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倦怠期カップルは思い出す  作者: 原滝飛沫
3章

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第86話


 終業式の帰り道。俺たちはファミレスに足を運んだ。


 騒がしい空間を突っ切って友人と同じテーブルを挟み、メニューブックを開いて鮮やかな料理の写真を吟味する。


 全員注文する品が決まったのを機に腕を伸ばした。呼び出しボタンをプッシュして店員に各自料理の名前を口にする。


 小さくなる背中を見送って、ふと思い浮かんだことを言葉にした。


「そういえばこの前片桐に会ったよ」

「またなつかしい名前出してきたな。いつだよ?」

「プレゼントを選んでる時だからクリスマス前だな。悩んでた俺にアドバイスくれたんだ」

「だいぶ前じゃん。何で今さら」

「燈香のことでふと思い出してさ」

「ちょっと待って。敦がくれたシャーペンって片桐が選んだの?」


 整った顔立ちが微かに顔をしかめる。


「違うよ。アドバイスはもらったけど、その中にシャーペンはなかった。選んだのは完全に俺のセンスだ」

「ならいいけど。まったく、びっくりさせないでよね」


 魚見が瞳をすぼめる。


 同じプレゼントなのに、どうして俺が責められているんだろう。


「にしても意外だね。片桐って敦のこと嫌いなんだと思ってた」

「言われてみると、片桐と萩原が仲良くしてるところ見たことねえな。お前片桐何に何したの?」

「何で俺が何かした前提なんだよ」

「片桐が萩原にちょっかい出すの想像できねんだもん」

「だからって俺を悪者にするな」

「でも何もなかったってことねえだろ。中学同じだったから分かるけどあいつ事なかれ主義なんだよ。ちょっと苦手な奴相手なら笑み作ってやり過ごすタイプ」

「魚見みたいだな」

「ひど、私そんなんじゃないってー」

「魚見はさりげなくフェードアウトするタイプだもんな。表向きはにこにこして、裏では疎遠になるために画策する。例えるならそう、お腹真っ黒な深海魚だ! 魚見だけに」

「頭に塩塗りたくるぞおにぎり」

「ふはは、やれるものならやってみ――おいやめろっ、塩の容器に腕伸ばすなっ!」


 友人たちがテーブルの上で腕の押し引きに興じる。


 ファミレスに迷惑だからドリンクおごりで助けてやった。


「あいつがグループから離れたのっていつからだっけ」

「敦と燈香が付き合ってしばらくしてからじゃなかったっけ」

「俺がグループに入ってすぐじゃなかったか?」

「いやーそんなことないでしょ。敦が入ってすぐは別に空気悪くなかったし」

「よく覚えてるなそんなこと」


 確かによくよく思い返してみると、俺がグループに入った当初は普通に言葉を交わしていた気がする。


 俺がグループに入ってすぐ空気が悪くなったと思い込んでいた。それくらい俺の中で片桐に対する苦手意識が根付いている。


 昔がどうあれ今が駄目ならそれは駄目だ。


 特別何かしたわけじゃないけど、何かをしたからこうなった。


 でも嫌な想いをしてまで仲直りしようとは思わない。


 人は自分勝手な理由で人を嫌える。それをスキー合宿でクラスメイトが教えてくれた。


 俺が片桐に何かをした覚えはない。どうせ大した理由じゃないのだろう。


 だったら考えるだけ無駄だ。


 片桐のことを頭の片隅に追いやって、料理が来るまで談笑に努めた。


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