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日常から変わった日々へ……



 ども、滝峰つづりです。


 文化祭終わりましたよ~(^∀^)/


 長かったな~、当日は私達のところそこそこ盛り上がってました!


 でも来週から普通に授業か……。ま、まあなんとかなりますよね~




 さて、今回はようやく一息つけたかな? くらいの流れです。





 目指せラノベ作家! また来週ノシ

「巫女さんっ!」


「ちょ、あんた隠れてなさいって言ったじゃない! なんできたのよ」


 巫女さんは陽炎のように揺らぐ人型の闇から目を離さず俺を怒鳴りつけた。


「俺、別に隠れてろなんて言われてないし、それに事情を知ってる奴が素知らぬふりなんて出来るか!」


「―――っ!? あ、あんたバカじゃないの? 何も出来ないならただの足手まといになるだけじゃない!」


 ぐっ……、ごもっともです。


「解ったならさっさと戻って!」


「それはイヤだ」


「はい?」


 巫女さんの気が抜けたそのとき、闇が動いた。


「キシャァァァァ!」


「――っ! 危ない!」


「ふん、やっぱ、学習しない奴が相手で良かったわ。いい、攻撃時に叫んだら相手にもろばれ……よ!」


 飛びかかる闇をサイドステップで回避した巫女さんは、よろけて隙のうまれた祟り神の後頭部目掛けて、高らかに挙げた足からの踵落としを無駄なく叩き込んだ。


 うわ……、えげつねぇ。


 あの、あれ、アスファルトに蜘蛛の巣状に広がってるあのヒビ。あれってもとからあったよね? 丁度中心に祟り神の顔が埋まった。うん、それだけだ。そういうことにしとこう。


 痙攣してまともな動きをしない祟り神に札を貼り、巫女さんが何か唱えると黒い人型は霧が晴れたようにその場から消えてなくなった。――人の拳ほどの大きさの塊を残して――


 立ち込めていた妙な違和感が薄れ、周囲も明るくなったが、依然として俺の気持ちは晴れない。


「巫女さん、それって……」


 背中からなのでどんな表情をしてるかわかりはしないが、多分祟り神を倒した達成感で満ち足りた顔をしてるとは思えない。


「あまり近寄らない方がいいわよ、あんたには刺激が強すぎる。言わんとする事くらい解るわ。きっと予想通りのモノよ。――人の心臓」


 ……やっぱりか……。最近連続で人が襲われたって殺人事件はコイツ等が……。


「せめて私達だけでも弔いましょう『葬符・睡蓮火』〈ソウフ・スイレンカ〉」


 昇っていく不思議な煙色を見上げながら俺は先ほど巫女さんに言われた一言を思い出す。


『なにもできないならただの足手まといになるだけじゃない!』


 俺はあのとき祈ったはずだ。巫女さんを本当に護れる存在になりたいと。


 でも……。


 現に俺は見てるだけしかできなかった。彼女が言ったとおりこれじゃただの足手まといだな。


 独り静かに嘲笑した、自分自身に。


 握り拳に力が入った、血がにじむほどに。


 彼女が背中を向けてて良かったと思う、涙が頬を伝っていたから。


 俺は――あまりに無力だ……。






 祟り神を葬った後、買い物を済ませてから家についてすぐのこと。俺が「修行がしたい、俺に稽古をつけてくれ」と、頼んだところさも意外だったのか三テンポほど遅れて言葉が返ってきた。


「……はぁ? 修行がしたいだって?」


「……ああ」


 神妙に頷く。


「巫女さんの体捌きとか教えてほしいんだ」


「………」


 巫女さんの目が鋭くなり、無言でリビングへ歩いていってしまう。


 俺はその後を慌てて追い、リビングに入った。


 こんな反応、予測していたはずだ。狼狽えるな!


「なあ巫女さん、俺は本気なんだよ!」


 巫女さんの眉間がひくひくと痙攣をはじめ、明らかな怒りを……って、あれ? 口元が妙に歪んでるのは何故でしょうか?


「………ぷっ」


「へ?」


「あっはっはっはっは、ダメ、堪えきれない。俺は本気なんだとか……、も、もう反則の域よ!」


「ん? は? ほ?」


「やっぱりダメね~、笑っちゃいけないと思うと逆にね」


 完全に狼狽しきってしまった俺に助け舟を出すかのように、巫女さんが涙を裾で拭きながら口を開いた。


「祟り神とのあとからずっとあんただんまりだったじゃない、私はあんたほど鈍感じゃないわよ。いつその話を切り出すか楽しみにしてたくらいだったし」


「えっ!? じゃあいいのか!」


「答え次第ね」


「望む答えと違ったら?」


「そうね~、まぁ最悪この家を出ていくかな」


 それは嫌だ! 心の中で否定を叫んだ。


「変に気を張らなくていいわよ。あくまでも最悪のケースだから。じゃあまず一つ」


 細くしなやかな指を一本伸ばし、『一』を表す。そのまま指を俺に向け言葉を紡ぐ。


「どんな力が欲しいの?」


「誰かを本当に護れる力」


「なんのために?」


「護りたい人がこれ以上傷つかないために」


「うん、いいわ。その眼に嘘偽りはなさそうね。あっ……と、最後の質問――どんな事があっても、たとえそこが地の果てだったり、はたまた地獄だったとしてもずっと傍にいてくれる?」


 期待と不安が孕んだような巫女さんの上目遣い。迷う必要など微塵もなかった。


「ああ、勿論だ。巫女さんがもし独りでどこかいなくなったとしても、必ず見つけ出してココに連れ帰ってやるよ。この家はもうお前の居場所だ!」


 巫女さんは一つ屈託のない笑みを浮かべ「ありがとう、嬉しい」と、零した。


「あっ、でもいつまでも巫女さん、とかお前、とかじゃ駄目だな。名前、ちゃんと考えないと」


「ふふ、別に私はかまわないのに。でも名前をつけてくれるなら、ちゃんと恥ずかしくないのを頼むわ」


「じゃあ、千香子とか!」


「却下、完全に思いつきじゃない」


「ん~、明日香とか?」


「それも駄目、〝アスカ〟なら知り合いがいる」


「そうか、じゃあ……」


「あんた、何もかもがダメダメね、もう良いわよ」


 ぷいっ、と窓の外に視線を逸らす。苦笑し俺も続いて外を見た。


 東京の空は今日に限って綺麗な蒼を描いており、俺を優しく見下ろす太陽も、少し衰えてみえた。


 ああ、なるほどね~、もう名前はこれっきゃない。


「俺の物覚えの悪さは異常だぞ、大丈夫なのか?」


「そんなの計算の内よ、見くびらないで」


 むすくれながら答える。


「そうか、じゃ、お世話になりますよ。よろしく、――蒼空」


 鳩が豆鉄砲くらった顔よりもさらに驚きが色濃い顔に満足して、腰を浮かす。


 さて、飯にするか。


 後ろでワーワー叫ぶ巫女さん、改め蒼空を無視して冷蔵庫を開く。今日は多めに作らないとな。さて、明日から忙しくなりそうだ。




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