空き教室
今日の講義が全て終わると空き教室に向かった。
彼女と出会った教室は、ゆっくりと知らない物が増えていた。
誰かに聞いた話だと元々空き教室だった所を、優秀な彼女の為に丸々貸与えていたらしい。お偉いさん方も、彼女が一人で何かを作り出してくれる方がありがたいという話だろう。
その彼女が学校から居なくなったのだから、この教室が倉庫の様に使おうが学校側の勝手だった。
彼女は、この大学の多くの人間に知られている。
がその実接点を持っていた人間が何人いただろう。
薄暗い教室の隅に座り込む。この部屋は考え事をぐちゃぐちゃとするには丁度良かった。
僕は彼女と手紙のやり取りをする様になって、今更少しずつ彼女という存在をちゃんと認識出来始めた気がしていた。
本当は僕以外には見えない妖精という可能性だって彼女には有り得た話だと本当に思っていた。
しかし、早くも黴臭いこの空き教室で感じる喪失感は彼女がいた証拠に成り得ると僕は思った。われ思うという奴だ。
そういえばこの部屋で彼女と哲学について話した事があった。
彼女は冷めた自己理論を展開したけれど、そんな事よりも彼女が楽しそうにしていた数少ない会話だ。
またあんな風に話せる日が来るのだろうか、
彼女の声を一週間近く聞かないのは、大学に入ってから一度も無かったはずなのに。
その事に慣れ始めている自分が何処かにいるの事が怖かった。そして彼女が居たはずの喪失感が薄れていくのが怖い。
僕は日が暮れるまで空き教室に蹲っていた。
彼女の家に手紙を取りに行けば、いつもの僕に戻れるだろうか。
僕は黄色の電車に揺られる為立ち上がった。