勘違い
国立ローグ軍事学校⋯中等部・高等部・大学部からなる建国初期に創られたローゼンブルク王国で最も古い歴史を持つ教育機関。ローゼンブルク王国の軍部の階級としては軍人と騎士に大きく分けられ、一定以上の功績と試験にパスすることで騎士階級に昇進できる。ローグ軍事学校は今まで騎士階級を多く輩出してきた名門で、身分問わず国民の全てに受験資格が与えられる超実力主義の学校である。
そしてこの学校では高等部3年になると全員参加のC級魔獣狩りの実地試験がある。C級魔獣とは騎士階級のものなら一人でも倒せるレベルである。それを5人1班として集団で狩るのだ。7年前、現王に隣国エリン法国と通じていた貴族・官僚達が隣国の工作員達を秘密裏に国内に引き込み、この行事に参加する学生達を殺害する計画を実行に移した。工作員達は皆高位の魔術師であり召喚魔術で複数のA級魔獣を使役し、学生たちを襲わせた。現場はパニックに陥った。しかし、一人の学生が最低でも騎士10人規模で討伐するレベルの魔獣達を次々に倒し、また騒動の原因である工作員達をも倒したのである。国は捕らえた工作員達を尋問し、反逆者たちを芋づる式に捕らえることに成功し秘密裏に始末をつけエリン法国による侵略行為として大陸会議において賠償を求めた。これにより事件は解決したが、被害は大きく教員・生徒含めて多くの死傷者を出した。
今回の件を解決に導いた立役者である学生はとても上機嫌の王から褒美として何を望むと尋ねられた際、「私は孤児出身者であります。我々孤児は国からの孤児支援金で生活していますが、かなり厳しい生活を送っています。私たちはなりたくて孤児になったわけでも、私たちに落ち度があって孤児になったわけでもありません。この国の初代国王は孤児が幸せに生きる権利を保障しました。だからといって高望みはしません。普通の生活がしたいのです。ですから、予算の増額をお願いします。」と王に望みを話した。王はこの望みを喜んで受け入れただけでなく、さらに望みはないかと尋ねると彼は自分が今回の事件の解決に関わったことは王と一部の者の中だけにしまっておいて欲しいと話した。訝しみ理由を尋ねると彼は曖昧な笑みを浮かべるだけだった。王は結局この望みも了承し、彼の功績を隠蔽し自分と上層部の胸の内にしまった。
その後、彼は軍大学校に進むことなく一般大学へと進学した。この事を後で知った王を含めた上層部は大層慌てた。何故なら、彼の名が亡き王妃が残した予知に出てきた名と同姓同名であり容姿も一致していたからである。
(今更言えない。一般大学に進学した理由が美女とのキャンパスライフに憧れたからなんて。で、でも、男なら当然でしょ!青春時代に何が悲しくてほとんど男だらけの日々を送んなきゃなんないんだよ!美女もいることにはいたけどその辺の男より男らしい女なんていやだんたんだよー!!)
アークはさもレミリアが語った自分の美化された進路変更理由が真相だというようなつらそうな顔をした。それを見た3人は余計申し訳なさそうな顔をした。そうするとアークはもうどうしようもない状況だと悟ったため、仕方ないので話を進めることにした。
「事情は分かりました、もう私に道がない事も⋯。それでこれからどうするのですか?」
「私たちと一緒に王城まで来てもらいます。アーク様は父や一部の上層部の者達と面識がありますけれど、面識のない人たちもいるでしょうから顔合わせをしてもらいます。」
「わかりました。ですけど、王との面会に着ていくような服をもってないいんですけど。」
「ご安心ください。王城にアーク様の礼服を用意をしてあります。面会まで時間もありますしゆっくり用意もできますよ。それと私に敬語はいりません、今日の内に私たちは婚約者になるのですから。」
「えっ。あ、はい。努力します、じゃなくて努力するよ。レミリア王じ、あ~、さんも俺に敬語使わないでいいよ。敬語なんて使われなれてないし。」
「ええ、でも敬語が私にとって普通何ので。」
二人の会話によって車内の空気はさっきまでの張りつめたものからほほえましいものになった。会話が終わるとレイリアは運転手に王城に戻るよう指示を出し、四人はフィルグスの中心にそびえる王城に向かった。