Episode1 プロローグ
初投稿です。
ご意見、ご感想いただけると助かります。
拙いものだと思われますが、読んでいただけたら幸いでございます。
曇り空がなんだか気分をモヤモヤとさせる夕方。
俺は玄関で靴を履いて、下校しようとしていた。
「ほら、早くしなさいよ……」
「あ、ああ……悪い」
言い直そう、“俺たち”は今から下校しようとしている所だ。
靴ひもを結んで彼女の元へと駆け寄る。そして、歩き出す。二人並んで。
そう、今俺は……高校生活として絶対に無かったであろう女の子と二人で下校する、という一大イベントを迎えている。と言っても何回目だろうか。
「もう……遅いのはいつもだけど。あまり待たさないでくれる?」
「ごめんなさい……」
彼女は無表情のままで眉を少し釣り上げて怒りを表している。傍から見れば特に変わったかどうかも分からない程しか動いていないのだが、俺にはその僅かな変化が分かった。
正直言って、彼女には頭が上がらない。
まあお察しの通りで、見事に上下関係が出来てしまっているような……うん、否定しない。だがそれも仕方ないと思うのだ。何故なら彼女は……
「あの……俺と……付き合ってください!!」
俺たちが歩みを進めて校門に差し掛かったあたり、突然現れて風のように想いの内を告白をする男子高校生。うちのものでもない、見たこともない学生服なのできっと少し離れた学校から来ているのだろうか。
「……あたし?」
「はい!!」
ちょっと待った、なぜ聞いた。ここに来てこの名前も知らない男に俺が告白されるわけないだろ。もしかしたら俺がイケメンなら……いや、流石にないだろう。というか嫌だ、俺にそんな趣味はない。
でも、打って変わって俺の隣にいる……この子は、とてつもなく可愛いのだ。だから、こうやって初対面っぽい人にすら告白されるのが日常であったりする……らしい。
「あなたは……わからないの?」
「えっ?」
「あたしが……付き合ってることも分からないのかしら?」
「えっ……いや、まさか……そんな……」
そいつは俺の方を見て戸惑いながら呟く。こいつ、絶対に俺の事見下したな。
「悪いけど……彼と付き合ってるの。だからそれは……無理な話よ」
そう言って彼女は俺に軽く体を預ける。華奢な体にふわっと広がる甘い香りは、俺の心拍数を上げるには十分すぎるものだった。
「そう……ですか、分かりました……また来ます!!」
わざわざ待ち伏せして告白、さらには撃沈した割にこうやって面と向かって話せている、そんな点は尊敬に値する。
俺からすると、ざまぁみろ。
涙目の見知らぬ高校生は、がむしゃらに歩道を走っていく、その姿にはどこか哀愁が漂っていた。
「ふう……今の人誰よ」
「知るかよ……」
どうやら彼女も知らなかったらしい。それでも告白されるのは流石の可愛さなのだろうか。
彼女ははっきり言って美少女の部類。煌びやかで透き通るような腰辺りまである長い金色の髪をシュシュで束ねてツインテールにしていて、背は平均と比べると低め。顔は整った小顔で碧い瞳はずっと見つめていると吸い込まれてしまいそうな気さえする。制服を華麗に着こなし、手に持つ手提げカバンは黒に刺繍がかかったような模様に金のラインが入っていたりと手のこんだものだ。本人曰く相当するものだと聞かされた気がする。そう、彼女はとある財閥の令嬢、といったところなのだ。
そして、俺もはっきり言うと……冴えない部類の人間だったりする。
少し固めの黒髪で特に趣味もなく、特徴という特徴がない。
普通だったらこうはならなかったとは思うが、どういうワケか、こんな冴えない俺はお嬢様と付き合う事になっている。
ご都合主義なら万歳、神様ありがとう。
「さ、帰りましょ」
「ああ、そうだな」
再び俺たちは横に並んで校門を抜けて歩き出した。
他愛もない話をしながらいつもと同じように帰路を行く。
何で冴えない俺がこんな美少女といるのか。
理由は一応分かってはいても……やはり自分自身、にわかに信じ難いものだ。
俺とこの子は付き合っている。その信じられないような事実に変わりはない。
それがいつまでかは分からないが、今のこの奇跡みたいな状況を出来るならば謳歌したい。
そんな事を思いながら、少し無愛想な彼女の隣で俺は笑っているのだった。
読んでいただいた方、大変ありがとうございます。
これから話が始まっていく……という形にしました。
文字数も若干少なめとなっております。