祟り神(下)
あーでもないこーでもないと改編している内にいつの間にか予告期限を過ぎてしまいました。すみません。滝峰つづりです
毎度のように謝罪してる気がするなぁ~。
さて、つい先日。緊急全校朝会がありましてですね。ま、一部の人がタバコを吸っていたそうで………。
最近よくありますよね。私にはタバコの何がいいのかさっぱりです。でも全生徒集める必要あるのかな? うーむわからん。
ま、タバコの話は流して聞いていたんですが、タバコよりも酷いこともありまして……。
ラブホへチェックインしたリア充野郎がいやがった。
クソがっ! と、危うく口走りそうになりましたよ。ラブホってなんだよ……。ってか、ウチの学校問題児が多すぎるだろ。自重しろ!!(特にラブホ)
と、もう愚痴ですね。それでは(汗)
来週こそは………
END
黒い霧がちらつく視界で道化を睨む。
今はこの身体よりも優先すべきコトがある。
「おや、私の邪魔をするのは誰かと思いましたが………」
言いながら道化は舐め回すように俺を見る。
「……半分以上穢れを帯びた人間でしたか」
くくくと挑発的に笑う道化。
「……」
しかし、怒りはあったが相手の挑発には乗らない程の冷静さも持ち合わせていた。
穢れ……か、この黒い霧のことだろうな。
霧がダダ漏れの腕を明かりに透かす。
何となくだがこの霧を纏っている時間は余り長く保たないと感じた。
――だから、
早急にコイツに一発ぶち込んでおかねば、腹の虫が収まらない。
透かした拳をぐっと握る。
床を蹴ると、風を切る弾丸となり、一気に道化との距離を詰めた。奴は俺の姿が捉えられてない。
「あひゃ!?」
「……凄いっ! 速い」
上昇した身体能力に驚いたが、勢いそのまま黒い軌跡を残し、道化の無駄に長い鼻をへし折った。
衝撃とほぼ同時にドアが吹き飛び、すぐ後ろの壁を砕いた。
「ヨシ、少シスッキリ」
自分の住居のドアってのは痛いけど、ドアが壊れたのはこれが初めてじゃないんだよな。……稲穂のやつ、よく平気でやるよ。
コンクリの奥でむくりと立ち上がる影。
「祟り神のなりそこないがぁ……。わ、私の高貴なは、鼻を……。」
「オ気ノ毒、イヤ、ソッチノ方ガ女ノ子ガ集マルンジャナイカ?」
「祟り神ごときが私に逆らうなぁぁぁぁ!!!」
道化は憤怒でわななく腕を開くと、何かを握り潰すかのように閉じた。
一度俺を苦しめたアレだ。一瞬にして身構えたが別段変化が起こることはなかった。
「? 何モ起キネェナ……」
「馬鹿な!? お前の心臓は此方の手にあるはず……。何故だ、何故動ける、何故命令を聞かない!!! こんなの計算にないじゃないか、私のプログラムに従えよ! お前は立ち上がらず私と天照ちゃんのやりとりを見ているだけで良いんだよ! そんなコトもできねぇのかああん?」
「……ッ、変態ガ……」
吐き捨て、軸足に力を込める。
地面を踏み抜き、道化の前まで移動すると、有無も言わせぬ速度の抜き手を叩き込んだ。
「ごふっ……」
鋭く伸びた指は道化の腹部を貫通し、腹の真ん中に大きな風穴を空けていた。
「深手ヲ与エタガ急所ハ避ケタ。今退ケバ命ダケハ助ケテヤル」
腕を抜き、奴に背を向けた。もうあの体じゃ逃げるので手一杯だ。攻撃なんて飛んできやしない。いや、もうこれ以上あいつの顔を見たくなかったってのが本音か……。
肩を押さえた痛々しい少女の前に戻った。
「……蒼空…」
俺はどう声をかけるべきなんだろう。
「そんな表情をするんじゃないわよ……。別に死ぬほどの傷でもないんだから」
「ソレデモ蒼空ハ怪我ヲ……」
心配をかけないように無理に笑った蒼空の優しさが逆に心の奥底をえぐる。
「バカね、自分よりも他人に優しくするなんて……。それもこんな姿になってまで……」
細く白い指がゆっくりと俺の頬を撫でる。
黒い霧が風もないのに揺らいだ。
「ナッチマッタモンハ仕方ネェヨ、俺ハモウ少シシタラ自我ヲ失ウンダロウナ」
「失わせない。真紅は真紅であってほしいから」
「……ッ!!」
強く、確かな意志を秘めた瞳に目を見張る。
「今から穢れの浄化を行います。浄化を行えば、あなたは祟り神に堕ちる心配はありません」
「俺ハ……元ニ戻レルノカ?」
小さく、ただしはっきりと頷く。
「顔、近づけて……」
「コウカ?」
遠慮がちに五〇センチくらいの距離に移動。
「もっと近くよ……」
お互いの吐息がかかるほど近くに寄せる。
「コ、コレデイイダロ」
「ええ、いくわよ」
いつもより赤い顔をした蒼空が俺の視界を覆った。
そっと、柔らかい何かが唇に触れる。今まで体感したことのない不思議な感覚。もしかしなくてもアレだ。
俺は蒼空と口づけを交わした。
それも、長く、暖かいキスだった。
熱い何かが流れ込んでくる。血脈に、全身に、巡っていく。
唇が離れたとき、身体の一部として張り付いていた霧は文字どおり霧散して消えていった。
途端に急激な疲労が押し寄せ、そのまま蒼空にもたれる。
……ダメだ。蒼空に聞きたいこと沢山あるのに眠くて意識を保てない。
「助けてくれてありがと、キミ凄くかっこよかったよ」
耳元で蒼空がささやき、よくやったと頭を撫でる。
「ちょっと、恥ずかしいな」
「……ばか」
身を寄せてるので蒼空の体温がぐんぐん上昇するのがわかる。
おそらく自分も熱を帯びてるかもしれない。
ここにない心臓が高鳴った。無いけど確かに判る早鐘のような鼓動。どこかにある俺の心臓から発せられる酷く荒れた音。
……嗚呼、今わかった。俺は初めて出逢ったときから蒼空の事が好きだったんだ。
だから告白しよう。
次に目が覚めたら、落ち着いて言葉を整理してからしっかりと告白しよう。フラれたらフラれたで事実を受け入れる覚悟もある。
「……一つ、いいかな」
「ん?」
半ば夢の中へ潜りかけた意識を引き上げた。
「これから先、もっと祟り神の数が増えて行くと思うの。それでも戦って、戦って、戦い続ける覚悟がある?」
「……ああ、護るものがあ…る……から………」
ろれつが回らない。相当体にむち打って喋ってるみたいだ。後半なんて自分でもなんて言ってるかわからない。
「――キミはもっとずっと強くなる。きっと私の想像を遥かに超えるくらい強く。……でも、私には見守る時間も残されてないみたい………」
霞んでいく意識の中で蒼空が薄く透けていくように視えた。
何でだよ、何で俺を助けたのに………そんな悲しい顔してんだよ。
彼女の頬をつたう一筋の涙。
俺にはまだこの涙の意味が理解出来なかった。
でも、せめて笑ってくれよ……蒼空。
俺の意識が限界をむかえ、世界が黒く塗りつぶされていく。
翌日、蒼空は忽然と姿を消した。