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どういうワケか、冴えない俺はお嬢様と付き合う事になりました。  作者: 月見里 月奏
第一章 どういうワケか、たくさんの出逢い
5/110

Episode5 衝突

はい、また少し進めた……つもりです。

話考えるのがあまり得意ではないので、なんだか良く分からないかもしれませんが、最後まで読んでいただけたらこの上ありません。

 夕方。梅雨と聞いたが珍しく晴れが続いている。異常気象というものだろうか。


 ここは放課後の教室。


「このくらいでいいか……」

「も、もうしません……」


 正座で許しを請うのはバカ、もとい皐海斗。

 あれから、音楽室、廊下、教室と場所を転々として今に至る。


「一応、あの男はお嬢様の彼氏らしいからな。怪我でもさせたら……」


 セーラー服の執事は拳を固く握りしめる。


「な、何で見た目女のくせにこんなに強いんだ……」

「黙れ。……ん?」


 突然。須田のスマホに連絡が来た。多分主人――神崎弥生――からだろう。

『先に帰っていいから、ゆっくりしなさい』と書いてあった。


「お嬢様……」


 ああいう態度だったりするが、こういったさり気ない気遣いなどが出来るのが須田が思う主人の好きな所であったりする。


「何がおじょうさまー、だよ」

「だから黙れって」

「っ! あはんっ……」


 ガス。さっきより強めに蹴る。変な断末魔っぽいものが聞こえ、眼鏡の男はついに何も言わなくなったのでそのまま帰ることにした。


 さて何をしようかと須田が外を歩いていると、ものすごい勢いで頭上を何かが過ぎ去っていった。



  ◆


 一方……


「何してるんだ?」


 弥生が誰かにスマホで連絡してる……っぽい。


「須田……あの執事に連絡してたの」

「そうか」


 ええ、と言って弥生はスマホを鞄にしまう。

 そういえばあの執事は須田というんだな。


「ところで……どこ行ったのかしら」

「さあ……」


 俺たち二人が追いかけていたフライングマン(仮称)は、急に低空飛行をして建物の影で姿が見えなくなってしまった。

 そして俺たちは、追いかけていたものも見失ってしまった今、どうしようかとふらふら街を歩いていたところだった。


「何か食べていかない?」

「どこにするんだ?」

「あたしに選ばせると大変なことになるわよ」


 ……こう言いたいのだろう。「あたしに選ばせると高い店に行く」という事だろうか。このブルジョワめ!


「ほら、別に安いとこでもいいから」

「いつも行くところでいいか?」

「ええ」


 いつも行くところ、俺たちが出会ったあのハンバーガー店――厳密に言うと店の前だが――だ。学生の財布に優しいお手頃価額が売りである。部活帰りや、小腹が空いた学生がよく集まるスポットとして賑わっていた。

 何だか俺は申し訳なくて仕方がなかった。

 どっかのお嬢様を安いファーストフード店に連れ込むなんて……情けない。


 とは思いながらも現実はこうなんだと、自分で納得し気にしないことにして、俺たちは店が建ち並ぶ辺りへと向かった。




 俺たちはファーストフード店のテーブル席で向かい合って食べていた。


「割と食べられなくはないわね」

「安い割にはいけるだろ?」


 まぁ、と弥生が言いながら手に持っているハンバーガーをぱくっと小さな口で頬張る。

 これがまた可愛くて、つい見とれてしまう。

 げし。


「うがっ!」


 鈍い痛みが足に響く。弥生の右足が俺の左足の弁慶の泣き所にクリーンヒットしたようだ。マジで痛い。


「なに見てるのよ」

「いや……その」


 どうやらバレたようだ。

 素直に言うなんて事は俺に出来るはずもなく、どう答えればいいか分からなくなりしばし言い淀む。

 それから少しの間、静かな時間が流れた。

 聞こえてくるのは近くの席からの話し合う楽しそうな声、ジュースやシェイクをストローで飲む音。

 良いなあ、あんな風に話せたら。

 なんて思うだけで行動には移せない自分に動けと言ってみるが、とても動けそうにない。

 俺は何とも言えないこの空間に嫌気がさしてきたので、ずっと気になっていた事を思い切って聞いてみることにした。


「なあ、何で恋人の"役"なんて演じなきゃなんないんだ?」


 俺の急な言葉に弥生は元々大きい目をさらに見開いて、それから少し暗い顔をする。聞いてはいけないことなのだろうか。

 だとしても、これは俺たちがこうやって続けるには知っておくべき事だと思う。まずいつまでやるのか、期限すら聞かされてないのだけど。


「……別にいいでしょ、行くわよ」


 それだけ言うとむすっとしながら弥生は席を立つ。


「ま、待てよ、弥生!」


 軽く反省しつつ、俺はさっさと歩いていく弥生を追いかける形で店を出た。

 ポテトが残っていて勿体無いとは思ったが、弥生がどこかに行ってしまいそうな気がしたので、かぶりを振って泣く泣く諦めたのだった。




 夕方の街中で、どんどん歩いていく弥生を追いかけるようにして俺は歩いていた。


「何でなんだ? 俺は関係あるんだから、教えてくれてもいいだろ?」

 

 これは五回目の質問である。


「…………」


 そしてこれは五回目の返事。

 さっきからこれの繰り返し。

 一度聞いてからは何を言っても無視される。


「……分かったよ、もういい。俺の家はこっちだからさ、じゃ」


 俺はそれだけ告げて弥生と別れた。

 弥生は小さくうなずいて、それから帰って行ったようだった。

 それを見て、とりあえず俺は家路を歩いていく。

 結局、さっきから最後までなにも言わなかった。一応、別れるときにうなずきはしたのだけれど。

 俺は心配で仕方ない、このままで大丈夫なのか、と。

 高校生活初めての俺の女友達……であり、仮ではあるが恋人。出来ればうまく仲良くなりたいとは思う。

 …………だって可愛いし。それに他にも色々あると思うんだよな、きっと。俺が気付いてないだけで。

 なんて考えながら歩いていると、路上に停めてあった自転車にぶつかった。

 ガシャンと音がしたが、倒れてはいない。


「いてー……」


 ぶつけた足をさすりながら、俺は再び歩く。

 アザとかになってないか少し気になったが、わざわざ見るのも面倒だから気にしないことにした。

 突然、空がちょっと暗くなった気がした。

 雨でも降るのかと空を見上げた時、見覚えのある何かが見えた。


「あれは……」


 先ほど空を愉快に飛んでいた、あのフライングマン(仮称)だろう。

 ただ、さっきとちょっと様子が違う。その飛行体はまるで俺をめがけて猛スピードで突っ込んでくるようだった。


「と、止まれない!? 助けてええ!」

「はぁぁぁ!?」


 いや、突っ込んできた。

 もはや状況の整理も付かない俺はとりあえず即座に身構えて、その猛スピードで突っ込んでくる人を止めようとした……というのはイメージであり、そのままフライングマン(仮称)とぶつかったのだった。

お読みいただいてありがとうございました。

次でこのUMAじみたキャラも名前が明らかになります。

そちらも読んでいただけたら嬉しいです。

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