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Episode51 謎の赤髪の少女

謎だらけの赤髪の少女。

彼女がメインの回になります。

「それにしても……なんでこんな所に?」

「貴様には関係ない」


 ズバッと切り捨てられる。

 俺の前を進んでいる、赤髪のポニーテールを揺らす少女はなんだか雰囲気でいうと、とても威圧的だった。

 口調も男らしいし、何より謎の気迫のような物に気圧けおされてしまう。

 昨日のあの人と、きっと同じであるはず。しかし、そう聞く勇気なんて俺にはあるはずもなかった。相手は、ナイフを腰に据えているのだから。

 昨日の出来事は一体何でああなったのかもさっぱりであり、本人も語る気配はない。それゆえになおさら怖くて聞けなかった。


「そういえば、貴様の名は?」

「え、えっと……小波洵」


 我ながら挙動不審な感じがしてならない。そりゃあそうだ。相手は謎の美少女、それに武器を持っていてとても威圧的。これだけの条件が整えられていてこうならないわけがない。少なくとも俺に関しては。


「そうか」


 そのまますたすたと前を歩いていく。

 あれ、名前を言うノリじゃないの、これ。


「あの、名前は……なんと……申すのでしょうか」

「語るほどではない」


 背中を向けているはずなのに、まるでこちらに目があって俺をじーっと見据えているのではないか、そう思いかねないほどの気配が俺を襲う。正直怖い。


「そ、そこを……できたら」

「……仕方ないな、私の名は宝生ほうじょうだ」


 立ち止まってそれだけ言うと、再び歩き出す。

 あれから少し進んだとはいえ、まだまだ畑ばかりが並ぶ道を俺はついていく。


「下の方は……?」

「それ以上貴様に語る意味が無い」


 恐る恐る尋ねてみたが、切れ味抜群の言葉でスパっと切られてしまう。

 もちろん立ち止まったりする事もなく、歩み続けている。早足で歩く彼女に少し置いていかれそうになりながらも小走りに駆け寄っていく。


「そうだ。何故貴様がこんな所にいる?」

「え……」


 これの言葉の意味は――

 言わなくてもわかる。あちらは俺の事を覚えているのだ。案内してくれると言うものだから、てっきりもう覚えてないのかと思っていた。

 しかし現実はそうではないようで、相手は分かった上で聞いているのだ。

 この問にもよるが、下手をすると俺の命が危うい。武器を持っている時点で、俺に自由に動く権利はないのだろう。

 まあ案内してもらっているのだから、俺からは特に言うことも無いのだが。


「いや……その、友達に会おうと思ってきたんですけど、迷っちゃったんですよね」

「ふっ……何をやってるんだか。無計画すぎるな」

「すみません……」


 今、少し微笑んだか?

 いや、第一に宝生さんはこちらに背を向けているから、表情なんてわかるわけもないのだが。

 鼻で笑われた感じはするが……たてつく気も湧かない。


「まだ距離はあるな……よくこんなところまで来たもの だ。少し休憩を挟もうか」

「は、はいっ」


 そして俺たちはバス停のベンチに座る。看板はすっかり錆びれてしまっていて満足に読むこともままならない。というよりもこんな所にバスが通るような気もしない。だからこそ、少し休むにはちょうど良さそうだった。幸い、ベンチもだいぶ傷んではいるが座っても問題はなかった。

 座って少し気が緩んだのか、大きく吐息を漏らしてしまう。


「なあ、貴様は……神崎弥生とどういった関係だ?」


 突然の言葉に、俺は驚き戸惑ってしまう。

 でも、落ち着いて……二人の間だけの、取り決めを思い出す。

『もし二人の関係について聞かれた場合は、付き合っている事にする』

 これが、二人の間の取り決めの一つ。一度お互いに確認をして取り決めを作っていたのだ。


「恋人ですね」

「そうか……ふむ」


 俺の返事を聞くやいなや、組んだ足の膝に頬杖をつき、思案顔になる。

 ちなみに、宝生さんは薄手のズボンを履いているのでわずかな希望すらないなんて言ってみる。

 何かあるのだろうか……?

 弥生に用があるのか、それとも……俺に……いや、そんなバカな。

 流石にそれは有り得ないだろう。弥生や青葉のおかげでだいぶ前よりは話せるようにはなったとはいえ、元よりイケメンなどとは程遠い、冴えない部類の人間なのだ。

 そんな俺に初対面の美少女から何か話があるなんて事が…………あ、弥生がいました。いや、まあ……それはそれ、これはこれだ、うん。

 思案に耽っていた宝生さんは急にガタッと音を鳴らし立ち上がる。

 俺も釣られるようにしてハッとしながらも立ち上がった。


「さて、行こうか」

「分かりました」


 いまいちよくは分からないが、とにかく街中まで案内してもらえるのだから俺からは文句はない。

 宝生さんがまた先陣切っていき、俺はそのあとをなぞるようについていく。

 何よりも今は青葉に会って、参加するかを聞かなくてはならないのだ。青葉には出来れば参加して欲しいと思っているが、あくまで本人の意向に沿うつもりである。もしかすると忙しいのかもしれない。青葉は一人暮らしをしているのだから、その可能性は十二分に有り得る。

 だからこそ、余計に早く会いたいのだ。なのに、こうなってしまった自分を何回でも殴りたいし、説教をしてやりたいところだが、とにかく戻ることを優先しなくては元も子もない。


「……むしろ、好都合か……」

「なにかいいましたか?」

「いや、何もない」

「……そうでしたか」


 畑や田んぼだらけの道を、宝生さんが先導して歩いていく。俺の視界の先には、見慣れた街が見えてきていた。もうすぐ戻れるという安堵感が胸の中に広がっていく。

 しかし俺は、この安堵感のせいで宝生さんが呟いていた大事な言葉を、聞き逃していたことに……後になって悔やむのだった。



 街中まで案内してくれた宝生さんは何も言わずに立ち去っていってしまった。

 せめて、お礼くらいは伝えたかったのにな……


 「って、うおおお!?」


 俺がなんとなく右を向くと……なかなかに大きな図書館があり、そして……窓から見えるのは、青葉。

 願ってもみない幸運に、神様に感謝を告げる。

 ……というか、家行ってもいなかったってことか。何なんだか。


 「よし、青葉に聞かないとな」


 疲れきっているはずなのに、自然と足は進んでいく。

 苦労した分、感動もひとしおと言う奴だ。少し泣きそう。

 青葉がちらっとこちらを向いて、俺に気付いて手を振ってくれる。そして俺は青葉に力なく手を振り返した。

 暇を持て余していたらしい青葉は言うまでもなく、と言った感じで参加する事となり、一番の難所と言える青葉を終わらせることができた。後は優姫さんに聞くだけで終わる。

 疲れが溜まっていて、それでかつ優姫さんはまだ帰ってきていないと予想の元、俺は青葉とお茶でもする事にした。

 やはりどこに行っても目立つ白い羽に、なんだか少しため息をついてしまうのだった。

お読みくださり、ありがとうございました。


宝生ちゃん、下の名前はまだ伏せさせていただいております。

そのうち判明致しますので、また読んでいただけたらな、と。

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