持ちのまま帰宅した。

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