4話
「約束通り来たわね。まあ、あーしを無視する奴なんてこの世にいないけど」
言われた通り体育館裏に向かうと、昨日のメンバーと朱然がいた。
「先ずはお礼ね。あーしの友達を助けてくれてありがと♪」
手を合わせながらウインクする朱然。
キャピッと、音符かハートでも跳びかすかのような可愛らしい仕草。
悪く言えばアニメチックなぶりっ子染みた行動。
現実でやられたら腹立つと思っていたが、朱然のようなグラマー美少女がやると様になる。
不覚にもグラッと来てしまった。
「別にいいよ。結局イタズラ電話だったし」
そういうことにする。
怪異なんて関わらない方が断然いい。
さっさと忘れて悪縁など切ってしまうべきだ。
さもなくば、何が切っ掛けで怪異と縁が出来るか分かったもんじゃない。
「ふ~ん、けど京子が言うには本物みたいに何でも知ってたって」
「そんなこと言われても知らないよ。俺は何も見てないし聞いてない」
「そう。ならそういうことにしてあげる」
訝し気な目でこちらを見る朱然。
対する俺は朱然をにらみ返す。分厚い眼鏡のおかげで目つきが分かりにくいのが幸いした。
「ところでさ、アンタけっこう勇気あるね。その勇気を買ってあーしたちと一緒に肝試しに行く権利あげるわ!」
「いらん」
無意識に俺は即答した。
「はあ!?なんでよ!?あーしと一緒に行けるのよ!?アンタみたいなキモヲタ扱いされてる男子にとっちゃ命かけてもいいようなイベントじゃない!」
「肝試しってどこ行く気だ?あの廃墟だろ?ならやめておけ。普通に不法侵入だ」
学校から少し離れたビル群の中に廃墟がある。
何でもそこは昔それなりの金持ちが住んでおり、変死したことで事故物件になって買い手がつかなくなって廃墟になったという。
そんな経緯もあって心霊スポットとなり、肝試しに来る輩が出るようになった。
だがあのビルは売りに出されているとはいえ一応私有地だ。許可なく入るのは普通に犯罪だ。
「大丈夫よ。あーしが一言で許可もぎ取ってあげる」
「それでもやめた方がいい。ああいった場所には悪霊とかそういうの以前によくない奴が入ってくる。心霊体験以前の問題だ」
心霊スポット、特に廃屋などは入るべきではない。
人気のない場所には危ない奴らが寄って来るものだ。
ソースは俺。悪霊狩りに心霊スポットに行ったら、明らかにヤバい物の取引に遭遇してしまった。
咄嗟に紅マフラーに怪変して正体を隠した上でボコり、警察に通報。もし俺だとバレて報復しに来るんじゃないかってしばらくビクビクしていた。
やはり一番怖いのは人間だ。殺せないし組織的な可能性あるし。
「そういうことだ。だから馬鹿な真似はやめておけ。そういった馬鹿なことするガキは悪い大人の恰好の餌食だ。特にお前らみたいな可愛い子たちはな」
改めて朱然の取り巻きを見ると、全員可愛い子や美人揃いだ。
朱然が飛び抜けているせいで霞んでしまうが、この子たちも普通のクラスなら一躍人気者になるだろう。
「もうなんなのよ!?あーしと一緒に行けるってだけで最高じゃない!しかもこの子たちも一緒に!男アンタだけのハーレムよ!?何が気に食わないのよ!?」
「アンタの態度だ。その自分は何でも与えられ、何でも言うこと聞いてもらえて当たり前って態度が気に食わん」
喚く朱然をあしらって俺は勝手に教室に戻ろうとする。
途端、取り巻きの女子がその道を塞いだ。
キッと目を鋭くさせて睨みつける。
美人がやるとうあっぱ迫力がある。
「茜ちゃんがここまで言ってるのにその態度はないんじゃない?」
どうやら取り巻きの忠誠心は同年代のソレと比べてかなり強いらしい。
彼女にはそれほどのカリスマがあるというのか。
「………分かったよ。けど期待しないでくれ。本当の俺はかなり臆病だから」
こうして、渋々行く約束を取り付けられてしまった。
約束では夜八時半に現場集合。もし破ったら次の日の休み時間に突撃するらしい。ホントに面倒なことになっちまった。




