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怪しい勧誘にも注意!③変な老人vs白魔導士Ⅰ(※腐女子トーク炸裂注意※)

 

「結構な数のサークルさんが参加してたからそれは素直に嬉しかったんですけど、何かもう七割ぐらいがグン×アリでそれ以外のCPは少なくて。

 タライグマちゃんはグン×アリ推しだから喜んでたんですけど、クラゲさんはグン×ウィルだからぜんぜん収穫なかったみたいで。


 まあ公式がグウェンさんとアリ様の喧嘩絡みとか、憎まれ口叩き合いながら何だかんだ信頼し合ってるっていう関係を強調してくるから、当然の結果ではあるんでクラゲさんも現場では文句は言わなかったんですよ。


 でも会場から引き上げた後で寄ったファミレスでヲタトークしてる時に、タライグマちゃんがスイッチ入っちゃって、

『グン×アリはもう公式で公認、お墨付きCP!!』って発言しちゃったもんだから、クラゲさんブチ切れちゃって。後はもう喧々諤々(けんけんがくがく)の口論ですよ……


 クラゲさんは『初期のグウェンとウィルの仲を見ればそんな発言できないはず。アリオンの入る余地ない』って主張するんですけど、


 タライグマちゃんも返す刀で『グン×ウィル勢はすぐ初期っていうけど、何度確かめても二人の間に見えるのは兄弟的な情だけ。アリ様と出会ってからはグウェンの気持ちはずーっとそっちに向いてる、いい加減にその事実を認めるべき』って反論して。


 私は雑食でどっちのCPにも抵抗ないし好きだから二人の言うことわかるんですけど、タライグマちゃんみたいに公認とかお墨付きって決めつけちゃうのは良くないと思うんですよね。


 ほんのわずかな会話や、薄くて細~~い関係性をたぐって萌えに繋げていくの、男性のヲタクとか腐女子でもライトな人達からは怖がられていますけど、私はそういう自由で想像力逞しいのが腐女子の良いところだと思ってるんで、CPには多様性があるべきだと考えてるんです。


 でも、それを言っちゃうと、二人はCP固定派だから火に油を注ぐことになりかねないし……って躊躇してたら

『ミケやんはどうなの!?』って二人に詰め寄られちゃって」


「ちょちょちょ、ちょお待て!!」


 聞いても聞いてもまったく理解できず、老人は焦ってミアを止めた。

 語っているうちに自分の世界に入ってしまっていたミアは我に返ると、恥ずかしそうに舌を出し、拳に握った手をこめかみにコツンと当てる。


「いっけなーい!私ったらうっかり……すいません、『ミケやん』って私のことです」


「そこじゃねえ!!!」


 絶妙にポイントのずれた返事に、また大声が出てしまった。セルフコツン☆はそこそこ可愛いけど、そんなんでは治まらない。


「お前の言うこと、最初ハナっからサッパリわからんぞ!!

 結局、何の話をしとるんじゃ!?」


「も~~、だからお爺さんにはわからないって言ったじゃないですか」


 ムッとして頬を膨らませる顔はあざと可愛いものの、老人の勢いは止まらない。

 ここで引いてはまた収穫ゼロだ、それはなるものか。


「もっとこう、生々しい悩みがあるだろ普通!!そうじゃ、年頃なりに恋人が欲しいとか!

 その、鞄のDVDに出てる誰かと恋愛させてやろうか、どうじゃ!?」


 せっかくの休日に男と出掛けたりせず、女友達と集まっているような奥手な娘には魅力的な提案だろう。


 乗ってきたらその辺にいる適当な軽い男を見繕い、この娘が望む者の姿に見えるよう幻術をかけてやろうと画策したのだが、娘は「はあ?」と眉をひそめただけだ。


「素人が世迷言を……この私が2.5次元と3次元の区別がついていない、野暮なヲタクだとでも……?」


 わ~~、若い娘が“世迷言”っていうの初めて聞いた……


「ガチ恋勢を批判するつもりはありませんが、私はショービジネスの方とは基本的に住んでいる世界が違うと認識していますから。


 ツウィッターに載せたわずかな情報から住所特定したり、同業者との熱愛が発覚したら相手の方のSNSに嫌がらせしたりなんて、愚かしいことこの上ない。

 私はただ、推しが幸せならそれでいい……


 そう、インシュタで『新しいスニーカー買ったよ』って報告の写真をアップしてくれた時、そのスニーカーの購入代金の一部に、私がグッズ購入や観劇で払ったお金が使われていると思えば、もうそれで満足なんです。

 推しの生活を豊かにするお手伝いが少しでも出来ているのなら、散財したって望むところです」


 老人からしてみればそれも充分、歪んでいると思うのだが、娘はまっすぐな目でキッとこちらを見据えてきた。


「そういうことだから、タレントの名前で釣られたりしませんよ!

