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どういうワケか、冴えない俺はお嬢様と付き合う事になりました。  作者: 月見里 月奏
第一章 どういうワケか、たくさんの出逢い
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Episode11 鈴の在処は?

気がついたら11部目になります。

楽しんでいただけたらいいなぁ……なんて思っています。

思うくらいならもっと練ろって事ですよね、頑張ります。


「洵が……」


 驚きが隠せないようだ。確かにまさかいきなり息子がこんな美少女と付き合っている、と言われても信じがたいものである。


「今は帰りを待ってるんです」


 やっと落ち着いた青葉も説明に加わる。


「その羽は何? コスプレかしら?」

「いえ、本物の羽なんです。空も飛べますし」

「へぇ……そうなの」


 洵の母親は呑み込みがいいのか、すぐに理解してくれる。

 弥生が思っていたより抵抗があるようである。その方が二人からすると助かるから好都合だった。


「しっかし……意外ねえ。こんな可愛い子と洵が……。こんなに可愛くて良い子なら是非、お嫁さんに来てほしいくらいだわ」

「あ……ありがとうございます」


 こう言われると悪い気はしない。弥生は照れてほんのり赤くなる。


「あ……青葉ちゃんでもいいわよ♪」

「え!? は、はあ……」


 まさかの不意打ちに青葉も照れて赤くなる。


「もう……二人とも可愛いわねー」


 ぎゅっと抱き締められる。

 二人を母親の温もりが少し安心させてくれた。

 その後ゆっくりしてね、と洵の母親は部屋を出ていった。


 母というのは凄いものだと感じる。

 母……親。

 青葉は胸が熱くなる。思い出したくないことを思い出してしまう。


 私は――

 こんな風に抱き締められた事があっただろうか。

 いや、なかったはずだ。

 いつも可愛がられていたのは私ではなくて――


「泣いてる?」

「え? あ、これは、その……」


 気付けば涙が止まらなくなっていた。


「大丈夫?」


 弥生は心配そうにしながらさりげなくハンカチを手渡してくれる。


「は、はい。ありがとうございます……」


 もう昔の事だ……思い出したくもないのに。


「そういえば……何で敬語なのよ?」

「え……なんというか、その……慣れちゃって」


 そう、まあ悪くはないわと弥生は呟くように言う。

 今は……こんなに良い人達がいる。私を心配してくれている人がいる。私のために頑張ってくれている人がいる。

 この人達なら……打ち明けても良いのかもしれない。私の、これまでの経緯を、深く刻まれてしまった心の傷を。


「あ――」

「ねえ」

「……はい?」


 青葉がいざ話そうとした時に弥生から声がかかった 。


「ちょっと……相談してもいいかしら?」


 そう言う弥生は何やら真剣な表情だった。

 弥生さんには今日知り合ったばかりだが世話になった。相談みたいな、自分でも出来ることならば是非ともしたいと思う。


「……私でよければ」


 外はまだ雨が降り続いていた。



  ◆



 梅雨の大粒の重たい雨が降り続く中、まだ俺は鈴を探していた。理由は負い目とかではなくて、もはや単なる意地だった。

 この前探した木の隣にあるもう一本の方も調べてみたが、結局鈴は見つからなかった。

 諦める訳にもいかず、近くの屋根がついているバス停のベンチで休んでいると……


「おい」

「……海斗か?」

「おいおい、まだ探してんのかよ……」


 海斗は呆れている様子だった。


「ほら」


 と、海斗は俺に温かいココアの缶をくれた。


「ありがと、助かるよ」


 レインコートはもはや無意味で、濡れすぎて寒かった所だった。

 普段ならこの時期には買わないであろう温かいココアは冷えた体によく染みて最高に美味しく感じる。


「風邪引くなよな。今度またゲームするんだし」


 心配をありがとう。ただし徹夜でゲームは嫌です。

 ……海斗のおかげで冷えきった身も心もぽかぽかになったから、一度くらいならよしとしよう。


「ところで、何探してるんだっけ?」

「はぁ!?」

「いや、聞いてないし」


 え? ……そういえば、大切な物としか海斗には言ってなかったような……気が……今更……。


「鈴だよ、紅葉のストラップがついてる」

「奇遇だな、俺が持っている物にそっくりだなぁ」


 海斗はポケットから鈴を取り出す。

 演技しているつもりなのだろうか、しかし下手過ぎて棒読み以下である。


「お前、何故それを」

「この前……夜にお前を呪っていたら落ちてきた」


 何だか引っかかる所があるのだが……。

 俺は海斗に今必要な事だけを聞く事にした。引っかかった部分はまた今度詳しく聞いておこう。


「何だろ、これ、って思っていたんだがな……さっき思い出したんだ、後ろにさ」


 海斗は紅葉のストラップを俺に見せた。

 その後ろには、丸い可愛らしい小さな字で

『青葉、ずーっと大好きだよ』と書かれていた。


「青葉って書いてあるだろ、もしかしたらってな」


 海斗は持っていた鈴を俺に手渡す。


「ちょいと今からHDDの容量を減らさねば、深夜アニメが録れないからな。青葉ちゃんには伝えておいてくれ、見つけたのは俺だと!!」

「あ、ああ……ありがとう」

「さらばっ」


 海斗は勢い良く雨の中走り去っていった。

 しかし、あいつが早く言わないおかげで俺は見つかりもしない鈴を探す羽目にあったのだ。

 って言っても伝えてなかった俺のミスなのだが。

 ……まあ、小鳥遊さんには一応海斗が見つけたと伝えておこう。

 俺は少し弱くなった気がする雨が降る街中を小鳥遊さんと弥生が待っていると信じて駆けていった。



  ◆


「須田」

「……はい」

「……この頃、弥生が何かおかしい気がするのだ。心当たりはないか?」


 重鎮さを感じさせる低く通った声。

 胸が痛い。確か、洵……だったかの事は弥生お嬢様に言うなと、強く釘を刺されていた。須田はかしこまりましたと、お嬢様のためを思い、言うものか……そう心に誓っていたのだ。

 だがそうはいかない気がする。自分はお嬢様の執事で忠誠を誓っているが、流石に家主である旦那様に隠し事などしようものならばそれこそクビにされてもおかしくはない。それほどの人だという事は須田自身、よく分かっていた。

 須田は旦那様に小さい頃から世話になっているのもあり、嘘をつくなんて事は出来ないのだ。

 申し訳ございません。お嬢様…………。

 須田は固唾を飲んで口を割った。


「……旦那様。実は……」

いかがでしたでしょうか。

ついに鈴が見つかりました。

次回で青葉編、といいますか、だいぶ区切りがつきます。


読んでいただき、ありがとうございます。

次回も読んでいただけたら幸いでございます。


また、次は今日中に投稿の予定です。

詳しくは活動報告にて書く予定でございます。

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