メイドは見た 合コンは嵐の予感
「カンパーイ」
その場に集まったメンバーが一斉にジョッキを掲げた。そして一気にビールを飲み干す。
ごくごくごく ぷは——
「くー美味い!!!」
この一杯のために私は働いて来たと言っても過言ではありません。
「スフィアちゃん、いい飲みっぷりだね。もう一杯頼もうか?」
隣の席に座っている、甘いマスクの優しげな顔立ちの男性がすかさず声をかけてくれる。
「いいんですか?じゃあ遠慮なく!!」
やったー!おかわり!!!
「どんどん飲んで構わないからね」
「はい!あリがとうございます」
く——幸せ。
いくら飲んでも食べてもお財布が傷まないこの状況。
「合コン最高♡」
来て良かった!!
皆様お久しぶりです。(待ってないって?またまた)
スフィア=メルシエです。メルシエ男爵家長女で、難関の王宮メイド試験を突破し、晴れてこの春から第3王子殿下カイン様のメイドとして働いています。
そう。何を隠そう。私、今日は人生初の合コン(合同婚活パーティー)に同僚に誘われて来ているのです。
ヒューパチパチパチパチ
えっ、本命のリベロン様はどうしたって?
いえ、もちろんあきらめたわけではないですよ。何よりリベロン様は私の命綱ですからスッポンの如く食らいついて離すつもりはないのですが、止むにやまれない事情がありまして……。
それは、4時間ほど前——
◇ ◇ ◇ ◇
「スフィアお願い!!」
私の同室の同僚メイドが初めて私に頭を下げています。
「どうしたんですか!!いつもは私に怒ってばかりのあなたが私に頭を下げるなんて……はっ、もしや新手の詐欺……お金は何があっても貸せません。死んだ母(生きてます)がお金の貸し借りだけはするなと遺言で残したので……貸したいのはやまやまですが今回は……すみません。失礼します」
お金だけは無理なんです!!こういう場合は逃げるが勝ち。
私はその場から脱兎のごとく逃げ出そうとした……が、ガシッと同僚メイドに腕を掴まれる。
「……あなた、今日カイン様が残したお菓子つまみ食いしてたでしょう」
ギクッ。
なぜそれを……。誰もいない時を見計らってこっそり食べたのに……。
「それから昨日も、毒見と称して料理長新作お菓子をカイン様にねだっていたでしょう」
ギクッギクッ。
「……それは毒見のために……」
「毒見のために味の違うお菓子を3個も食べるの?」
「いや、違うクリームに毒が仕込んであったらと……」
「カイン様が食べ終わってから、残りの味違い2個も食べたのに?」
……バレてますね。
「……何が目的ですか?金はありませんよ!!」
こうなっては仕方がありません。ぶっちゃけ今は給料日前でほとんどお金はありません。無いところから奪いのは不可能!!
「お金なんていらないわよ。一緒に合コンに行ってほしいの!!」
聞き慣れない言葉を聞き、私は目を丸くした。
「合コン……ですか?正直、興味がありません。別の方を誘ってください」
知らない相手に気をつかってご飯を食べたり飲んだりするなんて、気疲れしそうですし、ご飯が不味そうです。
それに私は命綱のリベロン様を何としても落とさないといけないので他の方に目移りする余裕はありません。
「そこを何とかお願い。私の彼、ある商店の会計士を勤めているんだけどそこの上司に頼まれたらしく人数ぴったり集めないと、今後の昇進に響くらしいの。今私をいれてメイド3人は集めたからあと1人なのよ。本当は別の子が行くはずだったんだけど、その子が体調不良で早退しちゃって、他の子にも声かけたんだけど最近何かと物騒じゃない?みんなに断られちゃって、この際スフィアでも構わないからと思って誘ったの」
「私でも……」
本音がだだ漏れですね……。やはり、興味はありません。
「すみません。今回は縁が無かったということで……」
「タダにするわ!」
私の言葉に被せるように、同僚は声を張り上げた。
「えっ……タダ?」
なんて魅力的な響。
「ええ、それにつまみ食いの件も黙っていてあげる」
ふむ。それならば……
「タダと言うのはどこまででしょうか?」
ここはきちんと確認しておかないと。参加費と飲食代が別でどちらかだけタダにするなど、よく詐欺師にだまされるパターンですよにね。
「スフィア……つまみ食いの件は良いの?」
「そっちは怒られ慣れていますから大丈夫です」
実は先日も女官長に見つかって叱られたところです。
「そう……もちろん合コンにかかる費用全てよ!しかも今日の合コン会場は美味しいと噂の金のサバ亭よ」
「行きます!!」
金のサバ亭!!タダメシ!!
