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1話 『これ壊れてるよな?』

「ちょっと、いきなり叫ばないでよ! 周りの人が変な目で見てるじゃない!」

「叫ばずにいられるわけ無いだろ! ホントに俺は異世界に来たんだ! 来ちゃったんだ! これから俺の新たな冒険が始まる! くう〜待ち遠しいい! ビバ! 異世界生活! じゃあ早速町を案内してくれ」

「まかせなさい!」


 どうやらコイツは頼られるのが好きらしい。

 さっきまでは怒りで顔を赤く染めていたが、今は照れのせいだろう。


「じゃあとりあえず街の色んなとこ紹介するから、迷子にならないようにしっかり付いて来なさいよ!」

「へーへー」


 俺の前を遠足を取り仕切る担任の先生みたく歩いて行く。

 ついて行きながら周りを見回していると少し気付いたことがる。

 まずこの世界の町は、元の世界で言うところの中世ヨーロッパに近い。それも都会の方ではなく比較的田舎の方。

 すれ違う男達は誰も屈強な体つきで筋肉が凄いし、女達は露出度が凄く高いから、服装は中世ヨーロッパってよりはゲームの方に近いな。髪の色もカラフルだ。

 女の服装に関しては有難い事この上無いな!

 

「ユキト……お年頃だから異性の体に興味が出るのは仕方のない事だけど……少しは自重して?」

「みみみみみ見てないし?! あ、あれ、冒険者の装備見てただけだし?! 女だけとかじゃなくて男の装備も見てたし?!」

 

 ミエラが呆れた目で俺を見てくる。

 畜生! なんでバレるんだよ!

 向こうの世界では全然モテなかったんだから多少は許せよ!

 なんか年下になだめられたし! 恥ずかしすぎるだろ!

 

 仕方ない。とりあえず集会場に行って冒険者登録済ませるか。


「なあミエラ、この町の集会場はどこにあるんだ?」

「集会場? そんなのないわよ」

「嘘だろ?! 普通集会所に行って冒険者になる手続きして、そしたらそこで俺の秘められた力が明らかになるってのが定石だろ?! 早速積んだぞ!!」

「ギルドならあるけど」

「なら初めからそう言えよ!! おかげで俺の冒険者生活の幕が閉じるとこだったぞ!! はあ…じゃあギルドに案内してくれ」

「何? もしかしてユキト冒険者になりたいの? じゃあパーティーを組まないとね! パーティーメンバーの目星は付いてるの? その様子だと全然みたいね! だけど安心なさい! ここにいる優しいウィザードの私がパーティーメンバーになってあげるわ……って無視して先に進もうとしないでよ!! わかった私が悪かったから! だからパーティーメンバーにしてください!」


 ミエラが腕を掴んで先に行かせまいと引っ張る。

 正直これ以上コイツに関わりたくないんだよなあ。

 でも仲間になるって約束したし、仕方ないか。


「わかったよ、パーティーメンバーにするからさっさとギルドに案内してくれ」


 ミエラの顔が途端に明るくなる。


「合点承知の助!」

「……ここホントに異世界だよな?」



=====================================



「ここがギルドよっ!」


 レンガ造りで正面に扉は無く、アーチ形の穴が開いていて、中から美味しそうな匂いが漂ってくる。


「いかにもギルドって感じの建物だな。よし、じゃあ中に入るぞ」


 上面のアーチをくぐり中に入る。

 沢山のテーブルが並んでいて、いろんな冒険者が食事したり、酒を飲んだりしている。


「なんか雰囲気感じるなあ。いかにも荒くれ者が集まるギルドって感じ!」

「別に荒くれてなんかないわよ? 普通にいい人が多いわ」

「ムードぶち壊しじゃねえか」


 やっぱりコイツと一緒に居たくねえ。


「まあとりあえず冒険者登録を先に済ませちゃいましょ。冒険者登録やクエストの受注、報酬の受け取りやパーティー申請なんかもろもろは奥のカウンターでできるわ。ちなみに登録料に1000ドリかかるけど今回は私が出してあげるわ。更新は年三回でその時には更新料500ドリが必要よ」

