1.コロッケ
「おっす、児玉。あいかわらず、すっとぼけた顔してんな。」
でた、疫病神。
私の露骨に表した嫌な顔をもろともせず、奴はちゃっかり隣に座ってきた。
「お。旨そう。そのコロッケくれ。」
だめ!と言った時には、すでにコロッケの形は跡形もなく、奴の口の中に収まれてしまっていた。
450円のコロッケ定食はうちの高校の名物で、昼ともなれば食券が売切れてしまうほどの人気ぶりだ。
全て手作りで作っているらしく、揚げたてのコロッケは、ほくほくとしていて口の中でいもの食感が少し残る。
今日はひさしぶりに食べるから、楽しみにしてたのに…。
涼しげな顔をしている奴を、涙目で睨んだ。
「あほっ!!あほ吉田っ!!まだ食べてないのに〜っ!!」
「ば〜か。まだあと一個残ってるだろ?」
口をまだもごもご動かしながら、無関心そうに奴はいう。
この、まぬけっ!!1個はあつあつを食べて、もう1個は味わいながらゆっくり食べるのが、あたし流なのよ!!
あまりにむかついたから、大事なもう一つのコロッケを食べられないようにお皿を抱えて、奴に背を向けた
「ガキ。思考が乏しいんだよ、お前は。」
背中ごしに、奴の声が聞こえる。
ふん。なんと言われようが、知らないもんねーだ。
しばらく、静かだった。
後ろを見ないから分からないけれど、もう吉田はどこかに行ったのかもしれない。
少し安心して、食べかけのコロッケの続きを…と思ったとき、
「ふぉ〜」
いきなり、耳もとに生あたたかい息がかかった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」
全身に鳥肌が立った。
真っ赤になって耳を押さえ、勢いよく立ち上がった瞬間…。
目の前のコロッケが綺麗さっぱり、消えていた。
やられたっ!あんにゃろぅ!!
「児玉ちゃんは、感じやすいねぇ。」
1〜2M離れた所から、奴はポケットに手を突っ込みながら口をもごもご動かし、にやにやと笑って去っていった。
隣で一緒に食べていた香織が、頬杖をつきながら呆れた視線を私に向ける。
「あんたらって…ほんっとガキ。」
あたしは言い返す事が出来なくて、キャベツとトマトしか乗っていない寂しげなお皿に目を落とした。
絶対許さないんだからっっ!!!!
お久しぶりです。
書き溜めBOXにあった昔作ったお話なので、ちょっと恥ずかしいのですが、なんとか手直ししながら書いてみます。どうぞ長い目で見守って下さい(汗)