なんだか美味しい話すぎて裏がありそうですが、それでも良い!!なんせタダで飲み食いできるなら。金のサバ亭はお酒も美味しいとの噂でなかなか予約が取れない知る人ぞ知る名店なんですよね。
「……ま、今回は女性全員タダなんだけど」
ぼそっと同僚メイドが呟く。
浮かれた私には全く耳に入りません。
「じゃあ、今日の7時に金のサバ亭へ集合ね」
「了解しました」
やった——!!!
タダメシ!タダメシ!
休憩時間が終わり、ルンルン気分でカイン様のところに戻る。
「あれ?スフィなんだかうれしそう?どうしたの?」
「分かりますか?実は今日人生初の合コンに行くんです!」
ガタガタッ
複数のメイドが動揺を隠せない様子で姿勢を崩す。そして何事もなかったかのように平常を装った。
「ごうこん?」
「はい!合コンです。合コンとは……」
私が合コンについて説明しようとすると慌てた様子でメイド長が遮った。
「スフィア!口を閉じなさい!カイン様申し訳ありませんお耳汚しを……」
「……スフィわるいことするの?」
その様子を見ていたカイン様が心配そうに呟く。それを見ていたメイド長が慌てて説明を入れた。
「いえ、カイン様、合コンとは平民間で行われている男女の出会いの場なのです。いわゆる集団のお見合いです」
「……スフィおみあいするの?リベロンがいるのに……」
グサッ。
そうなんですよね、私には命綱リベロン様がいます。
「カイン様、リベロン卿はスフィアを相手にしておりませんから、スフィアにリベロン卿のことで行くなと言うのは酷なことではないかと……」
グサッ。
メイド長、私のことリベロン様に相手にされてないって言いましたね!!
「はい、スフィアがどんなに熱心に声をかけてもリベロン卿はいつも塩対応ですし……」
重ねて同僚メイドも声を上げる。
グサッグサッ。
……塩対応。
「でも……リベロンはスフィのことすきだとぼくはおもう」
カイン様!!やはり神!!
そうですよね。何だかんだ私のピンチにはいつも駆けつけてくれますし!!
「別に行けばいい」
「「「リベロン卿」」」
噂をすれば何とやら、リベロン様が休憩を終えて戻ってきた。
一際目を引く艶やかな金髪。どこまでも吸い込まれそうな紺碧の瞳。百人中百人が美しいと認めるその美貌。仕事に関しては一切の妥協を許さず、にこりともしないことで有名な第3王子付近衛兵筆頭リベロン様。その人である。
「リベロン、スフィだれかにとられちゃうよ?」
「全く構いません」
リベロン様は間髪入れずにスパッと答える。
「いいんですか?リベロン様。私誰かとお付き合いするかもしれませんよ!!」
「だから別に構わないと言っている」
リベロン卿の周りだけブリザードが吹いているかのように絶対零度の声色でリベロン様は答えた。
あまりの即答具合に周りの空気も凍りつく。
「ふーんだ、リベロン様なんて、もう知らない。私誰かとお付き合いします!!」
売り言葉に買い言葉。
私も後には引けずにリベロン様に言い返します。
「……スフィ、リベロン、ケンカはダメだよ」
カイン様が泣きそうな顔をする。
「いえ、カイン様。スフィアには興味がないだけで、別にケンカはしておりません」
慌ててリベロン様が取りなす。
リベロン様、私のこと興味が無いって言った!いつものことだけど。ツンデレのデレが無い。
「はい!とにかく私は合コンに行きます!」
タダメシ。こればかりは譲れません。
そう、私は合コンに行くったら行くんです!そしてリベロン様より良い男(いるかは不明ですが……)ゲットしてみせます。いや嘘です、リベロン様が一番です。(物理的な強さでも)でもたまには引いてみるのも良いかも……。
