レッツ、リフレッシュなリラックス。1
「それで、お腹は満たされましたか」
ひとしきり騒いだ後、落ち着いたティラミスに、店主は改めて問いかけた。
「はいっ、美味しくって! まだまだ食べられますっ、……って、えっと、ねだっているわけじゃないですから!」
思わずという風に言ってしまい、それからティラミスは赤くなった。
「えーと、ほんと、ここのお店のファンになっちゃいました。あの、他にもあったら、お昼ごはん用に、買っていっても良いですか」
店主はちょっと、困ったような顔をした。
「気に入っていただけたようで、良かった。でもこれは、店のメニューというわけではないのですよ。残り物で適当に作ったので……」
「えっ、でも美味しかったですよ。何だかこう、なつかしいような、でも食べたことがない味でした」
どっちだ、と店主は思った。
「まったりのんびりリラックスする、やる気出るぜ! な味でした!」
「いろいろ矛盾していませんか、それ」
リラックスとやる気が出るのは、正反対ではなかろうか。
「えっと、ええっと、んーと……なごみ! なごむ味! で、リフレッシュ!」
何やら必死な様子で言うティラミス。
「それで元気でるし、ほんわかリラックスもするし! だ、ダメですかこの説明じゃ」
「いえ、まあ、……ありがとうございます」
あまりに必死な様子なので、店主もそれ以上突っ込むのをやめた。
「ずいぶん、気に入って下さったんですねえ。うちはどっちかと言うと、ケーキやクッキーが主なんですが……」
「ケーキも食べたい」
思わずという風につぶやいたティラミスに、店主は笑いだしそうになり、何とか抑えた。
「ふっ、く、開店はまだ、ですが。クッキーがあったはずです。持っていかれますか」
「クッキー……」
「ジンジャークッキーがあります」
「ジンジャーって生姜? 生姜の入ったクッキーって美味しいの?」
「試食をどうぞ」
笑って店主は厨房の方へ行き、砕けたクッキーを皿に乗せて戻ってきた。
「形が悪くてお店に出せなかった分です。つまんでみて下さい」
「ありがとうございます。ん? んん?」
ぱくり。もぐもぐ。
「んん~? あま……いのにぴりっと刺激が後から来る~っ。でもクセになりそう」
美味しい! とティラミスは満面に笑みを浮かべて言った。
「生姜は体を温めますから、体調を整えるのには良いですよ。女のかたは、体が良く冷えるでしょう」
店主が言うと、ティラミスは真面目な顔になり、頷いた。
「そうですよね。そうなんですよ。冷えるんです。ツライんですよ」
何やら深刻な顔になる。
「足元から冷えてくるというか。若いころには平気だったのに、最近、疲れやすくて、冷えやすいと言うか」
空気がずん、と重くなった。
「ツライのが腰にきて、肌も荒れ放題だし……」
だんだんうつむいてくる。
「疲れは全然取れないし。なんか、いろんなものがダメダメな感じで。どうしようって思っても、どうしたら良いのかわからない。
髪がばさばさで。肌がぼろぼろで。一所懸命やってるのに。怒られてばっかり。何にもなってない。なんでだろ……」
ティラミスは涙目になっていた。空気はどんよりとなってしまっている。
ころころと表情の良く変わる、にぎやかな人物だと思っていたのだが、そういう人物がこんな風にどんよりし始めると、周囲に及ぼす影響も、かなりなものとなる。
どうしたものか、と店主は思った。