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SHADOW DETECTIVE  作者: 柳生 音松
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プロローグ

この作品は、高校生の頃、某文化部で制作し、文化祭で出した小説です(相当昔です)。シリーズをちょこちょこと作ってはいましたが、忙しさ等、諸事情で頓挫。かなりながーい時を経て、思い立って作り直して掲載してみようと考えました。文章を書く能力はないので、雰囲気を楽しんでくれたらと思います。




※(この作品と出会っていただき、ありがとございます。本作は、最初はこちら『小説家になろう』さんで執筆し始めましたが、他の小説サイト『エブリスタ』さんに移行しています。こちらでも一応ストーリーの最後まで書いていますが、エブリスタさんは修正加筆を行なっており、またイラストなども惜しみなく公開しております。もしご興味があれば、エブリスタさんでの読むことをお勧めします。エブリスタはアカウント登録なしでも、読むことが出来、当然無料ですので、特に読者様へのご負担はございません、スマホで見る場合は専用アプリをダウンロードするのがよいかと思います。)

1999.12.1 -WEDNESDAY-


 立ち並ぶビルを境に、繁華街とは反対の通りに“スターズブルー”という名のバーがあった。落書きだらけの壁や、薄汚れた建物が並んでいる、そんな場所の何とも目立たない店だが、場所とは対照的に、クラシックな雰囲気、そして流れるジャズがとても魅力的な店内。


「お疲れですかな?」


 マスターでバーテンダーのラッドは、高級ビールを注いだグラスをカウンターに置いた。


 カウンター席に座っている男は六堂りくどう 伊乃いの。二十四歳の私立探偵で、ここの常連だ。


 仕事のない夜にはよく顔を出し、指定のように毎度隅のカウンター席に座り、この店を営むラッドとの会話を楽しみながら酒を口にしていた。


 今日は、久しぶりにくつろいだ夜を酒と共に過ごそうとしていた。ここ数週は依頼が立て続き、気が休まる暇がなかったのだ。裏社会から足を洗い探偵になって二年近く、彼の腕の良さが少しずつ評価され、仕事が軌道に乗り始めていた。


「まいったよ。仮眠だけで、毎日仕事だ」


「ここに来る日も、めっきり減りましたな」


「すまないねマスター、落ち着いたら昔馴染みでも誘って、売り上げに貢献するからさ」


 そんな二人の談笑に割って入るように、ポケットの中のケータイがブルブルと鳴った。(今日はもう“店じまい”ですよ)ケータイ画面を確認し、誰からの着信かを確認する。


――ん、美雪?


 着信の相手はよく知っていた。益田ますだ 美雪みゆき、幼馴染の妹で、中学生の子だ。


 六堂はラッドに(ちょっと悪い)と手のひらを顔の前に立てて、ケータイの通話ボタンを押した。


「もしもし、久しぶりだな美雪」


『…伊乃さん…伊乃さん』


 愛想の良い声で出た六堂だったが、電話の向こうの美雪は震えるながらの泣き声だった。様子がおかしい。


「どうした?」


『…お姉ちゃんがね…死んだ』


 六堂の顔は一変し、傾けようとしていたグラスを置く。


『…件の…場で…、聞こえてる?』


「…え?」


『セントホークの事件現場で、殉職したって』


 頭が真っ白になり、美雪の声がまるで頭に入ってこない。だが“セントホーク”という名前だけが辛うじて耳に残った。


――セントホーク?確か…


 かつての東京湾の上にある人工島『新東京』。複合商業施設『セントホークタワービル』は、そこにあった。そのセントホークが、あるテログループに“占拠された”というニュースをやっていたのは知っていたが…。


「…美雪、お前今どこに?」


『病院。新東京の針寸はりす総合病院、お姉ちゃんが運ばれた病院』


「わかった、すぐ向かうから」


 そう言いケータイを切ると、六堂は財布から紙幣を出して、カウンターに置いた。


「注いでもらったのに、申し訳ない。一口も飲まずに」


 そう言うと、ラッドは苦笑しながら首を横に振った。電話での様子で、ただごとじゃないことはすでに伝わっている。


「お代はいりませんよ」


「そう言わないで」


「…では、これは受け取りますが、次回は私が一杯おごりおますからね」


 軽くウインク交えでラッドは優しい笑顔を見せた。暗い表情だが、六堂も笑顔で(ありがとう)を伝えた。


 六堂が店を出て行くと、扉に付けている小さな鐘の音が店内に鳴った。


 外は寒く、吐く息は白い。雨上がりで濡れている道を歩きながら、恵のことを考える。


 美雪の姉、“けい”は警察官。特殊急襲部隊SATの隊員だ。そして小学生の頃からの幼馴染で、六堂にとっては特別な存在。年内いっぱいで警察を辞め、年明けから六堂の探偵事務所で働く予定になっていたのだ。


 昼頃から、セントホークの事件のニュースはひっきりなしにやっていたので、知ってはいた。そこにSATが派遣されることも。でもまさか…。 


 六堂は一度事務所に戻ると、車で恵が運ばれたという病院へ向かったのだった。

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