カイン様はまだ心配そうに私を見つめる。それを見たメイド長がカイン様にこっそり耳打ちする。
「カイン様、ご心配は不要です。スフィアは変なもの好きがいない限り、相手は見つからないでしょう。リベロン卿ぐらい度量が大きい殿方はそうそういません」
「……ほんとう?スフィアとられない?」
「はい。お約束します」
メイド長よ、勝手に約束し大丈夫か!?いや、きっと大丈夫だと思うけど……(見知らぬ作者の声)
周りも同じようにうんうん頷く。
「でも、よるはあぶないってかあさまがいってた」
「確かに……最近若い女性の失踪者が増えていると噂されていますね。スフィアあなたは大丈夫だと思うけれど、万が一がありますから気をつけて行きなさい」
メイド長が私を見て念の為と声をかける。
「あっ、じゃあリベロンがいっしょにいったらいいよ!」
カイン様が名案が思いついたとばかりに声を上げる。
「いや……カイン様、それではスフィアの合コンにならないかと」
「こっそりいったらだいじょうぶ!スフィアになにかあったらたいへんだもの」
カイン様はニコニコ話をされているが、それはあまりよくない気もする……リベロン様に見守られながら合コン……いや、ありかも。美味しい食事には変わらないし、私の安全も守られるし、もしかしたら……リベロン様が嫉妬してくれるかもしれないし。
「スフィア、どこで何時から合コンするんだ?」
その話を聞いていたリベロン様が口を開く。
「金のサバ亭で7時からです」
「金のサバ亭か……飯は美味いな。潜入捜査にすれば席もいけるか……カイン様承りました。スフィアの護衛引き受けましょう」
えっ!!リベロン様、押して駄目なら引いてみろ作戦まさかの成功!?
「えっリベロン卿が……」
「本当にスフィアのこと……」
場が騒然とする中、カイン様の嬉しそうな声が響く。
「ほんと!リベロン!!やっぱりスフィアのことしんぱいだったんだね。きをつけていってきてね!」
キャ——!!!リベロン様の護衛付きでタダメシ!!今日は付いてます!!
私も周りも普段とは違うリベロン様の反応にお祭り騒ぎで騒ぎまくっていたので気付かなかった。
「……おそらく、巻き込まれるだろうから、一気に解決して外回りの連中に貸しを作るのも有りだろう」
リベロン様が不穏な言葉を呟くのを。
◇ ◇ ◇ ◇
というわけで回想終わり!
今日の合コンメンバーは女性陣は私を入れた4人全員が王宮メイド。1人は私の同僚少しキツメの美人さん。もう1人は豊満な肉体美を誇る、ナイスバディーのお姉様メイド。ラストの1人は小柄で可愛らしい感じのメイドさん。年齢を尋ねたら、笑顔で指導が入りました……見えないけど私よりかなり上かも……以上。
対する男性陣は私の同僚の彼氏とその上司の方。そして彼氏の同僚2人の4人。どの方も清潔感があり、優しそうな雰囲気の男性である。特に上司の方は少し淡い金髪に垂れ目の顔立ち、甘いマスクのイケメンでお姉様メイドズの顔が狙いを定めたかのようにギラギラしているのが見て取れる。
とにかく私はご飯とお酒が飲めたら満足。今日の目標はたらふく食べることである。お財布の関係で明日からは粗食が決定しているので……。それに何と言ってもリベロン様がいますし!!キャ——言っちゃった♡
そう!リベロン様!やはり有言実行の男!!
何と今回私の護衛として付いて来てくれたのです。今も私の斜め向かいの席で1人お酒を飲んでいます。目立たぬようにフードのついた服で顔立ちはあまり分からないようにしています。いや、逆にあれ怪しくありません?それに……護衛ってお酒飲んで良かったっけ?
