倉庫との出会い2
漸く話が滑りだします。
ゆるりとお付き合いください。
暫くの間、じっと足元を見つめていた。
「はぁぁぁ〜」深いため息をつくと、
おれは面倒くさそうにズボンの左ポケットから古びた鍵を取り出し、倉庫の扉についた黒い南京錠を外した。そして、鍵のついた南京錠をそのまま、また面倒くさそうにポケットに放り込んだ。
ふと手を嗅いでみると鉄の匂いがした。
どこか懐かしいにおいだった。
そのどこか懐かしいにおいを振り払うように手を叩くと右側の扉に手をかけた。扉はそれほど力を入れていないのに音もなくスーっと横に開ききり、ゴンッと鈍い金属音がなった。中からは湿った空気が流れ出していた。おれはあまりにもスムーズな扉と湿っているのにカビ臭くない空気に違和感を感じ、おそるおそる中に入ってみた。中は薄暗くガランとしており、靴の乾いた音がこだました。
ふと見ると前方から線状の光が僅かばかり漏れていることに気づいた。向こう側にも扉があるのだろうか。小走りで近寄ってみると、確かに扉があった。ただ、何故か扉が外ではなく、内側に備え付けており、さっき開いた扉と似た印象を受けた。開こうと扉を引こうにもビクともせず、まるで壁に溶接されているのではないかと思うほど、何の音も振動も感じられなかった。
慌てて反対側から外に出て倉庫の裏に行こうとすると、そこには裏の建物との境界線のフェンスがあり、人間一人も通れないような隙間が僅かにあるだけだった。
「昔はもう一つ奥に倉庫があったのかもしれないな。」
来た道を引き返し始めると聞き覚えのあるエンジン音が聞こえて来た。
次回から
主人公と仲間達の人物像や背景がじわじわとわかっていきます。
また、クルマ好きのクルマネタも折り込みます。