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魔法小路のただの茶屋  作者: ゆずはらしの
2.騎士がやって来た日。
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さらに、さらに、その店では。5

 ぼんやりと二人を見ていると、おばばがこちらを見やった。



「なにがなんだか、という顔じゃな。騎士どの。


 別に、われらは難しいことは言っておらぬよ。肝心な事というのはたいてい、あっさりとして単純なものじゃ。


 人が混乱する時にはの。認めねばならぬ事は、常に、多くはない。たった一つじゃ。それだけを認めれば、あとは芋づる式に、全てほどける」


「意味がわからん」


「そこのも言っておったじゃろ。なぜ、聞かなかった事にする?」



 何をだ。そう思っていると、おばばは顎をそらすようにし、腕組みをした。



「ここは魔法小路。人の世とは違う律に縛られ、違う法により護られる場所。とっとと認めんかい、小童こわっぱ!」


「おまえのような小娘に、小童呼ばわりされるいわれはないぞ」



 思わずそう言うと、「はっ!」と馬鹿にしたように笑われた。



「気に止めるのはそこか? 目を逸らすのも大概にせい。見苦しい。わしは、ここがどこじゃと言うた」


「魔法小路か。しかしそんなものは、老人や子どもの喜ぶただの、」


「たわごとか? のう、紅どの。これを助けて何の得がある?」



 苛立ったようなおばばに、店主は膝をついていた床から立ち上がった。



「わたしの店の、お客さまですから」


「律儀じゃの」


「役目を果たしているだけです」


「それすらできぬ者も多い。ここは力が力を喰う。何かをすればするほど、律は渦巻き、かつてあった志も巻き込まれる内にくたびれる。


 おまえさんが、どこまでやれるか。まこと、見物じゃな」



 そう言ってから、おばばはウィルフレッドに向かって言った。



「騎士どのよ。わしはな。正直言って、ぬしのことなぞ、どうでも良い。ただの茶屋のあるじどののしている事も、酔狂にしか見えぬ。


 じゃがの、言うておくが。今、ここで最もぬしの味方と言える者は、そこのあるじどのじゃ。


 それだけは、ゆめ、疑うな」


「疑ってはおらんが……何が何やら、さっぱりわからん」



 一連の流れと彼らの会話に困惑しつつ、騎士が言う。店主が身じろいで、なにかを言いかけた、その時。



とん、とん。



 扉を叩く音がした。




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