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どういうワケか、冴えない俺はお嬢様と付き合う事になりました。  作者: 月見里 月奏
第一章 どういうワケか、たくさんの出逢い
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Episode38 転校生?

さて、言ってた分……少し雑かもしれませんが回収。



 緩やかな坂を上ると平坦で広大な土地がある。そこは桜の木が囲っているかのように立ち並んでいて、その中心には大きな校舎がある。

 私立桜沢(さくらさわ)高校の二階の東棟に一年の教室は立ち並んでいる。

 朝自習の時間は、課題を片付けようとする人や足りなかった睡眠を取る人、談笑に時間を割く人など、一言で言うならバラバラなのだが……今日の一年二組はいつもと違った。


「はい、じゃあ、小鳥遊さん」

「は、はい……え、えっと……初めまして! 小鳥が遊ぶと書いて小鳥遊、名前は青葉といいます。みなさん宜しくお願いします!」


 ゴン。

 と、勢いよく下げた頭が教卓にぶつかり、痛みに悶えているのは……羽を持つ少女、青葉。

 あまりに突然の転校生が来るという展開に沸いていた教室は、担任に連れられて入ってきた青葉のあまりの可愛さにより大盛況を迎えていた。特に男子。


「いたた……」


 そう言いながらも微笑む姿はたった一瞬で何人もの男のハートを鷲掴みにしているのだが……きっと本人は気付いていない。


「じゃあ、小鳥遊さんに質問がある人はお願いね」

「青葉……はっ!? もしかして!? もしかして俺のマイエンジェル青葉ちゃん!?」


 なんかほざいてるのは言うまでもなく海斗。俺のすぐ後ろでいつもうるさい。まあ基本放置でいいよ、こいつは。


「じゃあさ、青葉ちゃん彼氏いるのー?」

「ふぇ!?」


 チャラチャラした男子生徒の遠慮ない質問は見る見るうちに青葉の頬を朱色へと染めていく。


「い、いないです……っ」


 赤くなり俯きながらもどうにか紡いだ言葉は男子を喜ばせていた。


「次、はいはいっ!」

「あ、はい……」


 すかさず次の質問が飛んでくる。

 やはり、みんな青葉を見て、一つとても気になることがあった。


「その羽は何?」

「う……これは……ええっと、羽……で、うん、羽です……」


 さっきから青葉の一挙動で騒ぐ男子がうるさい。

 しかしそれよりも、大半の人間は彼女の羽に興味津々だった。


「これは……じゃあ、皆さんだけに教えますね……この羽は飾り物とかじゃなくて……本当に飛べるんです」


 この言葉を皮切りに、教室は大パニックになる。突然やってきた美少女がなんかすごい、そういった感じで。

 この空間で静かなのは青葉と俺くらいだろうか。

 そう言えば、神崎グループの力により青葉は編入学という形となっている。高成さん、おそるべし。


「あ、洵さん!」


 俺の存在に気がついた青葉がこちらへ向けて声をかけてくる。

 そして、次の瞬間――さっきまでごった返していた教室の雰囲気は凍ったかのようで……俺は、大勢からの視線を一斉に浴びる。

 そして、棘だらけの視線――きっと男子――が次々と刺してくる。


「え、えっと……青葉はうちの親戚の友達の子で、昔一緒に遊んでたんだよ!」


 自分でも苦し紛れな感じがこれでもかとしてくるが、ここで誤解をされてもらっても困るのだ。

 一応は納得したのか、視線はだいぶ減ったようだった。

 しかし俺は、このあとに“口は災いの元”という言葉を身を持って知らされることになる。朝のホームルームが終わった直後、男子たちに囲まれて質問攻めにされてしまい、後悔したがもう遅く……次からは気をつけようと心に誓うのだった。




