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就職浪人戸惑い、驚愕す

 ローゼンブルク王国、今から300年前に初代国王シュヴァルツ・フィン・ローゼンブルクによってミルス大陸の東部に建国された王国。領土は広大で資源も豊富、四季の移ろいもありとても住みやすい国である。そんなローゼンブルクは三代国王ルシュト・フィン・ローゼンブルクの時代に魔道化学が誕生し、大陸の中でさらに地位を確固たるものとした。

 

 そして、現在は九代国王ルート・フィン・ローゼンブルクがこの国を治めている。ルートはもともと前国王の9番目の子供であり継承権はとても低かったのだが、王太子が隣国を訪問した時に疫病に感染し帰国して5日目に発症した。さらに悪いことに発症の3日前、王家の血を引くものが全員参加した晩餐会が開かれていたのだ。その為、出席者の全てが感染しやがて死亡した。唯一生き残ったのは当時留学していたルートだけだった。これによりルートは国王の座に就くことになった。

 

 そこで問題になったのが王妃の選定であった。王家の血を増やす為多くの貴族がルートに妃を増やすよう意見したが、ルートは留学時代に出来た恋人であるミーシャ以外を娶ろうとはしなかった。これに対して多くの批判が出たが、ルートは魔術師であったミーシャの固有魔術〈未来予知〉により現状のままでも王家の血は途絶えないと主張した。貴族たちは初め疑わしそうであったが、その後ミーシャの予知により様々な問題が事前に予防できたためこれを信じルートの主張を認めた。

 

 しかし、ルートとミーシャの間に第一子であるレミリア王女が生まれて3年後ミーシャは病により亡くなった。これにより国の上層部は混乱した。それもそうだろう、王家の継承者が1人しかも王女である。だが、こうなることを予想していたミーシャは一つの予知をトールに残していた。


 「レミリアが20歳になったら、その時首都に住んでいるアーク・レイモンドという黒髪蒼目の青年と結婚させて王位を譲ってください。そうすればレミリアもあなたもそしてこの国にとっても多くの幸福が訪れます。」


 この遺言により事態は収束した。

 そして、17年が経った今美しく育ったレミリアは母の言葉通りにアークの元に訪れた。



 

 アークの全力土下座の後、これ以上ここに居ては面倒になると判断した3人はアークを自分たちが乗って来た車に乗せそこで訪問の理由を話した。話しがようやく終わった時には7時を過ぎていた。


「内容は理解しましたけど、その、納得できないと言いますか、はい。人違いでは?」


「いいえ、母の予知した男性は確かにあなたです。アーク・レイモンドという名は我が国のデータバンクにはあなただけですし、何より黒髪蒼目という容姿の方など世界中探してもほとんど発見できないだろう珍しいものです。お分かりいただけましたか、旦那様?」


「え、その、はい⋯」


「戸惑うのもわかります。母のこの未来予知はこの国の上層部の者しかし知らない事ですし、何も知らない者が聞けばあなたのような反応になるでしょう。」


(突拍子もない話だがレミリア女王、第二近衛騎士団団長ガリウス・ルクス、近衛騎士ミレイ・ロストの三人がわざわざ俺ををだます意味もない。そうするとこれは事実なのだろう。だからといって無職の平民がいきなり大陸で有数の美女であるレミリア王女と結婚し王位を継ぐなんて⋯)


 そんな事をアークが頭を抱えて考えていると申し訳なさそうにレミリア王女が話しかけてきた。


「ごめんなさい。あなたを私たち王族の問題に巻き込んでしまって。ただでさえ7年前、まだ学生であったあなたに我々王国の不始末を押しつけてしまったというのに。」


「え、」


「ある程度の者は皆あなたの功績を知っています。だからこそ母の予知とはいえ貴方を反発無く私の夫にすることができるのです。父や宰相達はあの事件以来あなたの動向をずっと追っていました。勿論、あなたが我々のせいで多くの学友を亡くしたことも、そしてそれによる負い目からあなたが軍人としての道を捨てたことも知っています。あなたの怒りはもっともです。ですが、どうか今一度かつて国を守ることを志した心を取り戻し私たちを助けてください。お願いします。」


その言葉とともに頭を下げた王女に倣い今まで黙っていた近衛騎士の二人も深く頭を下げた。そんな光景を見たアークは驚愕の表情をしていた。だが、これは王女や近衛騎士達が自分に頭を下げたことに対する驚愕ではない。


(え、俺が軍大学に進まなかった理由ってお偉いさんの間ではそんな美談になってんの。っていうか、あの時の事そんなに大事だったの?テレビでも新聞でもやってなかったし、俺ぼっちだからあの時の奴らが死んだことも知らんかった。⋯どうしよう?)


 色々台無しである。


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