ま、細かいことは気にせず、リベロン様もいることですし、安心して食べる飲むに専念しましょう。
と、乾杯の合図でお酒を飲んでいると隣のイケメン上司の方から声をかけられます。
「スフィアちゃんて可愛いね」
えっ!!まぁ、それほどでも。私は私の可愛さについて自覚ありですがら、言われてもそれほど好感度は上がりませんよ。
「それにいい飲みっぷり。お酒好きなの?」
「はい、大好きです」
「今日は僕の奢りだから好きなだけ飲んでね」
にっこり笑顔で微笑まれる。
いえ、私にはリベロン様が。それにお姉様ズも怖いのでその笑顔は別の方に……そう思ってお姉様ズを見ると、それぞれ隣に座った男性とキャッキャ楽しそうに話をしている。最初に狙っていた上司の方に見向きもしていない。なぜだ……ま、いいか。とにかく好きなだけ飲み食いできるということで。
「ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えてお酒を注文しても良いですか?」
「もちろん、何を飲む?」
「じゃあ、これで」
広げたメニュー表から普段は頼まない少しお高めのお酒を注文する。
「……じゃあ、一緒につまめそうな揚げ物も注文しよう。あとはスッキリ食べられる果物の盛り合わせと」
ナイスチョイスです!
仕事ができる人は注文もやはりスマート!
その後も幅広い話題を提供してもらいながら、お酒を飲み、ご飯を食べ、またお酒を飲み、お酒を飲み……と目一杯合コンを満喫した。
合コン最高!!
リベロン様はといえば……熱い目つきでこちらを見てる!?もしや今回こそ脈有り!!
嬉しさもひとしお!!これは飲まねば!!
「テキーラもう一杯ください」
「スフィアちゃんいい飲みっぷりだね。好きなだけ飲むといいよ」
キャー!!モテる女はつらい。
これぞ両手に花!!
時間もそこそこ経ち、楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、ついに合コンの終わりがやってきてしまった。どうやらお姉様ズは隣の男性と意気投合したらしく、このまま二次会に直行するらしい。誘ってくれた同僚は彼氏の家でお泊りと言っている。私は……。
何と久々にベロベロに酔ってしまった。
結構強いほうだと自負してたのですが、タダと聞いてたくさん飲みすぎたらしい。
「スフィアちゃん大丈夫?」
上司の方が肩を支えてくれる。
「らいじょうぶです。わらしにはリベロンさまがいましゅから」
「……何を言ってるかよく分からないけど、とにかく王城まで送っていくよ」
「ありがとうございます。ご迷惑じゃありませんか?何なら私が送りますが……」
同僚が彼氏の上司に気を遣って提案する。
「いや、どうせ僕の家も王城に近いから気にしないで。彼も久々に会うって言ってたからごゆっくり」
同僚も上司の気遣いに頭を下げる。
「ありがとうございます」
「じゃあまた!今日は楽しかったよ」
私は頭の片隅でその会話を聞きながら上司の方に肩を貸してもらい歩き出した。
……う——ん。気持ちが悪いような良いような。
なんだかふわふわします。
お酒おいしかったです!料理も!唐揚げに煮魚、トリアンにマンゴー果物も目一杯食べました。
あとは……なにか忘れているような……
「スフィアちゃん、ちょっとだけ僕の家に寄っても良い?」
「もちろん良いでしゅ」
何を忘れたんでしたっけ……ま、いっか。
上司の方は私に歩くスピードを合わせてゆっくりと歩いてくれる。
やはり気遣いのできる男性ってステキですね。
上司の家はどうやら表通りから離れたところにあるらしい。人気の少ない裏通りへどんどん進む。
「……よし、この辺で良いかな」
「……はい?」
そして、裏路地で急に足を止めた。
「あれ、ここがお家でしゅか?少し……個性的でしゅね」
私は相手を傷つけないように言葉を選ぶ。うん。あまり住みたくない感じの場所です。気遣いできる私、エライ!!
「ああ、違う違う。ここは僕のお家じゃなくて……君の死に場所だよ」
そう言うと上司はいきなり首を絞めてきた。
うっ。出る!!!!
