第84話
私が初めてバレーボールの試合を観戦したのは小学生の時だった。
ユニフォームを身にまとう女性が仲間と連携して返球する。
テレビの画面越しに行われたことはそれだけなのに、チーム一丸となって立ち向かう姿はとても格好良く映った。
思い立ったが吉日を体現して、私は小学校でバレーボール部に所属した。
属するメンバーは経験者ばかり。入部した当初は実力差を見せつけられて落ち込むこともあった。
でもあきらめるなんて考えもしなかった。
負けん気の強さが幸いして、努力を苦に思うことなく練習に没頭した。その甲斐あって年内にレギュラーの座を勝ち取った。
優勝はできなかった。敗退した悔しさを糧にして、今まで以上に練習に取り組んだ。
周りの女子よりも背丈があった私はすぐに頭角を現した。五年生の後半になる頃には、コーチに部で一番の選手と言われるようになった。
中学でもバレーを続けた。小学生の時よりも熱意をもって練習に取り組んだ。
中学生は体ができてくる頃合いだ。
頭頂がネットに迫り、鋭いジャンプサーブとスパイクを使いこなせるようになった。小さい頃から憧れるスタイルを体現する楽しさで、さらにバレーに病みつきになった。
バレーが強い中学校に入学したこともあって、私が三年生の頃に全国優勝をなし遂げた。インタビューを受けてテレビに映ったこともある。
メディア露出して私の知名度は上がったけど、良いことばかりじゃなかった。
背丈に恵まれて羨ましい、美人は得だね、そんなやっかみを受けたこともある。
それは仕方ないと割り切った。
私以上に努力した人なんて知らないけど、体格ばかりはどうにもならない。
だから迷わず進んだ。
あきらめてしまった人たちの分まで私が突き進む。それこそが持ち得た人の責務だと信じて邁進した。
高校進学を果たしてからも体をいじめ抜いた。
食事に気をつけた。
休みの日も自主練習を欠かさなかった。
ライバルにも恵まれて、めきめき上達する自分が心地よかった。
一年目は優勝こそできなかったけど手ごたえを感じた。チームメイトも敗退したことで勝利を渇望している。
みんなとならやれる! 高校在籍中にもう一度優勝旗を勝ち取る。そんな未来を信じて疑わなかった。
私がひざを悪くしたのはそんな時だった。
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