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倦怠期カップルは思い出す  作者: 原滝飛沫
3章

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85/99

第85話 


 終業式の日を迎えた。体育館に足を運んで教員からのありがたい言葉を耳にする。


 教室に戻ると今度は担任が注意事項を語り出す。


 ロングホームルームを終えて室内は開放感に満ちた。がやがやした室内の光景に端正な顔立ちが付け足される。


「もうすぐ年末だけど初詣どうする? 集まるでしょ?」

「そうだな。受験勉強だけだと参ってくるし、一緒に初詣行くか。丸田と燈香も行くだろ?」

「おう。屋台のたこ焼き食いたいしな」

「私はいいかな」


 はしごを外されたような感覚に陥る。


 クリスマス前にもあった感覚。


 燈香がどこか遠くに感じられて、俺は即座に言葉を続ける。


「そういえば大会近いんだっけ。大晦日も練習するのか?」

「練習はないよ。さすがに大晦日おおみそかと元旦はお休みをもらってる」

「もしかして、誰かと予定があるのか?」

「ないよ。休むのも部活の内って言われてるし」

「休むのも部活かぁ。うちのバレー部結構ガチって聞くもんねー。燈香も膝悪くする前はムキムキだったでしょ」

「ちょっとやめてよ」

 

 燈香が苦々しく口角を上げる。


 球技大会前に見たドッヂボールの練習が脳裏をよぎる。


 ちらっと見えたくびれのあるウェスト。その綺麗さに一瞬見惚れたものだけど、休部前はバッキバキに割れていたのだろうか。


「痛ったッ⁉」


 太ももがチクっとして視線を落とす。


 繊細な指先が俺の太ももをつねっていた。


「何するんだ魚見!」

「萩原の目がエロかった」

「目がエロいってなんだよ」

「なになに、エロい話?」

「頭にもみじ貼り付けるぞおにぎり」


 検討する丸田にドン引きする魚見をよそに、燈香が通学カバンの取っ手を握る。


「私食堂行くね。午後から部活あるんだ」

「気合十分だな。バレーの試合いつからだっけ? 観に行くよ」

「来なくていいよ」


 一瞬頭の中を漂白された。


 今までの燈香なら二つ返事で観に来てと告げるところだ。


 今は恋人関係じゃないけど立場は丸田たちと同じ。来なくていいなんて返事は想定していなかった。


 困惑する俺の前で燈香が口角を上げた。


「初詣は私抜きで楽しんできてよ。じゃあまた来年」

「ああ、また来年」


 俺も笑みを返した。燈香が微笑を残して廊下に消える。


 残った面子で午後の予定を決めてから教室を後にした。

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