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(15)一次試験当日

「えっと……ここね」


 2月の一次試験当日、大学の受験会場につくと、真奈美は自分の席を見つけた。会場は二つの教室に分かれ、合わせて60人ほどの受験生がいたが、真奈美は周りには目もくれず、準備にかかる。


 一方、玲と雅也の席は真奈美の隣の教室だった。一番前の席に座る玲は周りに無関心なようだが、その後ろの席からまわりを見回すと、やはり他の受験者は大人びて見え、自分たちの存在が場違いに思えて仕方がない。


「いよいよだね」

「ああ」


 若干緊張ぎみに前の席に問いかけたが、玲は相変わらず淡々としている。


 だが雅也は、リアルでのこういった場所に慣れていないせいか、背後からの視線が気になった。明らかに年下の自分たちが注目を集めている。


 そうこうしているうちに試験の開始時刻が近づき、受験者全員が着席すると、腕章を巻いた試験官が教室に入ってきた。


『ではこれより、研究職採用一次試験を始めます。なお本日、不正行為防止のため、構内における通信はすべて遮断されますのでご了承下さい』


 そう言われて自分の端末に目をやると、すでに『圏外』と表示されていた。


 簡単な試験の説明が数分で終わり、静まり返る教室。


 しばらくして、時計が定刻を告げた。


『それでは始めてください』


 試験官の合図でテストが始まった。31人の教室の空気が張りつめる。


 選択科目、数学、社会学でそれぞれ20分。

 受験生全員が入力ペンで思考を文字化していく。



 ◆◇◆



『それではやめてください』


 試験官の言葉と同時に解答用紙が回収され、ふー、と受験生の息を吐く音が聞こえた。


『これで本日の一次試験は終了いたします。皆様、お疲れ様でした』


 その試験官の挨拶とともに空気がさらに緩み、受験者たちが席を立った。彼らの表情からはどの程度の出来だったのか、まったく読み取れない。


「どうだった?」


 玲に声をかけると同時に、いきなり振り向かれた。


「ちょろいんじゃねーか? お前もだろ?」

「ま、まあね」


 実際のところは半信半疑だったが、マイペースな玲に巻き込まれて答えてしまったそのとき、真奈美が自分たちの教室に入ってくるのが見えた。


「おつかれー。せっかくだから大学の学食食べて帰ろうよ。おじいちゃんがカード貸してくれたの」

「そうだな、行くか」


「あれ? 玲ちゃん、今日は機嫌いいわねえ」

「そりゃ、テスト終わったばかりだしな」


「じゃあ、あたしちょっとトイレ行ってくるね。二人は先に下りてて」

 そう言って真奈美は走っていった。


「じゃ、行くか」


 玲の言葉に雅也も立ち上がり、教室を出て階段を下りる。


 ところが、一階に着いたところで、後ろから誰かに肩を掴まれた。


「おー、ちょっと僕ちゃんたち、つらかせや」

「お前ら小学生だよな?」


「えっ?」


 二人は突然、三人の男たちに取り囲まれた。

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