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どういうワケか、冴えない俺はお嬢様と付き合う事になりました。  作者: 月見里 月奏
第一章 どういうワケか、たくさんの出逢い
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Episode34 人の頼みはよく聞いてから

そろそろ一章も終わりへ近付きます。


青葉ちゃんのくだりをあまり考えていなかった浅はかな私です。

一章エピローグで解決させておく予定。なんかすみません。

もしかしたらどこかで入れます。

 夜が明けて月曜。梅雨もそろそろ終わりに近づいているのか、梅雨明けの地域が南側から少しずつ増えているようだが、依然として変わらず雨は降っている。ざあざあと降る雨は昨日、本当に晴れていたのかを疑わしく思わせるほど。

 あまり眠れなかった俺はすることもなく学校へ来ていた。

 朝自習まで三十分もあるなんて、普段の俺には有り得ない事だった。

 自分の席に座って一息。

 頬杖を突いて窓を見ると、校門辺りを歩く人がいる。


「早いな…………って!?」


 俺が固まったのは……その歩いている人が、今まさに悩みのタネとなっている人物――神崎弥生。

 遠目でも分かるほどの美しく燦然と輝くあの金髪は間違えようがない。

 それにしても、何故弥生までこんな時間に来ているのだろうか。

 ……待てよ。

 これは、数少ない弥生と話すチャンスなんじゃないか。

 さりげなく弥生に会って、少しでも話す。

 これでいこう。


「よっし。タイミングを見計らって行くかな」


 弥生は一組で、俺は二組。教室は廊下に順番になっており、言ってしまえば一組への通り道に二組はあるわけなのだが……そこからじゃ話すチャンスがあるかも分からないのだ。

 さりげなくトイレから出て、「おはよう」で始めて……自然に話す。

 何回かイメージトレーニングをしていると、弥生が後者へ入ったようだ。

 すくざま廊下へ赴き、トイレへ駆け込む。

 なんだか、半ばストーカーみたいな気分がしたが……目を瞑っておこう。

 一年の教室は東棟の二階に並んでいる。あまりに多い人数の生徒は一年で500人。そのうちの100人が寮暮らしをしていて、寮生は別棟で授業を受ける。

 普通の俺たちは一組、二組……という感じで八組まで。寮は三クラスあり、A組、B組、C組となっている。

 俺たちのような家から通う生徒は寮生とはほぼ関わることがなく、部活か食堂などでしかまず出会わないだろう。

 コツンコツンという音が聞こえてくる。

 きっと弥生だろう。

 息を潜めて、トイレから少しだけ顔を出す。


 「まだいないか……」


 トイレの入口の辺りに隠れて、足音が近づくのを待つ。

 次第に足音が大きくなっていき、ついに弥生が通るのが見えた。

 今だ! そう心で叫んでトイレを出る。

 さらっと流れる髪はいつ見てもまばゆい。

 彼女を少しずつ追いかけて、隣に行く。


 「ま、洵……っ!?」

 「……あ、えっと、うん、弥生、今日は早いんだなっ」


 慌てて立ち止まり驚くる弥生と、同じように、いやもっと慌ててしどろもどろになっている俺。

 さっきのイメージトレーニングは何の意味も果たさなかった。無念。


 「むしろこっちのセリフよ……わざと早めに来たのに……」

 「いや、それは……あれだ。暇だったんだよ」

 「……洵」


 急にかしこまった言い方をする弥生を見て、少し落ち着いた。


 「な、なんだ?」

 「ごめんなさい……。もう一つだけ、お願いしてもいいかしら?」

 「えっと。待ってくれ……どういう事だ?」

 「……それは――」


 俺は弥生のお願いを聞いて戸惑ったが、その頼みを受けることにした。

 俺では私立桜沢高校一年でも指折りの美少女の頼みをそう簡単には断れない。

 勢いで請け負ったはいいが、後で事の重大さを知り、とんでもない後悔をするのは、朝自習を過ぎてからだった。




 今日は各部活が地区大会がある日なので、授業といってもビデオを観て、清掃活動をするだけの二時間で終わった。

 しかし俺はビデオは一切見ていないし、清掃活動もろくにやっていない。全然集中なんてする暇がなかったのだ。

 弥生に頼まれて引き受けてしまった事。それは、


 ――パパに会って。話がしたいって言ってるから。


 うん。おかしいでしょう。

 仮の恋人でも無くなった今、何故こうなった。

 これはもう娘をたぶらかした男を問い詰め、終いには張り付けて打ち首にでもするのではないか。

 もっと落ち着いて決めるべきでした。反省しています、とても。

 しかしもう「わかった」と答えてしまったのだから、死刑執行されに行くような気分で今にも逃げたい。

 ところが、逃げようにも須田が近くで俺を見張っているのは分かっていて……きっと「逃すな」という命令が下っているに違いない。

 わざと見えるようにしているのだろう。策士め。


 「はぁぁ……」


 俺は盛大にため息をついた。

 さっきから吐く息の八割ほどがため息になっている気がする。

 放課後の教室には遊ぶ予定を話し合う楽しそうな声が広がっている。

 そんな中でとてつもない負のオーラを纏っている俺はさしずめ変に見えると思われる。

 はたからすればよほど授業がしたかったと思われるか、寝不足とか……そんな所だろうか。

 誰も今から仮の元カノの親に会ってしばかれるなんて思うはずがない。というか俺も思いたくない。


 「なんだか鬱って感じですね」

 「園田か……」


 相変わらずの暗い雰囲気を漂わせている園田が気遣ってか、話しかけてきた。


 「ある程度の人生相談なら聞けますけど……?」

 「いや、これはあまりに重すぎるから遠慮しておくよ」


 園田の親切を丁重にお断りさせていただいた。

 元カノの親に呼ばれてピンチです!