「そこら辺シビアなんだな……ってか早速未知の単位出てきたんだけど。だいたい1ドリ1円の解釈でいいのか?」

「100ドリあればレンガ1個買えるわよ」

「わかりにく! レンガ1個っていくらだよ、だいたい100円ぐらいなのか?」


 まあいい、早速登録しよう。

 と思ったがそこで大事件が発生した。

 ここに三つの窓口がある。左から、女、女、男の順。

 勿論男は論外だが、女はどっちもかなりの美人だ! 

 左の女は男遊びなんて物を全くした事が無く、心がとても優しいそうな、まさに清純美女!! 一方右は少し年上でかなり遊んでそうだが、大人のお姉さんにしか出せない妖艶なフェロモンにそそられてしまう!!

 俺はどっちを選べばいいんだ!!


「何してんの? さっさと済ませるわよ。ここ空いてるわね。すいませーん」

「バカッ! お前何してんだよ!」


 嘘だろ? 嘘だって言ってくれ! なんでよりにもよって一番右の男に行くんだよ!


「お、お客さん?! ななななんでしょう!! 私のできることなら何なりと!!」

「いや、ただ冒険者登録をしたいだけですけど、何でそんな興奮してるんですか?」


 俺が聞くと受付さんはハッとして謝ってきた。


「すいません。だいたい受付に用がある方は向こうの方に行ってしまって、私の方にはほとんど人がいらっしゃらないんです。なので久し振りのお客様につい高揚してしまいました。申し訳ありません。」

「なんか受付も大変なんですね……頑張ってください」

「ありがとうございます。では改めまして、受付のノーゲです。冒険者登録ですね? まず登録料を頂けますか?」


 ミエラがポケットから無造作に銀貨を2枚取り出し、ノーゲに渡す。

 どうやら銀貨一枚が1000ドリらしい。


「お前は登録しないのか?」

「私はとうの昔に済ませてあるわ」

「お前、俺より前に登録してんのに未だにパーティーメンバーいないのか」

「う、うるさいわね!」


 まあコイツの性格だと誰もパーティーに誘おうとは思わないだろうな。


「確かに頂戴しました。ではタークルをどうぞ。タークルの画面に掌を置くと持ち主として登録され、自分のステータスが表示されます。クエストをクリアするとレベルが上がり、ステータスも上昇します。また、職業はステータスからタークルが勝手に判断し表示します。レベルが上がった時にスキルポイントも貰えるので、ポイントを消費してその職業のスキルを開放していってください。説明は以上になります。あなたの冒険者ライフに神のご加護があらんことを!」


 登録を終えた俺たちはとりあえず食堂の方のテーブルに着いた。


「このタークルって完全にタブレット端末だよな。この世界どんだけ科学発展してんだよ」

「タークルは数々の優秀なウィザードとクリエイターが協力して作った物よ。そんなことより早くユキトのステータス見ましょうよ!」


 ミエラに急かされつつもタークルに手を置く。

 その瞬間画面がまばゆい光を放った。

 キタキタキタ!! これで俺の秘められた力が露になり、周りの冒険者っちに取り囲まれちやほやされるわけだ!!

 やはり運がカンスト状態でチートの様な異世界ライフを送るとか?! それともMP値が異常に高くてMP共有のできる女ウィザード達に取り合われるとか?!

 ミエラを除く。

 しばらくすると収まり俺のステータス数値らしき物が表示された。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 雨音 幸斗 17歳 Lv.1


 力    4

 速    5

 守    3

 攻魔   2

 回魔   4

 MP   6

 HP   5

 知    8 

 運    5 

              職業へ

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「ちょっと見せて。んっとね〜普通かな。初期ステータスは0〜10の内で表されるの。知力がちょっと高いくらいであとは普通よ」


 え?


