第一回宿屋会議③
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「登場と同時に全員死んだ!!!」
モノローグが終わると同時に、あまりに無残な死を迎えた三人が、同じセリフを叫ぶ。
「俺達ってアイテム渡す要員なのか!?ここまで必死に冒険してきて、主人公パーティーに便利アイテム渡す為だけの命!?」
「死に方が酷すぎる……魔王城の恐ろしさを伝える、都合のいい駒みたいな扱いされてますよね!?」
「っつーか、何よ今の映像!?頭の中に流れ込んできた…予知夢的なやつなの!?」
「まあ、落ち着きなさい」
三者三様に取り乱すメンバーを見兼ね、リーダーが静かに宥めに入る。
「今のは戦士がレベル80で得られるスキル
『以心伝心:選択したメンバーと、3ターンの間だけお互いのスキルを共用できる』っていうのを応用して見せた、シミュレーション映像だ。
これがあれば俺がテリーの『ぬすむ』や、ミアちゃんの『全回復』を使えたりして、非常に戦闘の幅が広がるぞ」
すごいスキルを無駄なことに使ってんじゃねえ。
「ちなみに俺はこの応用技を独自に『デス・ビジョン』と名付けた」
縁起でもない名前つけやがって、正気か。
「ふふ、聞こえる……聞こえるぞ、君たちの無言のツッコミが……。『以心伝心』によってな」
スキルが上手く発動して悦に入っているノブに対し、老剣士ヴェンガルが拳を握ってガッツポーズを贈る。
「さすがだノブ!戦士といえ力技だけでなくスキルを使いこなす技巧派。いいリーダーに成長した」
よくわからんけど誉めるところじゃないだろう、というアキナの内心の思いも、以心伝心で筒抜けかもしれないので言わなかった。
尊敬する老剣士に誉められて照れているノブに、テリーが食い下がる。
「確かにノブはすごいよ、それは認める。だから何とかならないのか!?
俺はこんな、“ゾンビ映画に出てくる、命がけで武器調達してきて仲間を安心させた直後に凡ミスであっさり食われる奴”みたいな死に方したくないよ」
「すごいピンポイントだなその例え。だけどいいぞ、わかってる!死亡フラグってそういうこと!」
やけに嬉しそうなノブと、激しく取り乱しているテリーを見ているうちに、馬鹿馬鹿しくなって落ち着いてしまったミアが、そっと手を上げる。
「あのー、また思いついちゃったんですけど」
「はい、何だろう」
「そんなにこの主人公パーティーさんが凄いなら、到着を待って、同行しちゃうのはどうでしょうか?
協力して、一緒に魔王を倒せばいいんじゃないかって思うんです」
なるほど、とアキナが手を打つ。
「共闘すれば、単純に考えて戦力は二倍になるわよね。いい考えなんじゃない?」
ちょっと希望が見えたかと思ったが、ノブの表情は難しい。
「うーん、言うほど簡単なことじゃないぞ。
戦闘で大事なのは総合的な力の数値じゃなくて、チームワークだから。
いくら力の強い者が集まったところで、日頃から寝食を共にして信頼関係を築き、呼吸を合わせているチームには敵わない」
リーダーらしい、慎重ながら的を射た意見だ。いつものノブに戻ったかと思われたが、
「それと、そのパターンも死亡フラグだからね」
再び『以心伝心』が発動した。