表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

4話 『焦ると大体ですます調になる』

「おっはよう! 昨晩は楽しかったね!」


 ギルドにクエスト申請しに来ると、当たり前のようにウリルが待っていた。


「お前、昨日逃げただろ」

「逃げたとは失礼だな〜君がそろそろ帰ろうって言ったから帰っただけだよ? そんな事よりさ、クエストもう申請しといたよ! 今回は君たちの装備のお披露目式だからねえ。あ、装備は現地で渡すから今はお預け! ちなみにクエスト内容は……まあ、現地で説明するよ。じゃあ出発!!」

「ちょっと待」

「出発よ!!」


 意見を言う間もなくミエラに押し切られ、なかば強制的に連れて行かれる。

 今日はクエストに行くつもりだったから別に構わないけど……なんだろ。


 嫌な予感がする。



=====================================



「じゃあクエストの説明をするね! 今回のクエストはあの崖の下に見える、大量発生したキラーモスキートの駆除! まあ、キラーとは名ばかりのただのちょっと大きい蚊だから。心配しなくていいよ。具体的に言うと子犬くらいかな」

「いやそんなのに刺されたら普通に死ぬだろ! 心配しかねえよ!」

「刺されたら死ぬ。なら刺されなきゃいいだけ! そこで活躍するのがコレ! ボムア〜マ〜」


 ド〇えもんの四次〇ポケット的な物から、物理的に入りきらないであろう鎧を取り出す。

 後から聞いたら、どうも魔法の力で研究所と繋がっているらしい。

 だから四〇元ポケットってよりかは、とりよせ〇ックに近いみたいだ。


「いまお前なんて言った?」

「ボムア〜マ〜」


 ボムって確か爆弾だよな? ってことは


「それ、爆発しないよな」


 一瞬ウリルの表情が固まる。


「ししししませんよ〜?も〜やだなあユキトさ〜ん」


 するやつだな。


「わかった。じゃあお前が着ろ」


 顔から血が引いてくのがよくわかる。


「いやいや待ってよ! これはユキト達のために作ったんであって、僕なんかが」

「ブーーーーーーーン」


 ウリルの声に気付いた蚊の群れが一斉に向かってくる。


「おいミエラ。抑えとくからこいつにそれ着せろ」

「アイアイサー!」


 俺がウリルを羽交い絞めにしてる間にミエラが手早く装備を着せる。

 どうやらミエラも乗り気らしい。


「すすいませんでした!! ホントはこれ、時間が経つと爆発するんですよ!! だから無言で装備着せていくの止めてもらっていいですか!! やめろおおお!! やめ」

「よしできた」


 胴体は丸っこく、頭からはなぜか火花を散らす導火線。

 フル装備だといよいよ爆弾にしか見えない。


「「じゃあ頑張って」」


 ウリルを二人で崖から突き落とす。

 崖を転げ落ち蚊の群れへダイブ。

 必死に逃げて回るウリルだが、それを凄い量の蚊が追いかける。


「ホントにすいませんでした!! 実はこの導火線から出る煙からは、蚊達を呼び寄せる香りが出てるんです!! だから助けてくださいいい!! あ、やばい!! 体が熱くなってきました!! そろそろです!! どうかお助」


 突如ウリルが光り、次の瞬間、激しい地響きと共にキラーモスキートの群れが爆炎に包まれた。

 しばらく待っていると炎はおさまり、そこにはススで真っ黒になったウリル。

 どうやら生きてはいるみたいだ。


「お〜い大丈夫か?」

「ゴホゴホッ死ぬかと思ったよ! なんて事するんだ!」


 いやそれ、お前が俺たちに着せようとしてたやつだろ。


「これに懲りたら、二度と変な装備着せようとすんなよ」

「は〜い」


 ホントに懲りてんのかこいつ。


「これで群れは全部なの?」

「いや、更にこの崖の下にあと二つあるはずだよ。安心して! 同じ装備がまだ二つ……冗談だってば! だから二人とも武器を振り上げないで! もう一個別のやつあるから!」

