先輩の笑顔
急いで倉庫の正面に回ると、見覚えのあるロッソコルサのF430スクーデリアが止まっていた。そして車の向こう側には今朝おれにこの倉庫の鍵を渡したときと同じ笑顔の先輩澤井慶彦が立っていた。
「明央、どうだ。いい立地だろっ!」
「まあ、お世辞にも快適とは言えないだろうけどね。お昼一緒しようぜ!」
先輩の笑顔を見ると、急にお腹が空いてきた気がした。
時計を確認すると午前11半を過ぎだった。
朝、先輩に会ってからすぐここに来たのに、もう昼じゃないか。もう2時間もここにいることになる。つい一ヶ月前までは日中の一分一秒無駄にしないよう徹底的に時間管理をしていた自分がもうこんな時間の使い方をしていることに驚いた。
そう、おれが藤原明央。現在、仕事をしていない。人間関係の縺れやストレスを理由に高校卒業とともに起こした会社を一ヶ月前に閉めた。不動産会社や人材派遣会社を営む先輩澤井慶彦は高校在学中からお世話になりっぱなしで頭が上がらない。歳はおれの7つ上の28歳。
「すみません、今行きます!」
先輩の笑顔に応えようと固く固まっていた顔に必死で笑顔をつくろうとした。
今回登場のフェラーリF430スクーデリアは作者のもっとも好きなV8フェラーリの一つです。V8フェラーリだとF355なんかも好きですね。
高校生のときにF430スクーデリアを仲間内でスクデリ、スクデリと連呼していると周りに“スク水”と聞き間違われ、大変恥ずかしい思いをしたことがあります。みなさんもお気をつけくださいね。
そういえば、新型ストラトスのベースもF430スクーデリアでしたね。以前ワンオフで作られた時もスクーデリアがベースでした。もしかして当時から技術更新されていない⁈
こうして作中にクルマが出てくるたびにあとがきに長々とクルマ雑談を盛り込む予定です。次回も本文、あとがきともにお楽しみください。