出会い トーマスside
更新の関係で今回だけ短くなってしまいました。すみませんm(__)m。
初めて彼女を見たのは、燃え盛る娼館の前だった。
炎で照らされた彼女の美しい横顔に僕は初めての恋に落ちた。
借金の方に交わした契約書が焼けたであろう。泣きながら喜び逃げ出す娼婦たちのなか、一人だけ炎の前で立ちすくんでいる人がいた。
建物の改装の件で訪れていた僕は、彼女の行動に驚いた。
「何やってんだ!焼け死ぬぞ、早く逃げろ!!」
振り向いた彼女は、紅い髪と瞳を持ち美しかった。浮世離れした姿に一瞬、幻覚を疑った。彼女はすぐさま向き直ると、そのまま微動だにせず静かな声で告げた。
「私にはお金を借りた義務があります。返すまではここを動きません」
一切の迷いもなく炎を見つける殉教者の瞳。死を受け入れようとする彼女に、僕は生きて欲しいと願ってしまった。
逃げるのに邪魔だから、置いていこうと考えていたアタッシュケースの蓋を開ける。
「わかった!このカバンの中身をよく見ろ!!」
中身は先ほど受け取ったばかりの札束だ。
「見たな。よし僕が代わりにあんたの借金を返すから!!」
そしてアタッシュケースを火の中に投げ込んだ。
「これで良いだろ!逃げるぞ!!」
そして、茫然とする彼女の手を掴み火の手から逃れるため走った。久しぶりに触れた人の手は、とても冷たかった。
明日からカナリヤ、トーマス、両サイドを同日更新します。
カナリヤ、7時
トーマス、17時
です。