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魔法小路のただの茶屋  作者: ゆずはらしの
1.客が落ちていた日。
6/79

レッツ、リフレッシュなリラックス。1



「それで、お腹は満たされましたか」



 ひとしきり騒いだ後、落ち着いたティラミスに、店主は改めて問いかけた。



「はいっ、美味しくって! まだまだ食べられますっ、……って、えっと、ねだっているわけじゃないですから!」



 思わずという風に言ってしまい、それからティラミスは赤くなった。



「えーと、ほんと、ここのお店のファンになっちゃいました。あの、他にもあったら、お昼ごはん用に、買っていっても良いですか」



 店主はちょっと、困ったような顔をした。



「気に入っていただけたようで、良かった。でもこれは、店のメニューというわけではないのですよ。残り物で適当に作ったので……」

「えっ、でも美味しかったですよ。何だかこう、なつかしいような、でも食べたことがない味でした」



 どっちだ、と店主は思った。



「まったりのんびりリラックスする、やる気出るぜ! な味でした!」

「いろいろ矛盾していませんか、それ」



 リラックスとやる気が出るのは、正反対ではなかろうか。



「えっと、ええっと、んーと……なごみ! なごむ味! で、リフレッシュ!」



 何やら必死な様子で言うティラミス。



「それで元気でるし、ほんわかリラックスもするし! だ、ダメですかこの説明じゃ」

「いえ、まあ、……ありがとうございます」



 あまりに必死な様子なので、店主もそれ以上突っ込むのをやめた。



「ずいぶん、気に入って下さったんですねえ。うちはどっちかと言うと、ケーキやクッキーが主なんですが……」

「ケーキも食べたい」



 思わずという風につぶやいたティラミスに、店主は笑いだしそうになり、何とか抑えた。



「ふっ、く、開店はまだ、ですが。クッキーがあったはずです。持っていかれますか」

「クッキー……」

「ジンジャークッキーがあります」

「ジンジャーって生姜しょうが? 生姜の入ったクッキーって美味しいの?」

「試食をどうぞ」



 笑って店主は厨房の方へ行き、砕けたクッキーを皿に乗せて戻ってきた。



「形が悪くてお店に出せなかった分です。つまんでみて下さい」

「ありがとうございます。ん? んん?」



 ぱくり。もぐもぐ。



「んん~? あま……いのにぴりっと刺激が後から来る~っ。でもクセになりそう」



 美味しい! とティラミスは満面に笑みを浮かべて言った。



「生姜は体を温めますから、体調を整えるのには良いですよ。女のかたは、体が良く冷えるでしょう」



 店主が言うと、ティラミスは真面目な顔になり、頷いた。



「そうですよね。そうなんですよ。冷えるんです。ツライんですよ」



 何やら深刻な顔になる。



「足元から冷えてくるというか。若いころには平気だったのに、最近、疲れやすくて、冷えやすいと言うか」



 空気がずん、と重くなった。



「ツライのが腰にきて、肌も荒れ放題だし……」



 だんだんうつむいてくる。



「疲れは全然取れないし。なんか、いろんなものがダメダメな感じで。どうしようって思っても、どうしたら良いのかわからない。

 髪がばさばさで。肌がぼろぼろで。一所懸命やってるのに。怒られてばっかり。何にもなってない。なんでだろ……」



 ティラミスは涙目になっていた。空気はどんよりとなってしまっている。

 ころころと表情の良く変わる、にぎやかな人物だと思っていたのだが、そういう人物がこんな風にどんよりし始めると、周囲に及ぼす影響も、かなりなものとなる。

 どうしたものか、と店主は思った。



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