 放課後、帰宅部の俺は構うところなく荷物をスクールバッグに詰め込んでいると、見慣れた金髪が目の前にまであった。

 そう、弥生だ。いつ見てもこの世のものか分からないほどの金髪をなびかせていて、立ち振る舞いには気品を感じる。強いていうなら、身長がずば抜けて低いところだろうか。


「……低くて悪かったわね」

「いえ、そんな事は一言も申し上げておりません」

「顔に書いてあるわよ」

「そんな冗談はいいよ、帰るんだろ?」

「ええ、行きましょう」


 席を立ってスクールバッグを手に提げる。

 こんなすましたような冗談も普通に言い合えるようになって、内心ホッとしていた。

 あれから話し合った結果、前のようにする事にした。まあこちらからとしては断る理由もないのだが。

 見かけは恋人のようだけど、実際の関係は友達……いや、違うな。友だち以上、恋人未満……そういう方がしっくりくる。


「洵さん! 私も行きますー!」

「わ、分かったから! 一旦落ち着こ――」


 ガタンッ、という音は青葉の右足が机の角にぶつかった音。もちろん、本人は痛みでうずくまっていたり。

 危ないから言おうとしたのに、どうやら少し遅かったようだ。

 座り込んで痛がっている青葉に近寄る。


「大丈夫か?」

「あはは……痛いですけど、問題はないです」


 そう言って青葉を机に手をかけて立ち上がる。


「洵!」

「は、はい!」

「今のはエスコートするところよ。さりげなく手を差し延べるの」


 そう言うと弥生はその場にしゃがみこんだ。

 ……実践ですか。


「拒否権はありますか?」

「いいからやりなさい」

「はいはい……」


 どうやら無いらしい。諦めよう。


「大丈夫か?」


 そう言って、弥生へ手を差し延べる。


「ええ、ありがと」


 弥生は自然に俺の手を取りすっと立ち上がる。


「こういうこと。分かったかしら?」

「なんとなく、な」

「まーたイチャイチャしおってぇぇ! 洵くたば――れええっ!?」


 俺の背後をいつも通りと言えばいつも通りな海斗が狙っていて、それを横から無慈悲な鉄槌を下す須田がいた。

 これもだいぶ見慣れたかもしれない。

 っていうか海斗、お前はいい加減懲りろ。無駄なタフさだけは褒め称える。だから違う方向に活かせ。


 俺たちのいる教室には梅雨明けしたらしい空から眩しい太陽光が照りつけていて、同時に暑さを生み出す。

 少し額に汗をかいていた。そうだ、ちょうどいい事思いついた。


「なあ、今からアイスでも食べに行かないか?」

「ええ、青葉のお祝い……っていう名目ね。洵にしては名案じゃない」

「うーん、褒められたのか……?」

「アイスか……よし、洵。早食いと行こう。負けた方が罰ゲームだ」


 ほんとタフですよね、あなた。


「まあ考えとくよ……青葉はもちろん……須田も来るよな?」

「ん? あ、ああ」


 虚をつかれたように少し驚いている須田。これは珍しいかもしれない。


「そうだ、園田もくるか?」

「あ、いいんですか?」

「もちろん。せっかくだからね」

「じゃあお言葉に甘えますね」

「よし、じゃあ行こうか」


 こうして、俺、弥生、青葉、須田、海斗、園田という面々で俺たちは教室を後にする。

 もちろん、アイス店では大賑わいで楽しかった。海斗が途中でむせた事により早食いの勝者は俺だった。罰ゲームでは海斗が笑わせて――本人は泣きそうだったが――くれて、みんなが笑顔で……本当によかった。一人は知りません。自業自得でしょ。


 いつも通りな雰囲気に青葉が加わって…………ますます俺の高校生活は面白くなりそうだと、弥生の側で思うのだった。

お読みくださり、ありがとうございました。


一章はこの話で終わりとなります。


二章の内容は夏休み頃~と予定としております。


また、読んでいただけると幸いです。

投稿始めて1ヶ月と少し。やっと一章を終えました。ここまではほぼ出来上がってたのです。ようはここからです。


というわけで。

『どういうワケか』の一章が終わりましたが、如何でしたでしょうか?

一章は青葉と弥生がメインでした。他の章ではまた他のキャラをメインにしたりしてみたいですね。

そのうち男キャラメインも書くかも……いや、誰得でしょう、それ。

とにかく……作者として、少しでも楽しんでいただけたらそれだけで私は感激です。

学園要素が弱いなんて言われかねない気もするのですが、あいにく二章も夏休み~なので微妙……。

夏休み明けからはお任せください! なんて(笑)


ではでは、次回は二章エピローグ。意味深な展開は無理っぽそうです。まあ大丈夫ですよね(謎の自信)。

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