私は絞められて苦しいのか、せり上がってきたものを出せなくて苦しいのか分からなくなる。
うっ……もう駄目……。
意識が遠のいていく。
と、急に息苦しさが消えた。
目の前に上司が倒れている。
……限界。
私はそのまま口からキラキラを噴射した。
もちろん目の前に倒れている上司に直撃する。
やってしまった……。
あれ?私が殺られかけてたっけ……。
酔いのせいかあまり頭がよく回らない。
そう言えば何で上司は倒れているんだろう……。
上を向くと良い表情をしているリベロン様と目が合った。
「ご苦労さま」
えっと……何が……
私の意識はそこでブラックアウトした。
◇ ◇ ◇ ◇
目を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。
「スフィア……良かった」
目を潤ませてこちらを見つめる同僚メイドと目が合う。
「……あの……何が……」
「リベロン様を呼んでくるわね」
私の話を聞く前に目の前から居なくなった。
とにかく身体を起こそうと、身体を持ち上げると頭がズキンと痛む。
うっ……これは……。
典型的な二日酔いである。
「スフィア目が覚めたのか」
ドアをバンと開いてリベロン様が部屋へと入ってきた。珍しく顔色が悪い。
「……リベロン様」
「スフィア、すまなかった。頼むから許すと言ってくれ!!」
必死の形相でリベロン様にお願いされる。
「あの……とにかく何があったのか教えてもらっても良いですか?飲み会の途中くらいから意識があったり無かったりで……」
ぶっちゃけお店で解散の話がでた辺りから記憶が怪しい。
「簡単に言うと、昨日お前の隣で飲んでいた奴、ある商会の上司とか言ってたか、そいつが最近発生していた婦女失踪事件の犯人だ。ベロベロに酔わせて人気が無い所に連れ込み首を絞めて殺していた。そいつの部屋からは死体がゴロゴロでてきてるって話だ。で、お前も殺されそうになったのを俺が助けた」
いろいろえ——っである。あの優しそうな気遣いのできる人が……人間見た目では分からないものである。
「あの同僚メイドの彼氏は関係は……」
もし関係してたら私の後味が悪すぎる。
「今のところは無関係らしいと言われている。まだ調査中だがな」
それなら良かった。
「話を聞く限りむしろ私がお礼をいう方では……」
なぜ許す話になるかがわからない。
「いや、最初からあのメンバーの中でお前を選ぶとか、酒と相性の悪い果物食べさせるとかいろいろ怪しかったんだが、確証が欲しくてな……お前の首に手をかけたところを後ろから手刀で昏倒させたんだ」
「いや、それも仕方が無いような……」
私を選んだら怪しいって……可愛いから?あと、お酒と果物ってだめだったんだ……知らなかった。それと疑わしいだけでは罰せないし。
「で、お前の首に跡が残ってな……俺が護衛をしながら何たるざまだと珍しくカイン様がご立腹でお前が許すまで護衛につくのを禁止されてしまったんだ……首の怪我は聖女に願って治してもらったから心配はいらない。頼む許すと言ってくれ」
聖女は呼ぶとめちゃ高額なのに、リベロン様太っ腹である。二日酔いは聖女でも治せないのね。
リベロン様は必死に私の身体を揺する。それに比例して私の頭の痛みも増してくる。
「……分かりました。許しますんで揺するのやめてください」
どうせ覚えてないし。
「そうか……ありがとう。お礼と言っては何だが、今回犯人を捕まえた報奨金はお前に渡すように言ってあるからまた受け取ってくれ。じゃあ俺はカイン様の護衛に戻る」
そう言い残すと颯爽と病室を後にした。
報奨金!?
えっ、大量殺人犯なら結構な額かも……。
今回私って、タダでご飯を食べれて、飲めておまけにお金までもらえるの!?
これって……現実よね。
頬をつねってみる。
痛い。
「合コン最高——!!!」
スフィアの神経はかなり図太かった。
◇ ◇ ◇ ◇
リベロンの部下の会話
「リベロン様、スフィア嬢をお姫さま抱っこしてましたね」
「あぁ、しかもすぐに聖女を呼ぶとか…愛だよな」
「ですよね。今回のスフィア様の護衛もカイン様に頼まれてすぐに引き受けたらしいですし…」
「ただ、リベロン様自体がその気持ちに気付かれているかどうか…」
「とりあえず我々はあたたかく見守りましょう」
「そうだな」
今日もリベロンへの誤解(?)は深まった。
久しぶりの更新になります。お待たせしました。初めての方はシリーズになっているので良かったら別の話も読んでみてください。




