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5話 『それお前な』

「今日のクエストは、未だ明らかになってない、森の奥にある池に住んでるヌシの正体を調査することだ。なおこのクエストはかなりの高難易度だ。だからギルドから遺書用の紙と封筒が配布された。書きたい奴はさっさと書くように」

「先生! どうして僕達には分不相応な、死ぬかもしれない高難易度クエストを受けたんですか?」

「はいウリル君! じつに良い質問だ! それはだなあ」


「お前がギルドを爆破したからだろがあああああ!!!」


 昨晩、ウリルの仕掛けたアプリ爆弾の爆発によってギルドが半壊し、重軽傷者も多数出た。

 幸い、ケガ人は奇跡的に無傷だった医務室で治療を受け今は何ともないし、建物の方も連絡を受け急行したクリエイター達によってすぐに修復された。

 だがいくら全て元に戻ったといっても、被害を出した責任は免れない。

 例のごとくウリルは居なくなってたから、被害者であるはずの俺に容疑がかけられたが、上げたての詐欺師スキルによって事故だったって事にした。

 でもそれだと罪悪感で毎晩眠れなくなりそうだったから、事故を起こした責任として一つだけギルドの要求を聞くことにした。

 その要求がこれだ。


「にしてもギルドの連中、とんでもない依頼してきたね〜完全に僕等を殺す気だよ! 狂ってる!」

「それお前な」


 まあ本来は討伐クエストだったのを、受付のノーゲが情けをかけてくれて調査クエストになったからな。

 あとでお礼を言っておこう。


「ねえユキト。おやふこうものってどう書くの?」


 ミエラはバカ真面目に遺書を書いてる。

 てかそのくらい書けろよ。


「書かなくていいわそんなもん。別に今回は調査なんだから、遠くからちょろって見て帰ればいいんだよ」

「なら安心ね! 帰ったら高難易度クエスト達成って事でお祝いよ!」

「それ微妙な死亡フラグだからやめろ」



=====================================



「あれがヌシの居る池?」


 俺達は森の奥に入り、大きな池を見つけた。


「ああ、たぶんそうだ。じゃあウリル、頼んでいたやつを頼む」


 昨晩ウリルに『明日の調査用に何かまともなの作っとけ。爆弾以外で』と連絡しておいた。

 ウリルはポケットから、バスケボールくらいのハエの形をした物を出す。


「巨大魚用疑似餌〜じゃあ今回の作戦を説明するね。まあ作戦はいたってシンプルで、これを池に浮かべて、ヌシが捕食するところを写真に収めるって感じ! このハエからは魚を呼び寄せる魔法が出るんだ! なんでもヌシはいくら水面で暴れても出てこないらしいからね。魔法にかかればきっとすぐ食いつくよ! カメラはこいつに搭載されてるから、大迫力なのをパシャリと! 写真はタークルに送られくるよ。ちなみに今回のコレは爆発しないから安心して!」

「なかなかよさげだな。じゃあ早速やってみるか」

「「おー!」」


 池にハエを浮かべ、俺達は木の後ろに隠れて様子を見る。


「じゃあスイッチオン!」


 ウリルがボタンを押すと同時にハエが羽ばたきだす。

 まさに池に落ちたハエをそのままでっかくした感じだ。


「なかなか来ないわね」

「すぐ食いつくはずなんだけ」


 突如野太い鳴き声が聞こえ、周りが波に飲み込まれた。


「なんだ?!」


 さっきまでハエが居た所には、前のスライムとは比にならないくらい大きいナマズが居た。

 そのナマズはしばらく口を動かしていたが、俺達の存在に気付き、金属をも切断できるだろう威力の水を発射してきた。

 ヤバい! バレた!