『○○くんのマネージャーだけど、いま彼が落ち込んでるから相談相手になってあげてくれないかな』とかいう胡散臭いメールで引っ掛けようとしても無駄です!」


「やらんわ、そんな事!!っつーかお前、本当にそれでいいんか!?

 彼氏の一人もらんと、アニメキャラやら芸能人やらに熱を上げて、虚しくないんか!!」


「……あーあ、言っちゃった。言っちゃいましたよこのジジイは…………」


 この瞬間、ミアの表情がガラリと変わった。

 一応、相手は老人だからと遠慮していたのだが、手加減も容赦も消え去り、代わりに剥き出してきたのは敵愾心だ。


 身勝手な価値観を押しつけてくる者、決して許すまじ。


「なぜ我々喪ヲタが恋人を作ろうと努力しないのか……

 そりゃあ、互いに想い合い支え合える人が傍に居てくれれば幸福に決まっている。


 それがわかっているのに求めないのは、異性にアプローチしても上手くいかず傷つくのが怖いから。

 そもそも、自分は3次元を生きる人々にとって価値の無い人間、恋愛をする資格もないと思い込んでいるからなのです」


「な、なぜそんな卑屈に……!?」


「何故もへったくれもありませんよ。そうなるよう、多感な思春期に我々を虐げ、嘲笑い、追い込んだ種族がいるからです……


 スクールカースト上位の陽キャがなあ!!!」


 陽キャが!?……あ~、でも、ちょっとわかるかもしんない…………


「教室の隅で、数少ないヲタ友と昨日の夜見たアニメの話をしていたら『キッモ』『何が楽しいの?』と聞こえるように言ってきて。


 ノートの端っこにお絵描きしていれば、わざわざ横を通って覗き見ては『暗あっ』『やばっ!キンモーッ!!』とまた笑われ。


 教室を出ようとすると入り口の扉に寄りかかってダベっているものだから、勇気を出してゴメンなさ~いと声をかけ真ん中を通ると、刺すような目で睨んできて

『ゴメンナサアーーイ、だってぇ。キモ~~』と似てない物真似された上に、たまたま肩が掠った男子に向かって『お前のこと好きなんじゃねえのぉ?』とか余計なことを言う。


 するとその男子は嫌な顔をして肩を払いながら『やめろ、冗談じゃねえよ、マジで気持ち悪い……オエッッ』


 ……誰がテメェみてえな流行りの髪型にしてるだけのクソ猿なんかに好意持つかあ!!

 自分が露骨に嫌ってる相手が、自分を好いてくれるわけねえだろ、吐きそうなのはこっちだボケェエ!!!」


 確かに、陽キャって謎に自己評価が高いから、“自分が声かけてやると陰キャは尻尾振って喜ぶ”と思ってる節があるんだよなあ。


 そのくせ、メンタルは雑魚だから、『キモイ』『臭い』と罵られ続けていい加減ぶち切れた陰キャが面と向かって『死ね』とか言うとえらい傷つくし、どうすればいいのか……

 いや、どうもしなくていいのか。勝手に傷ついてろ。





※タライグマちゃん、鬱ノ宮クラゲさん……ミアのヲタ友。二人とも骨の髄まで腐女子。

タライグマちゃん(長身スレンダー/長髪をうなじで束ねる/全身ユニクロ/縁太め眼鏡)は「キラッキラの新撰組がゴーストバスターするやつ」から、

クラゲさん(小柄グラマー/金色メッシュ入り黒髪ボブ/がっつりゴスロリ/緑のカラコン)は「刀とか剣とかがダンシングするやつ」からの付き合い。


二人とも一度決めたCPはガッチガチに固定するタイプなので薄い本購入の際は気をつけているものの、ワゴン売りになってるやつを表紙買いして、いざ読んでみたら逆CPだったのでギャーッてなって死んだことが何回かある。

頼むから裏表紙に明記しておいてくれよ!!……と思ってよく見たらちゃんと書いてあったよ!!!チクショーーー!!!


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