 なんて相談できるか。


 「そうですか……遊びに誘おうかと思ってたのですけど……残念」

 「悪かったな……海斗とどこか行ってきてくれ」

 「分かりました。何かあったら、言ってくれれば聞きますから」

 「……ありがとうな」

 「いえ、では……」


 すっと静かに園田は去っていった。

 園田と入れ替わるように、誰かが近付いてくる。

 周りがざわめいている所からして、弥生だろう。学校でも噂が色々と出回るほどの弥生が教室に来ればそれだけで場は盛り上がるものだ。男子はなんだかせわしなくなり、女子はあまりの美しさに一瞬、見惚みとれてしまう。絶世の金髪美少女、桜沢に現れし天使、桜沢至高の美少女などと様々な呼ばれ方をする弥生が俺の前で止まった。

 ここ、二組と隣の一組にはある程度俺たちは知れ渡っているため、多少のどよめきはありつつも少しずつクラスは戻っていく。

 俺はというと、緊張と焦りで良くない汗が嫌なほどにじみ出ている。

 ここまで緊張したのは桜沢の入試の面接以来だ。

 競争率も高めな桜沢高校、学力も並程度な俺にとって入れるかどうかは分からなかった。きっと奇跡が起きて入学出来たのだと思っている。


 「洵」

 「は、はい」


 緊張から声がうわずる。周りが少し笑っているようで腹が立つが、それどころではない。


 「今から帰るから。洵も来て」

 「……やっぱ俺帰りますっ」


 怖気づいた俺は無理だと確信していながらも席を立って逃げ出す。

 分かってはいたが、須田が颯爽と現れて逃げようとする俺の両脇をがっちりとホールドした。


 「ここまで来て逃がしはしないからな」

 「須田、ご苦労様」

 「くっ……離せ……っ! 借りもあるだろ」

 「それはそれ、これはこれ。それに、お嬢様の命令とあらば個々の話などは関係ない」


 淡々と須田に却下されてしまう。

 お前絶対に許さないからな。恨んでやる。


 「お嬢様、どうしますか?」

 「そうね……処理は任せるわ。とにかくついてきてくれればいいから」


 弥生様が怖いです。助けて、海斗。


 「くっ……この! 離せ、須田っ!!」

 「小波、腹を括れ」


 ここで腹を括ったらその腹を切られるんだよ。

 俺は必死に抵抗を試みたが須田はまるで岩のように動じず、そのままいつか乗った豪華な車の後部座席へ押し込まれる。

 車の中で俺は、自分の執行猶予が刻々と近付いていくのを感じながら怯えていた。

 早かったなぁ、俺の人生。

 俺は本日最大のため息を吐くのだった。

お読みくださりありがとうございます。


相変わらずの無茶苦茶。

青葉ちゃんの学校のくだりをどこかで入れたいところ。



せっかくなので、おまけとしてバレンタインの茶番を。


主人公は私として、ヒロイン+αにチョコを催促してみましょう。

目指せ弥生ちゃんの手作りチョコ。


あ、飛ばしても構いません。私の妄想です。


「今日はバレンタイン……とりあえずリア充くたばれ」

「あら、あなたは……」

「あっ! 彩楓ちゃん……」

「な、なんでその名前を知っておりますの!?」

「いやまあ作者ですから」

「……そうでしたわ。それで、チョコが欲しいと」

「そうそう!」

「可哀想だし、板チョコならあげますわ」

「美味しいけど……チョコだけど……コレジャナイ」


さっすがティエルちゃん。

市販の板チョコもらえただけマシですね。


「手作りチョコですよ、やっぱり」

「そうですよね……でもこんなにいらないかなぁ」

「玲音、お前はくたばれ」

「え!?」

「さて、玲音の出番はこれで減りますね」

「ちょ、待ってくださいよ!?」

「じゃあチョコ捨ててください」

「嫌です……女の子に失礼じゃないですか」


こいつ殴っていいですか。

……気を取直して。


「青葉ちゃん、チョコください!」

「……えー」

「あの、これでも作者ですよ? 生みの親ですよ?」

「じゃあ、お姉ちゃんを返してください!」

「どうもすみませんでした(土下座)」


紅葉さんに追悼。ほんとごめんなさい。


さて、待ちに待った本命。


「弥生ちゃん、チョコくださいな」

「……」

「無言の重圧怖いです」

「……」

「これでも作者ですよー……」

「……破廉恥なシーンは何よ、もう」

「どうもすみませんでした(土下座)」


可愛いからしたくなるんです、きっと。

分かってください、弥生ちゃん。


こうなれば、最後の砦!


「祐佳! チョコください、お願いします!」

「名前を呼ぶな!」

「じゃあチョコくれたらやめます!

「ぐ……少し余ってるのをやるから……ほらっ」

「やったね!」


いやだからなんで須田なんですか。

しかし出来が良すぎる……。


流石は私達の須田!


……なんでオチを須田に任せてしまうのでしょう。

ということで茶番はここまで。


次回も読んでいただけたら幸いでございます。

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