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Episode73 午前の事

 俺たちは近くのゲーセンに来ていた。


 もう安全になったのもあり、弥生は「行きたいところがあるの」ということで不在だ。

 菊池さんも報告やら他にもすることがたくさんあるとの事でいない。それに須田は駆り出されていたりする。

 ということで残っているのは俺、海斗、青葉、優姫さん、宝生さんの五人だった。

 いざどこかへ行こう、となると浮かばないというオチになってしまったのだ。

 その結果、適当に遊ぼうという優姫さんの意見により来たのがゲーセン。


 なんで避暑地に来てゲーセン行ってるんだよって言われると反論のしようがないのだが……

 そういわれても、特に行くところが無かったのだから仕方がないというか、当初の予定が狂いすぎたせいだ。

 その原因が、さっきから銃を使ったゲームで脅威のスコアをたたき出している宝生さんなのだが。


 画面には二位との差が100000点とかいう意味が分からない事になっていた。

 見てる限りでも打ち方がちょくちょく本格的すぎるのだ。

 もっとゆるいものじゃないのかと思うのだが、まあ本人は楽しんでるようだし放っておこう。


「洵さん! あれ欲しいですっ!」


 俺の隣でぴょこぴょこ跳ねている青葉はおかっぱの銀髪を揺らして少しまぶしい。

 言われた方を見てみると、ちょこんと座る小鳥みたいなぬいぐるみがあった。

 見たことがある気がする。何かのキャラだっけか。


「そっか、じゃあ狙ってみるよ」


 俺は財布から百円玉を取り出して入れた。

 百円で三回。近頃のものとしては良心的だろう。

 クレーンゲームというのはそこそこに経験があるから、何回かやれば取れると思うんだよな。


「よし、まずは普通に掴んでみよう」

「ファイトです!」

「なぬ!? その高難易度コンボを平然と成し遂げるとは……貴様、やるな!」


 少し離れた格ゲー関連が並んで設置されているコーナーから一際目立った声が響いてきた。

 ただでさえ色んな音がごちゃごちゃになっているゲーセンでも海斗ならすぐどこにいるかが分かるよ。


 アームがぬいぐるみの頭を挟んで持ち上げようとする……が、撫でるように頭にアームを滑らせていくだけだった。


「そうか……それなら違う手だな」

「違う手……ですか?」


 少しガッカリした色を見せる青葉が首を傾げている。

 よし、ここで俺の面目というものを保たないとな!


「こういうのは、タグとかをアームに引っかければいいんだよ」

「そうなのですか! でも、難しそうですね……」

「うーん、それは慣れかな。まあ見ててくれ」

「はい!」


 二回目、俺の狙い通り、タグを……引っ掛けられませんでしたー。

 他のぬいぐるみがごった返しているせいでタグを引っ掛けようにも邪魔になっていたのだ。


「これは思ってたより難しいかもしれないな……」

「無理はしなくても……」

「いや、取るから。絶対取る」


 青葉の寂しそうな顔を見るとどうにもやり遂げたくなってしまう。

 俺はつい、意地になってしまっていた。

 その結果、取るのに苦労して千円を使ってしまって後悔し、海斗に嘲笑あざわらわれるのだが……きっと店が悪いんだ。俺は悪くないはずだ。



 それからゲーセンを後にした俺たち一行は路頭に迷っていた。

 だって、これと言って行くところがないんだもの。


「暇だな……」

「私は洵さんと一緒ならそれだけで……」

「ぶはっ!?」


 なんて、青葉が恍惚な表情でそう言ってくれる。

 もちろん、俺は焦って吹き出してしまった。

 何か口に含んでなくてよかった……


「リア充は死ね!」

「がっ!? 俺が悪いのかよ!」


 海斗からお怒りのパンチをもらう。

 でもさ、俺は悪くないと思うんだよね。


「そうとも! 貴様が悪い!」

「まあまあ、二人とも……」

「せっかくなら一度争ってみるのも面白いかもしれないな」

「宝生さんはさりげなく物騒な事言わないでくれ!」


 宥めようとする優姫さんに、面白がっている宝生さん……というなんともカオスな事態になっている。

 これじゃらちがあかない。


「よし、どこか行きたいところはないか?」

「洵さんとならどこでも!」

「いや、それはもういいから!」


 青葉が寄り添ってきて少しドキドキして……じゃなくて!

 この状況をどうにかしようとしたはずなんだけど……


「リア充はくたばれぇぇ!」

「だからいい加減にしてくれぇぇ」

「どうだ、そのまま……」

「何もしないって!」


 俺は一向に進みそうもないこの状況に、ただただため息をつくのだった。




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