いつも通りの違う君
彼女との出会いも、思い出も今の所は全てこの部屋の中にしかない。
というのも、当時大学に入ったばかりの僕が間違えてこの教室に入った事がきっかけな訳で、それ以来彼女の気を引くために、ケーキ片手に足を運ぶ日々と言った感じだからだ。
ふと気付くと、ケーキを食べ終わるといつもの定位置に戻る筈の彼女が、今日はソファに座ったままだった。
そんな彼女と目が合う。そして、
「ケーキ美味しかった、ありがとう。」
ぺこりと彼女は頭を下げた。
「い...いや、どういたしまして」
彼女がお礼を言うなんて始めての事で、僕は動揺が声に出た。
その後は、ガサゴソと定位置に帰っていった。
けれど僕は、頭にハテナを浮かべたままだった。
もしかしたら今のは、最初で最後のチャンスだったのではないか?
いやいや、まさか...でも何か進展したのでは?
戻っていった彼女に目を向ける。
パソコンの画面の光に照らされる彼女の横顔は、いつもと変わらない。ように見えた。
片付けをしてる間も考えたけれど答えは出なかった。
出ないからこそ、このままでいいのか、何かするべきなのかと後悔することになるのだろうが、それは今に始まった事ではない。
「美織さん また来ますね。」
集中している彼女の邪魔をしない程度の音量で、声を掛け外に出る。
扉を閉める寸前、「さようなら」と聞こえた気がした。
それから2日後最初で最後の日だった事に気付く僕はやっぱり後悔することになる。