「いやいやいや普通なの?! 俺の秘められた力は?! 幸運でチートは?! MPで異世界ハーレムは?!」

「そんなのないわよ。ただの一般人」


 どうすんだよ! 俺の異世界生活計画がまた砕け散ったんだけど! 

 もしかして俺この世界で普通の冒険者として生きて、特に功績も上げずにひっそりと死んでくの?

 そんなの嫌だ!


「はやく職業見ましょうよ」

「そうだ、まだ職業がある! いくらステータスがゴミでも、職業が初めから上級職なら周りからちやほやされること間違いなしだ!」


 急いで職業へボタンを連打した。

 画面が真っ白になり、しばらくすると通知音と共に文字が表示された。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 雨音 幸斗 17歳 Lv.1






    適正職業無し






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「おりゃあああああああああああああああああ!!!」

「ユ、ユキト!! 鬼のような顔でタークルを地面に投げつけようとしないで!! 職業が何だったらそんな事になるのよ!!」

「何でもなかったんだよ!! 適正職業無しってなんだよ!! なあ、これ壊れてるんだよな?! 壊れてるって言ってくれ!! 頼むから!!」

「はあ? 適正職業無しなんて事あるわけないでしょ。ちょっと貸してみなさいよ」


 ミエラが俺から受け取ったタークルをパシパシ叩いている。

 ホントに頼むぞ。職業無しなんて笑えねえよ。

 異世界に来てまでバイト暮らしなんかしたくないぞ!


「これ壊れてなかったみたいよ。また画面が真っ白になったから今度はちゃんと表示されるはず」


 頼む頼む頼むホントに頼むから何でもいいから俺に職業をください!

 神様仏様ミエラ様!

 通知音が鳴り、俺は目を開いた。

 そこには



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 雨音 幸斗 17歳 Lv.1






     詐欺師






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「どりゃあああああああああああああああああ!!!」

「待ってユキト! お願いだから般若のような顔でタークルを地面に投げつけようとしないで!」

「ふざけてんだろこれ!! 詐欺師だと?! そんなのドラ〇エでも〇イナル〇ンタジーで見たことねえぞ!! これなら羊飼いとかの方がまだマシだ!! 何なのマジで!! やっぱりこれ壊れてるんだよな? 壊れてるだろ? うん壊れてるな。 よし一安心だ」

「壊れてないわ。私も話術士は見た事あるけど、詐欺師は初めて見たわ。凄いわねユキト」


 なんも嬉しくねえええ。

 そもそも詐欺師って冒険者の職業なの? 冒険者ってよりかは犯罪者の職業だろ?

 確かに小さい頃から口は上手いなと言われてきたけど、詐欺師は無いだろ詐欺師は。

 俺の夢見た異世界生活が……ハーレム生活が……


「まあ、無職は避けられたし良いじゃない。それよりもスキルポイント振りましょ。初めから5ポイントあるから、それで取れるの取っちゃいなさいよ」

「俺の職業だとどんなスキルが取れるんだ?」


 ミエラがタークルを操作するとスキルツリーみたいなのが現れた。


「そうね〜5ポイントあれば話術+3と百面相、あと偽造&偽証Lv.1が取れるわ」

「なにそのいかにもクエストで役に立たなさそうなやつ。なあミエラ、転職ってできるのか?」

「できるけどレベル80になった後じゃないと無理よ」

「マジかよ……」


 レベル80まで詐欺師ってどんなクソゲーだよ。

 俺詐欺師で冒険者ライフ送ってくの? いや無理だろ! 百面相でどうやって魔王倒すんだよ!


「まあ、何がともあれ冒険者になれたんだから良かったじゃない! これから仲間として、パーティーとしてよろしくね! ユキト!」


 こんなはずじゃなかったのに…… 

 

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