「逃げろおおおおおお!!!」


 急いで森の出口まで走る。

 森の出口に着き、三人揃っていることを確認してその場に座り込んだ。


「ししし死ぬかと思ったわ」

「あれはヤバいって! マジでヤバい!」


 ミエラと二人で抱き合う。

 傍からみたら完全にロリコンだがそんなの気にしてられなかった。


「流石にヌシもここまでは追いかけて来ないから安心しなよ。さあ! 早速撮れた写真を見よう!」


 なんでこいつは平気なんだと不思議で仕方なかったが、頭のネジが飛んでるんだな納得し、とりあえず画像を見てみる。

 フォルダーの中には三枚の画像があって、一枚目はヌシの口のドアップ、二枚目は食道らしき所を通っている写真、三枚目は胃袋の中だった。

 正直どれもグロテスクで見る気が失せるが、ミエラが三枚目の写真をじっと見ている。


「どうしたミエラ。その画像そんなに気に入ったのか?」

「なわけないでしょ! ここよく見て! この端っこに写ってるのって人間の腕じゃない?」


 そう言われもう一度よく見てみる。

 確かに腕っぽいけど正直何なのかわからない。


「助けに行きましょ!」

「いやお前バカか! そもそも、これが人間の腕だって決まったわけじゃない。池に居た別の魚かもしれないだろ? 仮に人間だったとしても、胃の中は空気が無いからとっくにご臨終だ。それに生きてて助けるとしても、さっきの威力見ただろ? このパーティーじゃとても太刀打ちできねえよ」

「助けに行かないなら、今晩からユキトの宿は無しよ!」

「うっ痛いところを突きよる……」


 正直作戦はあるけど嫌なんだよなぁ。

 モンスターの胃袋産にはかなり迷惑かけられたからな。ウリルの事だけど。

 これ以上誰かに俺の異世界生活計画を壊されるのはごめんだ!

 でも今宿が無くなるのは困るし、モンスターの胃袋産が必ずしも悪いとは限らないよな。ウリルはたまたま引きが悪かっただけだと願おう。

 やるか。


「わかった、助けに行く。だがその前にウリル! あれを出せ」



=====================================



「ユキト、ホントにいいのかい? 場合によっては君死んじゃうかもだよ? とりあえず足の震えが止まるまで待とうか?」


 性懲りもなくまた池に現れた三人。だがさっきとはちょっと違う。

 

「良いから早くしてくれ! お前は二回もやって生きてんだから多分死なない! あと足震えてないからな!」


 この装備結構重いな。中心まで泳ぐのツラいぞ。


「よし点火したよ! 時間は10秒だから急いで飛び込んで!」


 ウリルに言われ急いで飛び込む。

 やっぱり重い。ぎりぎり時間内に着くか着かないかだ。

 大きな池を中心に向かって爆弾が泳いでいく。


「ユキト! そこが丁度池の中心よ! 一発デカいのかましてやって!」

「おらあああああああ!!!」


 自分の体が急激に熱を持っていくのがわかる。

 俺の装備は爆発して周りが真っ白になった。

 しばらく意識がもうろうとしていたが、ウリルが俺めがけ何かを投げる。

 回復ポーションだ。

 どうにか飲んで復活し、急いで岸に戻る。


「やったねユキト! あれを見てみなよ!」


 ウリルが指さす先には水面に浮かんだヌシ姿が。


「いや〜まさか爆弾の衝撃波で池の中に居るヌシを倒すなんて。よくそんな作戦思いつくね。さすがユキトだよ」

「俺の元居た世界ではダイナマイト漁ってのがあって原理はこれと一緒だよ。まあ禁止されてるけど」

「元居た世界?」


 ウリルにはまだ俺の事言ってなかったっけ。


「まあ、それは今度話すよ。それより早くお腹見てみようぜ!」

「了解!」


 すでにミエラが魔法で陸地に引き上げて、口を開かせていた。


「おい、ミエラ。人は居たか?」

「まだわかんない。ユキト中に入ってみてくれない?」

「マジかよ」


 俺がしぶしぶ中に入ろうとすると、口の中から一匹の動物が出てきた。

 全身は真っ白でふわふわな毛に覆われている。

 初め羊かと思ったが違う。

 これはもしかして


「「「アルパカ?」」」

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