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プロローグ

 遥か昔、この世のどこかに存在したといわれる魔法大陸エーヤン……

 かつて光の女神に祝福され、幸福に満ちあふれていた大地は、突如として現れた魔王ヘルフェレスの軍勢によって今、滅亡の危機に陥っていた。


 世界を悪と混沌で支配するべく、魔王が放つ無数の魔物によって大地は蹂躙され、人々の心は恐怖に侵食されてゆく。

 この地に平和を取り戻すため、数多の冒険者たちが魔王の城へ挑んだが、未だ帰ってきた者はいない。

 絶望のなか人々は、それでも「英雄」の存在を信じ待ち続けていた。


 闇を打ち砕く聖なる力をその身に宿すという、光の女神に選ばれし伝説の「勇者」の存在を――――!!




 こんなナレーションが完全静止してる荘厳な歴史画っぽいイラストをバックに流れてきて、オープニングからもう「あれ、これクソゲーじゃない?」「ワゴンで投げ売りされてたからつい買ったけど失敗した」とプレイヤーを震え上がらせる感じの大陸エーヤン。


 ヘルフェレスが支配する魔王城まであともう少し、つまりRPGを語ろう系のスレッドで「よく考えたら魔王の城の近くの村に住んでる奴って最強じゃねww」とさんざんネタにされている例の村の一つ、モウグス村の宿屋に、一組の冒険者パーティーが泊まっていた。


 異世界から転生してきたわけでも、必殺のチートスキルがあるわけでもなく普通に全員、エーヤン生まれのエーヤン育ちで、魔王城から遠く離れた平和な町の酒場で結成された彼らは、ここまで地道にイベントとレベル上げをこなしながら辿り着いた。


 当たり前だが全員レベル70以上。

 とりあえずこの村を拠点にして、平均レベルが80越えたら魔王城に行こうという計画を立て、三日前くらいから草原や森林で魔物を狩りまくっている。

 狩りで貯まったお金で装備と持ち物を整え、


「村の武器屋、めっちゃ強い武器売ってるw」


「周辺に出る魔物も強くて草wこの状況で普通に生活できてるってヤバいわww」


「ここの村人全員で魔王城襲えばいいわwwwたぶん瞬殺www」


「wwwwww」


 などという、大型掲示板で腐るほど交わされているであろう会話を楽しむぐらい余裕な彼らだが、その日は何かが違った。


 今日も元気に魔物狩りを終えて、宿屋に帰ってきたとき、パーティーを率いている戦士が


「みんな夕飯を食べてお風呂に入ったら、僕の部屋に集まってくれ。話したいことがある」


 と真剣な様子で言ってきたのだ。


 これは……「終盤の決意表明」!!間違いない!!


 誰もがそう思った。

 ちょうどリーダーの戦士と女格闘家がレベル80に達し、他メンバーも明日には目標達成できそうなので、絶対にそうだ。


 リーダーからここまで来れたメンバーに感謝を述べ、改めて魔王城に入るリスクを説きつつ、

「でもこのメンバーなら大丈夫!!みんなで魔王、倒そうぜ!!」と檄をとばす、胸熱イベントが開催される!


 期待に胸を膨らませつつ、自分のキャラを忘れずに女格闘家は


「何よ急に、改まっちゃって」


 と察しの悪いふうを装い、お調子者のホビット盗賊は


「まあまあ、リーダーがこう言ってるんだから大事な話だろ。聞いてやろうぜ」


 と女格闘家をなだめたのだった。


(長かったけど、ここまで来れて良かった…でも魔王城に入ってからが本番‼リーダーの話をよく聞いて、がんばらないと‼)


 そんな熱い空気が流れ、妙にソワソワするパーティーメンバー達は気づかなかった。 


 リーダーの戦士と、その腹心である老剣士の表情が硬く、口数も少なかったことを……


 戦士は真面目で口下手だし、老剣士は寡黙でお喋り苦手だったのでそんなに気にしていなかったのだ……



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