「今度こそちゃんとしたやつだろうな」

「モチのロンよ!」


 そう言ってまたもポケットを探りだす。

 出てきたのは全身に蚊取り線香が付いた装備だった。


「モスキ〜トハンタ〜ア〜マ〜! なんとこの装備は、蚊達が吸い込むと死んでしまう煙を、ずっと出し続けるんだ! 勿論人体へのダメージはほとんどないよ! さあさあ! どうぞ着ちゃって!」

「お前、またなんか隠してないか?」


 またもウリルの顔が固まる。

 こいつまたなんか隠してるな。


「おいミエラ。やれ」


 俺がウリルを羽交い絞めにしてる間にミエラが手早く装備を着せる。


「今回は大丈夫ですから! ホントに! 信じて下さい!」

「お前がですます調になったら大体怪しいんだよ。今回は大丈夫なんだろ? じゃあお前が着ても問題ないよな」

「いや勿論大丈夫ですよ! でもこれはあくまでユキトさん達のためにお作りした物ですから! だから早く外し」

「よしできた」


 一本の蚊取り線香が全身に巻き付いてて、少しセクシーな見た目になっている。

 頭には火のついた普通の蚊取り線香が一つ。

 そこから体に巻き付いた方に引火。


「「じゃあ頑張って」」


 ウリルを二人で崖から突き落とす。

 またも崖を転げ落ち蚊の群れへダイブ。

 必死に逃げ回るウリルを蚊達が追いかける。

 蚊は一向に死なない。


「お〜いウリル〜! 蚊が全然死んでないみたいなんだけど〜!」

「実はこの蚊取り線香実はただのお香で、蚊達が好きな香りを放つんです!! だから早く助けて下さい!! あ、やばい!! また体が熱くなってきました!! そろそろです!! もう嫌」


 ウリルが叫び終わる前に、再度爆炎が辺りを包み込む。

 あいつ爆発する装備しか作れないのか。

 炎が収まったのでウリルの回収に向かう。


「お〜い大丈夫か?」

「ああ……おばあちゃんが……川岸で……手を……」


 近くに来て顔を見ると、歯は何本か欠け、目の焦点が合ってなかった。

 まあ、なんにせよこれにてクエスト達成だ。


「よし、ミエラ。ウリルを負ぶって帰るぞ」

「アイアイサー」



=====================================



「いや〜死ぬかと思ったよ」


 ジョッキを片手に、医務室で治癒魔法をかけてもらって完全復活したウリルが一言。


「全部お前の装備のせいだろ? てかお前あんな装備しか作れないの? お前の言ってた優良物件の意味が全く分からないんだが」

「失礼だな! 今回は蚊の討伐だったからあの装備を作っただけで、本気出せば誰もが欲しがるような装備だって作れるよ! 馬鹿にすんな!」

「じゃあさっさと本気出せよ!」


 ミエラは例のごとくノックアウト中。

 今後のクエストで爆発しないにはどうすればいいか。そんな事を考えながらチビチビ飲む。


「あ、ユキト。ちょっとタークル貸してくれない?」

「別に良いけど、変なことするなよ」

「大丈夫! 検索履歴は見ないから!」

「べべべつにエロ動画とか見てねえよ! あれだ! 装備の紹介動画を」

「あ〜エルフが好みなんだ。結構見てるね〜」


 ウリルがタークルを慣れた手つきで操作する。

 なんでだよ!! 検索履歴はちゃんと消去したのに!! 超恥ずかしいいいい!!


「あ、検索履歴は消したはずなのにとか思ってる?悪いけど僕クリエイトマスターだからそのくらいすぐ見れるんだよ。ごめんね」

「さっさと返せよ!!」


 ウリルの手から急いで奪い取る。


「君のために一つ、とっておきのアプリ入れといたから。見てみてよ」


 そう言われタークルを開く。

 ってかなんでこいつパスコードかけてんのに開けたんだよ!

 ホーム画面を見ると初めて見るアイコンが一つ。

 黒いバックに赤文字でBと描かれている。


「ちょっと押してみて!」


 いつの間にかウリルは奥の柱の陰に、倒れたミエラを抱えて隠れていた。


「押すのか?」


 言われるままにアイコンを押す。

 その瞬間タークルが光って爆発した。


「ウリルゥゥゥゥゥゥ!!!」


 ギルドの出口に向かって走っていくウリルを急いで追いかける。


「このやろおおおおお!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