儚き夢の終わり
スキル<slash>を使用した後にステータスを見た際、魔力が減っていませんでしたが、<slash>の消費魔力は5であり、一秒間に総魔力量の1000分の1回復するのですぐ回復したということです。説明が下手ですみません。
俺は走っていた。どこまでも続く森を。時折足に木の根っこが引っかかってこけそうになるけど、こけたらそこでゲームオーバーだ。
コンティニューなんて、セーブなんて出来っこない世界なんだから。
全力で、後ろを決して振り返らず、一心不乱に走っている。
こうなった理由 ?それはね、俺が呑気に歩いているとあのドラゴンさんが突然音もなくブレス的なのを後ろから放ってきたからです。それ以来ずっと逃げてるんだよ!まさかあれだけの威力があったから死んでないとは思ってなかったんだよ。俺は調子に乗ってたんだよな、きっと。
「ついてないな、俺って……ギャアァァァァァ!」
痛っ!この野郎よりにもよって俺の頭に向かって木を投げつけて来た。
なんでそれで無事なのかは分からないけどさ。とにかく痛いもんは痛いんだよ!もう一回<slash>ぶっ放してみるか?でも、結局たいして効いてなかったしな……
あぁ、こんなことになるなら異世界なんてくるんじゃなかった……
命がけでモンスターと戦って、一日を生きるのが精一杯でさ。
呼ばれた挙げ句におまえはいらないって?ふざけんなよ!
俺だって最初は喜んだよ。憧れの世界に来られて魔法だって使えてさ。
でも、俺は覚悟が足りなかった。ゲームや小説ってのは決して現実なんかじゃない。どこまでもご都合主義な世界で、ピンチの時には力が覚醒してさ、いつも隣にはヒロインや仲間がいるなんて全部嘘だ!
俺にあるのは孤独と絶望だけだ。そもそも初遭遇がドラゴンだなんてイカれてるんだよ。
不満を、苛立つ思いをぶちまけようと口を開けたとき、俺の走る速度が僅かに鈍った。それは、致命的な隙となった。ドラゴンが太い鉤爪で俺の背中を引っ掻いた。
「いってぇよ!こんなところで死ねるかよ!まだ試してないスキルがあるんだよ!まだ見てない景色が沢山あるんだよ!お前は!何様なんだよぉぉぉぉぉっ!!」
血が背中から溢れだす。強化された肉体でもドラゴンの攻撃には通用しなかったようだ。
「くっそぉぉぉぉっ!止まれ!治れよ!なんか覚醒しろぉ!」
俺は一生懸命叫ぶも血は止まらない。力が覚醒する気配も、誰かが助けに来てくれる気配もない。このまま死ぬのか?
嫌だ……俺はまだ何にもしてないじゃないか。まだ剣を受け取って門を出ただけじゃないか!
頼む……!神よ、本当にいるのなら俺を元の世界へ戻してくれ!
俺が最後に見たものは、ドラゴンの大きな顎と無数の鋭い牙だった ───────
ここはどこだ……?森の中だ。っ!?そうだ、俺はあのときドラゴンにやられて喰われたんじゃなかったのか?
背中が痛むからあの後なにかがあって見逃されたってことか?
いや、まずは周囲の確認をしないとな……
とりあえず起き上がって辺りを見渡すが木と地面しかない。今のところはドラゴンや他の魔物(?)の姿は見えないようだ。
ステータスでも見てみるか?もしかしたらなにか覚醒してドラゴンを退けたのかもしれないし……
「ステータス・オープン」
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name tomohiro
job swordman
magic 1500/1500
Skill <shining> <slash>
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なんも変わってないな。なんで助かったんだろうな、俺。
まぁいいか、とりあえずこの森を生き延びることが最優先事項だな。
完結させていましたが、続きを書こうと思い手直しして投稿しています。なお、一身上の都合により不定期更新です。